【連載コラム】白波多カミンの『引き出しからこんにちは』第34回
第34回「秋の猫」
肌寒くなってきて、人肌恋しい季節になった。
人肌が恋しいのは人間だけでなく、猫もなのか。とわたしのお腹の上に寝ている黒猫を見る。お腹にじんわり猫の体温を感じる。猫肌も良いな。と独り言を言ってふわふわした黒い毛で覆われた体を撫でる。
部屋が冷え込んできたので、そばにあるエアコンのリモコンを手に取り、スイッチを入れる。ピッという稼働するときの音が鳴る。すると、さっきまで甘えるようにお腹の上にいた猫が、サッと素早く動き、エアコンの暖かい風のあたるところへ移動し、丸くなった。
え…。暖かければなんでもよかったのか…。
ただ単に、部屋の中で1番暖かいのがわたしのお腹の上だったのだ。
なーんだなんだ。と拗ねて見せても、なんの反応もない。
仕方がないから、自分から猫に顔を押しつけて甘える。猫はじっとがまんする。嵐が過ぎるのを待つように、仕方がない現象を過ぎるのを待つ。
人間のわたしは猫に甘えたいのに、猫は甘えさせてくれない。
猫はわたしに甘えてくるのに、不公平じゃないか。
いや、待てよ。猫は甘えているという感覚がないのか…?猫の”甘える”と人間の”甘える”が同じとは限らない。というか同じである可能性は低い。人間から見て”甘えている”仕草なだけであって、猫はぜんぜんその気がないのかもしれない。
人間はやっぱり弱くて甘えん坊なのだな。寒くなっただけで、誰かに抱きしめて欲しくなるなんて。
文と絵:
・白波多カミン オフィシャル・ウェブサイト
http://shirahatakamin.com/
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