腹の虫をひとまず治めたのは何……!? 元カレを釘バットで誅したい女子を囲んだ歓迎会マンガが不穏でほのぼの
恋愛のもつれによってのっぴきならない事態に発展することは多々ありますが、そうなる前にブレーキとなることは本当に些細なことなのかもしれません。
『COMICポラリス』(フレックスコミックス)に掲載された梅里汐さん(@umesato_shio)のマンガ『明日、元カレを××しに行く予定です』は、アパートのマツダ荘に引っ越してきた一見フツーの女の子な花ちゃんが、住人が集まった歓迎会で爆弾発言をして……というストーリーになっています。
元カレを××しに行く話① pic.twitter.com/JjITC9AXSz— 梅里汐 (@umesato_shio) November 7, 2020
元カレを××しに行く話③ pic.twitter.com/RWc2zFU9vm— 梅里汐 (@umesato_shio) November 7, 2020
元カレを××しに行く話⑤ pic.twitter.com/VNRXl6DMuZ— 梅里汐 (@umesato_shio) November 7, 2020
バンドマンのユキ、キャバ嬢の杏、オネエのカレン……。一癖も二癖もありそうな住人が住むマツダ荘に引っ越してきた花ちゃん。歓迎会で「このアパート、ヘンな奴多いからどんな子が来るかと思ってたけど、ちゃんとした子が来てよかったよ」と言われ、カレンに「花ちゃんは明日何か用事あるの?」と聞かれて、「明日は元カレを殺しに行く予定です」という答えに場の空気が凍ります。
「あ~そうなんだ~」とカレン。「大変じゃあん」と杏。「……ええ?殺し?殺しってあの殺し?誰を?」と困惑気味のユキに、「ですから元カレを」と答える花ちゃん。「よくある話なんですけど…その…付き合ってた彼氏に浮気されてたんです…。それこそ2年前から浮気されてたみたいで…結婚の話とかしてたんですけどね」と語り、「私…全然気づかないし、そのままフラれるし、ここに引っ越してきたのも昔の家だとどうしても思い出しちゃうからで…」という話を飲み食いしながら聞くマツダ荘の住人。花ちゃんは「気持ちを切り替えたいのに、あんまりすっきりしないし…。このままじゃ納得できないから…殺すしかないかなって…」と微笑します。
「それは社会的に?」「いえ、物理的に」という花ちゃん。「彼を思って作った釘バットも持ってきたんです」と言い出し、「コイツやべえ!やべえのが引っ越してきた…!!!」となりますが、ユキは「わかる、わかるけどさ? もっかい話し合ってみたら?殺しはちょっと…」と思わず真顔で訊くと、「私は最初は話し合いを求めていました…」という花ちゃん、「でもその場になると、あの人すぐお腹痛いって逃げるんです」といい、「いや、あんた刃物持ってない!?そりゃ腹も痛くなるわ!」とツッコミ。
カレンが「じゃあどうやってやるの?完全犯罪?」と訊くと、「あー、そういうの全然思いつかなくて。だから捕まるの覚悟で、なるべくグロテスクに行こうかなって思ってます」とえへへと笑う花ちゃん。怖い……。カレンは「てことは最初で最後の飲み会じゃんこれ~」と言い、「止めろよ」というユキをよそに、杏が「食べな食べな」と勧めて、「ありがとうございます。すっごくおいしいです」と和やかに会は進んでいます。
「ところで何着ていくの?」と聞く杏に「家にあるジャージにしようかと」と答える花ちゃん。カレンの「確かに一番自然にバット持ち運べる格好ね」という言葉に「殺人鬼の思考だな」と混ぜっ返すユキですが、杏は「え~~~そこは~、やっぱりドレスじゃない?」とスプラッタ映画な提案! 「ドレスは持ってないです」という花ちゃんに「貸したいけど…血まみれはちょっとなあ」という杏。ユキが「初めてデートした服は?」といい、カレンが「メンヘラ的発想ね!花ちゃん覚えてる?」と聞かれて「覚えてるんですけど、思い出すのが嫌で…ここに来る時に捨てちゃいました…」と不穏な笑い方になり、「あ、やべッ、だよね!飲も飲も」と何度目かの乾杯で誤魔化します。
「じゃあ、通報されたとしてね?どうやって警察を待つ?」とサイコパスな質問をするカレン。「ワタシは~ウェディングドレスを着て生首持って待つのが良いと思うの」とアウトな案を出し、「それやりたいけど、ウェディングドレスも手放しちゃいました」とにこぉと笑う花ちゃんを見て、「あ、やべっ、大体釘バットじゃ綺麗に切断できないわね」とまたまた乾杯!
「でもなんで釘バットなの?チェーンソーのが良くない?」「その発想がやべえ」「私、チェーンソーは使ったことなくて」「釘バットは使ったことあるみたいな言い方!」と親交を温めていると、大家兼カフェオーナーのマツダさんが甘いものの差し入れにやってきます。
住人に大歓迎で迎えられるマツダさん。「随分賑やかだね。何話してたの?」「花ちゃんの明日の予定~。花ちゃん明日元カレの首取りに行くんだって、釘バットで」「バット?試合とか?」「そんな感じです」「すごいねぇ」とまったく動じずに、「それなら力の出るもの食べて行ってもらわないとなあ~」というマツダさんに、皆が「大家さんカフェも経営してるのよ。ご飯が美味しいの」「今日のご飯も大家さんの手作りだよ」と教えます。
「じゃあ明日出掛ける前に僕のカフェに寄って行ってよ」と言うマツダさん。「いいじゃん、美味しいの食べていきな」「カフェオレ無料券も」「デザート無料券もあげる」「はいアタシも」と皆から渡され、「こんなに…いいんでしょうか」と嬉しそうな花ちゃんに「いいからいいから。勝負の時は美味いもん食べなきゃ」と言い、飲み会は夜更けまで続きます。
翌日、背にバッドとジャージ姿で「おはようございます」とカフェに顔出すと、お手製のマツダ荘スペシャルをふるまってくれるマツダさんに、「花さんこれから試合だよね。僕も花さんの腕前見てみたいな」と言われ、「腕前なんて…でも気持ちは作っておきたくて、昨日はたくさん素振りしてきました」と答える花ちゃん。「気合い十分だね…」と感心されます。
「花さんの本気のフルスイング見たら元カレさんもびっくりするんじゃない?」というマツダさんに「そうだといいです。でも何もかも遅いですけどね。振り上げたバットは止まりませんから」と笑顔の花ちゃんに「独特なフォームだね」と言いつつ、「楽しそうでいいなあ。たくさん食べて行ってね。何をするにもまずは食べないと!力も出ませんからね。応援してるよ」と笑うマツダさん。それを見てきゅんとしてしまいます。
「では…いただきます」とマツダ荘スペシャルを食べはじめる花ちゃん。一口入れて「うま」となり、あとは箸が止まらず……。食べるスピードが上がっていき、お汁までキレイに食べきって「うまぁ~い」と思い「ごちそうさまでした…」となります。
起きがけのユキと出くわした花ちゃん。「随分早くない?逃走中?」と聞かれて「いえ、まだ無実です」と答え、「実は…大家さんとこの美味しいごはんをお腹いっぱい食べたら、今日は満足して帰ってきちゃいました」と釘バットを手にとびっきりの笑顔を見せます。「さ…殺人鬼がそんな顔するな…人が信じられなくなるだろ」といいつつ、「でもまあ腹の虫が治まったみたいで安心したよ」というのに「いえ、殺すは殺します。ただ物理的じゃなくていいかなって」と答えると、「わかる~」という声が。「効率良く生きないとだもんね~。なんでも屋に頼むとか~殺し屋雇うとか」と笑う杏に、「殺し方にもいろいろあるし!」というカレン。花ちゃんから「殺し屋の連絡先とか知ってます?」と聞かれて「ワタシ知ってるかも~」と言い出すカレンに「え!?教えてよ!」と杏が食いつき、「私にもお願いします」「タダじゃ教えな~い」「え~!」という会話に、ユキが「マツダ荘は今日も平和だな」とつぶやくのでした。
「同じアパートに住むキャラの濃い住人たちが繰り広げるお話を描きたいと以前から思っていました。その中で優しげに笑う女性が実は1番サイコパスだった、という図を描きたいと考えたのがきっかけかもしれません」という梅里さんのこのマンガ。花ちゃんについては「元カレは××せるけど虫は怖くて××せない。よく寝てよく食べる。特技は書道。目玉焼きの乗ったハンバーグが好き」というキャラで、謎(?)が多いマツダさんについては「早寝早起きが得意。寒いのが苦手。お酒はあまり飲めない。ぶりの照り焼きが好き」とのこと。「作中で暗いイメージを連想させるものが多かったので、飲み会のシーンはとにかく明るく楽しく勢いを大事に描きました。最初バンドマンのユキもツッコミ役ではなく1人残らずサイコパスでしたが、さすがに誰か止めた方がいいとユキが常識人になりました」といいます。
「面白くて元気出る」「めっちゃ狂ってる気がするのに好き」「こっわ…と思いきや平和だった」といった反応が多数集まったことについて、梅里さんは「自分が想像していた以上に見て頂けて驚いています。送って頂いたアンケートも読ませて頂きました。あんな物騒な話をしているのに、“読んでいて楽しかった”と言って頂きとても嬉しかったです。ありがとうございます!!!また読んでもらえるように頑張ります!」とコメントを寄せてくれました。
とりあえず美味しいご飯は無敵だということが描かれている梅里さんのマンガ。誰かを処したくなった時には、まずは食事を取るべきなのかもしれません。
『明日、元カレを××しに行く予定です』(COMICポラリス)
https://comic-polaris.jp/ashitamotokare/ [リンク]
※画像はTwitterより
https://twitter.com/umesato_shio [リンク]
(c)梅里汐/COMICポラリス
乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。
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