『千日の瑠璃』437日目——私は性格だ。(丸山健二小説連載)

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私は性格だ。

人の面前に引きずり出されて皆にじろじろと見つめられている子どもの、破綻すべくして破綻した、性格だ。わが家の火事を知らされて馳せ戻った男は、放火癖のあるわが子を、駆けつけた消防署員や警察署員を前にして、こっぴどく叱りつけた。母親はというと、ぼやですんだことがまだ信じられず、頭痛を招く耳鳴りに堪えながら、焼け焦げた羽目板をいつまでもぼんやりと眺めていた。

そして、変化に飢えている見物人たちは、それぞれにこの次は丸焼けだという思いを胸に秘めながら、どう考えてみてもまともとはいえない、理由もなしに自分の家に放火してしまう私と、私を作った家庭環境とを物珍しげに見つめていた。そんなかれらの視線の大半には、明らかに隔離や排除がこめられており、針のようなぎらつきがちりばめられていた。焼死者が出てからでは遅い、と誰かが言った。そのひと言は、問題児を抱えた問題の多い親のあまりにも頼りない背中にぶつかって、砕け散った。

私の主は子どもながらにも動じず、平手打ちや怒声にも顔色ひとつ変えず、尖り顔にもならず、澄み切った瞳に、自分よりいくらか年上の、しかし自分より幼く見える、病気の少年を映していた。すると、震えたり揺れたりするその少年は、おまえの仲間ではないという意味をこめて瞳を返した。ところが、私を認め、肯定する眼ざしがあった。長身のやくざ者と唐獅子のような犬を連れた小説家のそれだった。
(12・11・月)

丸山健二×ガジェット通信

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