さかもと未明女史が本当にわかってない重要なことについて

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さかもと未明女史が本当にわかってない重要なことについて

今回はnorimさんのブログ『norim的ココロ』からご寄稿いただきました。

さかもと未明女史が本当にわかってない重要なことについて

「再生JALの心意気/さかもと未明(漫画家)」 2012年11月19日 『Yahoo!ニュース』
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121119-00000002-voice-pol

すでに絶賛炎上中のこのネタだが、あらためて読み返してみて少し気になることがあった。この話、ちょっと別の観点で書いてみたいと思う。

まあ、これは炎上して当然である。飛行機で乗り合わせた子供の泣き声に耐えられず、着陸飛行中に席を立って(これは違法)飛行機会社にクレームをし、自慢げに文章にして雑誌に載せる(つまりお金にする)というのは残念にもほどがある。このページから見れるだけでも150件以上のネガティブコメントが寄せられているが、まああたりまえだろう。

しかしさかもと女史が本当にわかってないのは別の点にある。それはJALにクレームをしてJALから丁寧に色々と説明を受け、「空では航空会社がリーダーシップを!」などという意味不明の結論に達しているところである。では何がわかってないのか?

実は先日私もまったく同様の体験をした。場所は自宅近所のとある定食屋である。昼に買い物に出た私達夫婦と3才になる子供が昼ご飯にと訪れたのだが、運悪く子供がはしゃいで大声を出した。仕方がないので叱りつけると今度はさらに大きな声で騒ぎだした(ちなみにうちの子は声がでかい)。そのとき向かいの席に座って食事をしていた40代の男性から「うるさいですよ」と注意を受けた。「すいません」とあやまった私達だったが、子供はやめる様子を見せない。そうしているうちに今度はその男性は店員さんを呼び、うるさくて食事ができない、このような子供を入れた店の責任だ、ということを言い始めた。平謝りする店員さんを見て私はその男性に「我々が悪いので、私たちがあやまります。でも店の責任じゃないので、それはやめてください」と言った。しかし彼はやめようとしなかったので、しかたなく私達はちょうど運ばれてきた定食に手をつけることなく勘定をしてもらい、泣く子供をかかえて店を出た。最後に男性は私に向かって「被害者づらしてんじゃねえよ」と言った。

実は私が問題にしたいのはこの男性もさかもと女史もそれぞれ対象者だけでなく、サービスを提供する側にクレームしていることである。自分はお金を払ったのだから、サービス提供者にクレームして当然、という感覚なのだろう。そしてそれはたぶん今の日本の状況を全く把握できていないことからくる間違った思い込みである。

私がこの体験の後で思ったのは、自分たちの行動はあやまるべきこと、公共の場で他人に不快な思いをさせたのであれば食事ができなかったことは仕方ない。息子はもう3才になるのでこれは親の躾の問題だ。なので私達は批判されてしかるべきである。でもたった500円でサービス提供側にまで責任を追求するのは、対価とサービスの関係に対するイメージが違うのかな?ということだ。普通に考えて500円定食を提供する店が高級レストランのような「小さいお子さん連れのお客様はお断りします」というモデルができるわけがない。さかもと女史の場合も本人は溜飲が下がっただろうが、JALにしてみれば彼女から得た利益はすべてこのクレーム対応で吹っ飛んだだろう。二人に共通するのは「サービスを受けることはタダではない」ということに対する理解があまりない点だ。

日本のサービス(レストランやショップ)のホスピタリティは世界一で、外国からのお客様はみな驚かれることが多いという。レストランなどでは確かに店員さんの態度はみなすばらしいし、水からおしぼりからケアが行き届いている。タクシーなんかは自動で空いたりするし、電車は時間どおりに到着する。日本人はそれを日本のおもてなしの心が成し得ていることで、日本なら当然受けられるものと思っているのかもしれないが、それは間違っている。すべては対価があってのことである。質の良い従業員を確保するにはそれなりのお金と教育が必要だし、アメニティもお金がかかる。それらはすべて価格に織り込まれていたのが、いままでの日本のモデルである。

そして日本はもはやこのモデルが維持できないくらい経済は逼迫しており、今後貧しくなるにつれてそれが顕著になるだろう、と思う。例えばいま牛丼は300円以下で食べられるが、そのため店は人件費削減のために深夜はどの店も調理1人、接客1人くらいで対応しているため、ちょっと店が立て込んでくるとすぐに接客が滞る。この間も「水が出てくるのが遅い!」と5分くらい店員にクレームしているDQNを見たが、正直「300円しか払ってないのに何言ってやがる」だ。すき家に至っては夜1人で廻してしまっていたため、頻繁に強盗に入られたのは有名は話だ。モノが安くなるにはそれなりの理由があるのである。

おそらく今後同様のことが日本を襲ってくるだろう。「水はいつも清潔でタダ」「夜道を一人で歩いていても安全」「電車のダイヤは乱れない」「公共サービスはかならず受けられる」といった、「日本では常識」と思っていたことが実は裕福な国であったがための特権に過ぎず、今後それは徐々にだが確実に失われるという事実に直面するはずだ。国民の購買力が落ち、国が貧しくなる、というのはそういうことなのである。

さかもと女史がわかってないのはこのこと。新生JALに彼らが置かれている状況と全く逆の期待をし、大々的に雑誌なんかで書いちゃったこと。

たぶんJALもいい迷惑だと思っているに違いない。

執筆: この記事はnorimさんのブログ『norim的ココロ』からご寄稿いただきました。

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