ラブホで繰り広げられる人間模様『ホテルローヤル』伊藤沙莉さんインタビュー「もう少しミステリアスな人間になりたい(笑)」
現在公開中の映画『ホテルローヤル』。累計発行部数100万部を超える桜木紫乃の直木賞受賞作を原作に、『百円の恋』『全裸監督』などを手がけてきた武 正晴監督がメガホンととったヒューマンドラマです。
【ストーリー】北海道、釧路湿原を望む高台のラブホテル。雅代は美大受験に失敗し、居心地の悪さを感じながら、家業であるホテルを手伝うことに。アダルトグッズ会社の営業、宮川への恋心を秘めつつ黙々と仕事をこなす日々。甲斐性のない父、大吉に代わり半ば諦めるように継いだホテルには、「非日常」を求めて様々な人が訪れる。投稿ヌード写真の撮影をするカップル、子育てと親の介護に追われる夫婦、行き場を失った女子高生と妻に裏切られた高校教師。そんな中、一室で心中事件が起こり、ホテルはマスコミの標的に。さらに大吉が病に倒れ、雅代はホテルと、そして「自分の人生」に初めて向き合っていく・・・。
親が借金を残して失踪し、行き場を失った女子高生・佐倉まりあを演じた伊藤沙莉さん。ドラマ、映画、数々の話題作に出演し圧倒的な存在感を見せ続ける伊藤さんに、本作についてお話を伺いました。
――本作、楽しく拝見させていただきました。伊藤さんが演じたまりあは、まさに映画の展開をガラリと変えていく役所ですよね。
伊藤:そうなんですよね。映画をかきまわしていく役所、というのは単純に楽しかったですし、まりあ役をいただけて嬉しかったです。私、武さんの作品、現場が大好きなんです! 『全裸監督』でご一緒して、その時はそんなにたくさんお話出来なかったのですが、今回は現場で、しかもラブホテルのセットの中で武さんの仕事ぶりを間近で見ることが出来て本当に幸せでした。この映画は、すごく悲しいことも起きるし、冷たく感じられる部分もあるのですが、その中にも優しさがあって。武さんらしい温かさが感じられる作品だなと思いました。
――まりあは特にほぼラブホテルの部屋の中だけでお話が展開していきますよね。あの内装というか佇まいが哀愁があって何とも言えない魅力を感じました。
伊藤:部屋はセットなのですが、廊下などは釧路の実在するホテルで撮っています。本当に古き良きラブホという感じで、この物語が生まれそうな空気感が見事に表現されていると思いました。美術部さんも武さんも、すごくこだわっていて。思い出しても、なんだかすっごく寂しい気持ちになる空間だったな……と。まりあが野島先生に「お風呂入ろ」というシーンがあるのですが、お風呂が部屋の真ん中にあって扉がスケスケなので、うわぁ〜!!これ?!エロいなあ(笑)と思っていました。
――あのお部屋はセットなのですね!本当に「THEラブホ」という多くの方が想像するイメージで趣がありました(笑)。そして、その部屋の中で伊藤沙莉さんと岡山天音さんの2人の演技が繰り広げられていくのがすごく贅沢だなと。
伊藤:天音君さんとは16歳の時に学園ドラマの同級生役で共演したことがあって、今回お芝居を間近で見られるのは、すごく贅沢でした。相変わらず素敵なお芝居で、表情で表現するのがうまいなあと思って。
――現実には同い年ですが、役柄では10歳差を演じていらっしゃるんですもんね。
伊藤:そうなんですよ!私だけ年齢が止まっててごめんね、天音くん!って感じで(笑)でも、10歳差ということや、私が子供っぽくしようとか一切考えず、天音さんに委ねて演じさせていただきました。本当にくたびれた切羽詰まった空気を出してくれたので。天音さんが立っているだけでそこの空気が締まるし、すごく勉強になりました。
――撮影外では色々お話されましたか?
伊藤:私ばっかりペラペラ喋って、天音さんがずっと優しく微笑みながら聞いてくれている感じです。皆さんのイメージ通りじゃないですか?!(笑)良い役者さんって、何を考えているんだろうとか、今何を思っているんだろうみたいなことをすごく思わせる人が多いんです。ミステリアスさが魅力的で。私は聞かれたことを全部喋ってしまうので、もう少しミステリアスな人間になりたいなって思いますね(笑)。
――その場の雰囲気が本当に想像出来て素敵です。まりあと野島先生の関係は本当に複雑だと思うのですが、お2人だからこそ繊細に演じられているのだな、と生意気な視点になってしまうのですがそう感じました。
伊藤:ありがとうございます、嬉しいです! まりあに起きた出来事を考えると、実際にそういう子もいるだろうから、分かったようなことは言えないですし、私には到底想像が付かない出来事なんです。でも共感出来ないわけではなくて、まりあの寂しいとかもっと愛が欲しいとか、とにかく本当は甘えたかったみたいなところでいくと、きっと誰もが多少は持っている感情だと思うんです。そこを膨らませて演じよう、と考えていました。
――2人が迎える結末もあっけらかんとしている感じが、逆に寂しさや辛さを強調していたなと感じました。
伊藤:私はその決断を見て「まりあはまだ子どもなんだな」と思ったんです。どうしようも無い状況になった時に、恋愛とかではなく、一緒にいてくれる人にすがるしかなかったんじゃないかなって。まりあの話以外にも愛に飢えた人たち、どこか淋しさを抱えた人たち、そういうものを隠して、自分を騙して生きている人たちの生き様がギュッと詰まっているので、ぜひじっくりと味わっていただきたいです。
――今日は貴重なお話をどうもありがとうございました!
ヘアメイク:AIKO
スタイリスト:吉田あかね
撮影:オサダコウジ
【動画】映画『ホテルローヤル』60秒予告編
https://www.youtube.com/watch?v=YS0QyqayKMA [リンク]
(C)桜木紫乃/集英社 (C)2020映画「ホテルローヤル」製作委員会
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