『誰かが、見ている』香取慎吾&三谷幸喜インタビュー「ネット配信の自由な空気は文明開化に似てる気さえしました。生まれていないですけど(笑)」

脚本/監督・三谷幸喜氏&主演・香取慎吾氏のタッグ再び! Amazon Original ドラマシリーズ『誰かが、見ている』が9月18日より配信となります。

2004年の大河ドラマ『新選組!』をはじめとして、2018 年に上演された舞台『日本の歴史』 など大きな反響を得た魅力的な作品を創り出してきた両氏のタッグが今回お送りするのは “シットコム”。 “シットコム”とはシチュエーションコメディの略で、海外で親しまれているドラマ ジャンルであり、同じ舞台と主要キャストで繰り広げるコメディドラマの形式です。三谷幸喜さんならではの洒落た会話や、思いがけない仕掛けの数々が展開され、香取慎吾さんがその高い要求に応えていく最高に贅沢なドラマとなっています。

今回は、三谷さん&香取さんご本人に作品についてお話を伺いました!

――本作はAmazon Prime Videoでの世界同時配信という事で、日本以外の観客も意識をしましたか?

三谷:もちろんです。香取さんという、とても優れた俳優さんがいて、その人が演じるコメディをとにかく世界中の人に見てもらいたいという思いがまずありました。その為に、僕は脚本家だからセリフで笑わせようとしてしまいがちですが、それだけじゃない、セリフがない所で、彼の動きや表情で笑わせてみたいという気持ちがあって。特に1話は日本語が分からなくても、世界中の方が面白がってくれると思うんです。

――香取さんも意識されましたか?

香取:僕はあんまりそこへの意識はしていなく。脚本に書いてあること、三谷さんの演出のことをできる限り今やることに集中しました。動きを面白くしたという事があるかないか、と言われればありますね(笑)。

三谷:(笑)。

香取:セリフに言葉がなくても、笑ってもらえたり感動してもらえたり、そういう作品だから、そうしなければいけないとは思っていました。

――香取さんは、3年前にInstagramとTwitterを開設されて、ネットでのファンとのやりとりも楽しまれていると思います。今作も配信作品ということで、ネットならではの楽しみ方を感じている部分はありますか?

香取:作る方からすると、すごく時間をかけて皆様に楽しいと思ってもらえるものを作っているんだけど、観る方は、すごい早いんですよね。今までとは時間の流れが違う。三谷さんが驚いたって言ってたけど、僕も「1話ごと一週間ずつ配信」っていう今までの地上波の感覚でいたんだけど、配信日に8話全部、ボン!て配信されるんですよね。驚きながらも、自分が今まで見てきたデジタルコンテンツもイッキ見していて、「あ〜、面白かった!次のシーズンまだかな」って思っていたので。楽しむのも早いし、飽きるのも早いし、次を求めるのも早いし。だから、ちょっとくらい失敗しても良いんじゃないんですか?って思いました。

三谷:そうですよね。だからこそ、いろんなことにチャレンジできるというのは、すごく感じますよね。うまくいったか、いかないかは先の話で、とにかくなんでもやってみようという自由な空気は感じますし、それは、江戸から明治に移った文明開化の、あの頃の雰囲気に似てる気さえしました。僕は生まれていないので知らないんですけど(笑)。

香取:(笑)。

三谷:僕は古い人間ですが、今回ネット配信をやってみてわかりました。本当に、これは素晴らしいと思います。面白いもん!

香取:面白いですよね。僕なんて、ネットで色々なコンテンツを観ていて、何にいくら払ってるか分からないですもん(笑)。

――お2人はこれまで何度もタッグを組まれていますが、本作で新たにしたチャレンジはありますか?

香取:今まで三谷さんとご一緒した作品では、振りまわされる役が多かったんですけど、今回は振りまわす役だったので、そこが難しかったです。『誰かが、見ている』佐藤二朗さんが演じられている粕谷次郎みたいな役が僕は多かった。

三谷:これまでのどんな作品でも、基本、あたふたしてましたよね。今回は、割とあたふたしてない。本当は(舎人は)振りまわしているけど、振りまわしていることにも気づいてない……みたいな。

――ライブ感ある「あたふた」というのはシットコムの醍醐味でもありますよね!

香取:舞台を除いて普段、芝居中に疲れたとか、汗を掻くとか、息が切れてくるという経験はなかったんですけど、シットコムを経験してその気持ち良さを感じました。マラソン好きな人の感覚、みたいな。マラソンしないからわからないけど(笑)。ハアハア言いながら演じ切ったときに飛び散る汗が「こんな感覚、初めて!」みたいな気持ちよさがありましたね。

三谷:通常シットコムは長回しで撮らないものなんです。でも、今回、お客さんに入っていただいて撮影している回があるのですが、止めながらだとお客さんのテンションも下がってしまうので、一気に撮った方が良いと思いました。そのため、今回は長回しという形を取らせてもらいました。それによって生まれる1番の効果は香取さんがおっしゃったような事で。例えば普通のドラマだと俳優さんの本当の汗をメイクさんが綺麗にふいて、それからスプレーで汗をかけることがありますが、「いや、本当の汗でいいじゃん!」と思ってしまうんですよね。今回は30分ほぼ長回しで撮っているので、後半は佐藤二朗さんも汗だくになっていますが、あれは本当の汗で、本当に疲れているんですよね。その臨場感は普通のドラマとは全然違うテンションを感じます。ご覧になると、撮り方やお客さんの笑い声が入っている、だけの違いだけじゃなくて、ドラマとして、今までとは全く違うものだと分かっていただけると思います。

――改めて、今回再びご一緒にお仕事をしてみて、お互いに感じたことはありましたでしょうか。

三谷:香取さんとはたくさん一緒に仕事をしてきていますが、仕事以外の場で会うことって全くないし、プライベートで会うこともありません。仕事の時だけ、ガッと集まる感じなので毎回、新鮮な緊張感がありますね。

当然、馴れ合いもないです。やはり僕と彼との関係は、僕が、こういうものを作ってこういうものをやりたい……台本を書いて、彼がやってくれる。ただ、それがいつまで続くか分からないし、いつか「いや、三谷さんは、もう僕と感覚合わないからできませんよ」と言われるかもしれない。そういう緊張感の中での仕事だという気持ちは常にあります。

香取:そうですね。いつも三谷さんがご一緒させてくれていて本当に(三谷さんのことが)好きですし、いろんなものを生み出す三谷さんの才能に惚れていますし、そこに参加できることだけでも幸せだなと。自分がいない三谷作品を観たときに、「なんで僕はここにいないんだろう?」って思うんだけど、すぐ次に、「あ、ここには僕が必要ないって三谷さんが思ったから、いないんだ」って。でも、三谷さんが何か僕とやりたいって思ってくれるのは、まだまだ終わらないんだろうなって常に思ってます。

――とても素敵な関係ですね。このコロナ禍で、配信でこんなに贅沢な作品を観ることが出来るなんて本当に贅沢だと思います。

香取:ステイホームが始まった頃は僕も配信日を知らなかったので、早く観たいなと思っていました。去年、撮っていた作品で、コロナ禍で皆さんに笑顔、笑いを届けたくて。早くみんなに見て欲しいし、自分も見たいし、「いつなんだろう、いつなんだろう」って……。でも、あんまりしつこく聞くと、しつこい奴に思われるので(笑)、マネージャーさんにも聞けなかったかな。配信日が決まったニュースがいちばん嬉しかったです。

三谷:コロナ禍においてエンターテイメントは不要不急と言われていて、確かにそれは否定出来ない部分もありますが、皆さんおうちにいて、明るくいられない中で、やはりエンターテイメントは皆に求められていると僕は感じたんです。エンターテイメントは人々を明るくしたり、先に進む勇気を得ることもできるんですよね。僕も香取さんと一緒で「今、配信すれば良いのに!なんで今じゃないんだ!」と思っていました。でも、まだ編集ができてなかったんですけどね(笑)。「もっと早く(編集を)やればよかった!」と思いつつ、ようやくこの時を迎えられたという感じです。

香取:やっぱり(エンターテイメントは)必要だなと思うし。あと、新しいやり方がたくさん出てきて、今までと形が変わっていくとは思うけど、今までのものも決してなくならないで欲しいですね。ライブや舞台では、客席を離してソーシャルディスタンスをとる形でお客さまをお迎えしているけれど、いつか空いた席なく満員御礼の劇場での演者がより濃厚に客席に近づきながらお芝居ができる日がなくならないと良いなと思いました。

三谷:確かに。僕は舞台の人間なので、切実に思いますが演劇は本当に大変で一番打撃を受けています。演劇は、ライブであることが必然ですから、ライブではない演劇は、やはりどこか演劇とは違うものという感覚があります。もちろん早くもとの形に戻ってほしいですが、でも、色々な新しいことを試みながら、演劇は演劇で頑張っています。それに、配信もそうですが、新しい方法が出てくるのであれば、僕らは、それをうまく利用すべきだとも思います。要は、どんな条件であれ、そこで一番、面白いものを創って皆さんに提供していくのが僕らの仕事なんだと思います。

――今日は貴重なお話を本当にありがとうございました!

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『誰かが、見ている』2020年9月18日(金) AmazonPrimeVideoにて独占配信
脚本/演出: 三谷幸喜
出演: 香取慎吾、佐藤二朗、山本千尋、長野里美、宮澤エマ、夏木マリ ゲスト出演:くっきー!(野性爆弾)、西田敏行、髙嶋政宏、寺島進、稲垣吾郎、山谷花純、近藤芳正、松岡茉優、橋本マナミ、八嶋智人、さとうほ なみ、小日向文世、大竹しのぶ、新川優愛、小池栄子(登場順)
制作プロダクション:株式会社 ギークサイト、株式会社ギークピクチュアズ

(C)2020 Amazon Content Services LLC

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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