得意なことを意味する「十八番」、18という数字に理由はあるの?
「十八番」とは得意なことを指す言葉で、特にその人が持つスキルの中でも際立った芸を意味する言葉となっています。
そんな「十八番」はもともと歌舞伎から生まれた言葉とされています。
正式には「歌舞伎十八番」というものから来ているんだとか。
なぜ「18」なのかというのにもきちんと理由があって、そこには歌舞伎の名家である市川家が関係しているのだとか。
そこでここでは、「十八番」とはどういう言葉で、そもそもなぜ「18」という数字が使われるようになったのかという理由についてご紹介します!
「十八番」とは
「おはこ」と読む十八番、まずはその意味と類義語についてまとめたので、確認していきましょう。
「十八番」の意味
「十八番」はその人が一番得意とすることを指す言葉で、際立って得意な芸を意味する言葉です。
その他、その人がよくやる動作や口癖なども「十八番」ということがあり、繰り返して行う行動や言動にも用いられます。
現代ではカラオケやダンスなど、歌や踊りなどある特定のジャンルにおいて自分が得意なレパートリーのことを指して「十八番」と表現することが多いですね!
なお、「十八番」は漢数字で表記するのが正しく、原則としてアラビア数字で「18番」とは表記しないので注意してください。
「十八番」の類義語
「十八番」には似たような意味を持つ類義語もたくさんあるので、ここからはその中でも特に知っておきたいものをピックアップしてみました。
売り物
「売り物」とは、その人が得意として看板としている芸のことです。
また、他に対して自分の得意なこととしてアピールできる事柄のことを指し、単に「売り」という言葉で使われることもあります。
「君の売りは何かな?」というように、その人が持つ強みという意味で用いられることも多いです。
お家芸
「お家芸」とは、その家に古くから伝えられている芸のことです。
個人というよりは団体や一家や一族などが得意としている独特の芸のことです。
また、その家に代々伝わる芸の他、有名な芸や人気の芸を指して使われることがあります。
「歌舞伎の勧進帳は市川家のお家芸だ」というような表現をします。
お株
「お株」とは、その人が得意とすることを意味します。
他人よりも秀でた能力や実力を持っている人に対して使われることが多いです。
お手の物
「お手の物」は手慣れていて、たやすくできる物事を意味します。
得意にしている技のこと指す言葉となっています。
「十八番」の由来
では「十八番」という言葉というのはどこから生まれたのでしょうか?
これは、あの歌舞伎の名門市川家が襲名する市川團十郎によって広まったのとされています。
「十八番」の起源は歌舞伎にあった
「十八番」は「歌舞伎十八番」という言葉から来ています。
この「歌舞伎十八番」は、歌舞伎の名家である市川家にお家芸として伝わる18種類の演目のことです。
当初は「歌舞妓狂言組十八番」と呼ばれていたそうですが、これを選定したのは江戸時代に活躍した七代目の市川團十郎だと伝わっています。
中には先ほど文例で出した「勧進帳」も含まれており、他にも「助六」や「関羽」「外郎売」という演目が加えられています。
なぜ「18」なのか
ではなぜ、中途半端な数字「18」という演目数になったのでしょうか。
これは「18」という数字が、仏教に縁のある数字だからとされています。
毎月18日は観世音菩薩の縁日が催されていましたし、「十八界」という仏教用語もあります。
「十八界」とは、人間が認識するあらゆる存在を18の分類に分けたものの事です。
また「仏説無量寿経」という経典に書かれた仏に成るための修行に先立って立てた48の願、その18番目を浄土宗や浄土真宗で重要視されたことも関係しているとされます。
このようなことから、日本では古くから「18」という数字が演技の良いものだとされていました。
そのため、この数字を七代目の市川團十郎も取り入れ、お家芸として18の演目を選定したと考えられています。
「おはこ」と読む理由
「歌舞伎十八番」はかぶきじゅうはちばんと読みますが、「十八番」はおはこと読むのが一般的ですよね。
この読みには諸説あり、江戸時代には高価な書画や茶器などを丁重に箱に入れて箱の中の品が「真作である」ことを示す鑑定者の署名の「箱書き」を添えられていました。
そこから認定された真の芸という意味で「おはこ」というようになったという説がひとつあります。
その他、大切なものは箱に入れて保管していたことから、「おはこ」と呼ぶようになったという説も。
「歌舞伎十八番」に選ばれた演目の台本は、大切に箱に入れられていたといいます。
そのことから「おはこ」という言葉が定着したという説もあります。
歌舞伎に起源がある物事
「十八番」の他にも実は歌舞伎に関連する言葉というのはあります。
ここからはそんな歌舞伎を起源とする物事についてご紹介します。
だんまり
「だんまりを決め込む」などの「だんまり」は歌舞伎に起源がある言葉とされています。
歌舞伎では暗闇の中、無言で探り合ったり奪い合ったりする様子を「だんまり」と呼んでおり、漢字表記では「暗闘」と書きます。
その「だんまり」が転じて「黙り」と変化し、まったく話さず黙秘している様子を「だんまりを決め込む」と表現するようになったとされています。
市松模様
「市松模様」とは格子模様の1種で、2色の正方形または長方形を交互に配置した模様のことです。
現代ではチェック柄に相当する模様ですね。
これは江戸時代、歌舞伎役者の初代佐野川市松が、白と紺の正方形を交互に配した袴を履いたことから人気を博したことに由来しています。
この袴姿の絵を多くの浮世絵師が描いたことで着物の柄として流行しました。
元は石畳といわれていたこの模様も、市松が愛用した模様ということで「市松模様」と呼ばれて現在まで定着しています。
助六寿司
「助六寿司」はいなり寿司と海苔巻き寿司が入ったお弁当のことです。
「助六」という名前は歌舞伎の演目「助六由縁江戸桜」に由来しています。
「歌舞伎十八番」にも選定された演目のひとつですね。
助六寿司のお弁当はその演目の主人公である助六にあやかって付けられた名前とされています。
まとめ
「十八番」は得意なことを意味する言葉です。
もともと歌舞伎の名門として知られる市川家のお家芸とされる18の演目が由来となっています。
このお家芸という意味から得意な芸という意味や、カラオケなどでの持ち歌を指すように転じていきました。
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