【現文講師・小柴大輔直伝】志望理由書&小論文対策!法学政治学分野編
小論文や、総合型選抜・学校推薦型選抜の対策には読書がいいというけれど、実際どんな本を読んだらいいんだろう?
そんな人のために、スタディサプリで「現代文」と「小論文」を担当する小柴大輔先生が読書案内をしてくれるコーナーがスタート!
小柴大輔先生 プロフィール
Z会東大進学教室で講師を務めるほか、ロースクール(法科大学院)や司法試験受験の予備校においても一般教養小論文を指導している。
感覚ではなく論理的に答えを導く指導に定評があり、「現代文に対するイメージが変わった」と受験生から圧倒的な支持を集めている。
スタディサプリでは、現代文のほか、小論文や総合型選抜・学校推薦型選抜対策講座を担当。
今回は、法学政治学分野の本を紹介してもらったよ。
『キヨミズ准教授の法学入門』木村 草太(きむら そうた)/海星社新書/2012年
木村さんは1980年横浜市生まれ、東大法学部卒、現在、東京都立大学(首都大学東京からもとの名称にもどりました)教授。
専門は憲法。
テレビ朝日の「報道ステーション」のコメンテータでとしてしばしばテレビにも登場します。
頭がいいのはわかりますが、アタマのカタチも抜群にいい!
端正なお顔立ちでこれぞ〝メガネ男子〟と呼びたいほど、おそらく日本一カッコイイ法学者(スミマセン、本の紹介になってません)。
さて、木村さんは中学生のときに日本国憲法を読んで、えも言われぬ「解放感」を得たと語っています。
そんな筆者による「世界一敷居の低い法学入門書」がこれです。高校2年生の男子生徒との会話とストーリーで文章が進みます。
重要なことをわかりやすく語る本です。
法律も憲法もそれ自体は味気なく、無味乾燥な文の連続なのですが、語るべき人が語るとそれはそれは味わい深く感動を誘うものなのです。
『中高生のための憲法教室』伊藤 真(いとう まこと)/岩波ジュニア新書/2009年
伊藤さんは1958年東京生まれ、東大法学部卒。
在学中に司法試験合格。弁護士。
司法試験関係で伊藤真さんの名前を知らない人はいないというほど有名な人が書いた憲法の入門書です。
また「一票の格差問題」を是正する社会運動でも知られています。
世の中を少しでもよくするため、法律サイドから活動をしている方です。
では、憲法そのものをふりかえってみよう。
『英文対訳 日本国憲法』(大日本帝国憲法や新教育基本法も収録)ちくま学芸文庫2011年 左ページが英語、右ページが日本語の対訳です。
「最高法規」「基本的人権」「統帥権の独立」「臣民」って英語でなんていうか、知っていますか。
英語ではそう表現するのかという発見がいくつもありますし、英語の勉強にもなります。
これは一家に一冊備えておきたい本だと私は思います。
なお日本語部分については、すべての漢字にルビがついています。
『父と娘の法入門』大村 敦志(おおむら あつし)/岩波ジュニア新書/2005年
大村さんは1958年千葉県生まれ、東大法学部卒、同法科大学院修了、民法の東大教授。
本書は父と娘の会話というスタイルですすめられており、生活に身近な法律のことがよくわかります。
もくじを挙げると「中高生のための法教育」「名前があるのはなんのため」「落し物か捨て子か」「親子であるには」「動物を殺してはいけない?」などです。
肩ひじはらずに法律に近づけそうでしょ。
続編があります。
『ルールはなぜあるのだろう─スポーツから法を考える─』岩波ジュニア新書2008年です。
こちらも親子の会話形式で読み進めやすいです。
もう一つ続編『法ってどんなもの─ロースクール生と学ぶ─』岩波ジュニア新書2009年。
こちらは法科大学院の学生と高校生の会話形式です。
高校生がでくわしてしまいそうなハプニングとからめて法律を学べます。
『日本の思想』丸山 真男(まるやま まさお)/岩波新書/1961年
丸山さんは、東大法学部卒、でほぼ伝説的と言えるほどの東大法学部教授だった人です。
「日本で唯一にして最大の政治学者!」などと大絶賛されるなど、大きくは「政治学者」ですが、詳しくは日本政治思想史の研究者です。
今でも日本の政治学者でこの本を読んでいない人はまさか一人もいないでしょ、と言える本です。
でも濃密な200ページで高校生にはややハードルが高く、スラスラ読めるとはいかないかも。
そこで雑誌『思想』に載ったほんの数ページの「偽善のすすめ」をすすめます。
『思想の言葉 Ⅰ(1962~1968)』(岩波書店2001年)として書籍化されています。
日本社会にあえて「ワルがまま」ではなく「善の演技、善のポーズ」の価値を訴えるという意外性ある内容ですが、半世紀が過ぎた今でも説得力があります。
『保守のヒント』中島 岳志(なかじま たけし)/春風社/2010年
中島さんは1975年大阪生まれ、大阪外語大ヒンディー語専攻卒、京大大学院アジアアフリカ地域研究科修了、現在東京工業大学教授。
東工大は理系の大学ですが、人文社会学系でも優れた学者を集めています。中島さんもその一人。
本当の「保守主義」なのか、それとも現状でもうかる既得権にありついているだけの「保身」なのか。
カール・マンハイムやエドマンド・バークといった思想家から数々の思考のヒントがもらえます。
『正義とは何か─現代政治哲学の6つの視点』神島 裕子(かみしま ゆうこ)/中公新書/2018年
神島さんは1971年生まれ、東大総合文化研究科博士課程修了。
立命館大教授。
「正義論」と言えばこの人という、ハーバード大学政治哲学教授ジョン・ロールズ、これまた〝ハーバード、白熱授業〟のマイケル・サンデル、慶應義塾大学の小論文で出題されたマーサ・ヌスバウムなど現代の政治哲学がよくわかります。
『戦争とは何か─国際政治学の挑戦』多湖 淳(たご あつし)/中公新書/2020年
多湖さんは1976年生まれ、東大教養学部卒、同大学院総合文化研究科満期退学。
早大政経学部教授。
これまでの外交交渉の成功と失敗、戦争、および戦争の終結についてデータ化して定量的、科学的に分析し、これからの安全保障・平和構築に向けた予測と戦争予防の研究です。
ついつい歴史上の出来事(戦争)は、その都度の一回きりの特殊事例と見なされがちですが、最先端の国際政治研究では、過去の外交・軍事をデータ化してその分析を未来にいかせるように叡知を傾けています。
最後に、法律や政治を学んで、将来はジャーナリストになりたいという人もいるでしょうから、その分野で一冊紹介します。
『ジャーナリズムの現場から』講談社現代新書14年大鹿 靖明 (おおしか やすあき)編著
自身も朝日新聞の記者である大鹿氏が、いま最も注目するジャーナリストにインタビューしたものです。
ジャーナリストの志や困難や手ごたえややりがいが伝わってみます。
各氏がおすすめするドキュメンタリー本リストも付いています。大賀氏は1965年東京生まれ、早大卒。
代表作『堕ちた翼ドキュメントJAL倒産』『メルトダウン』
インタビューを受けている人は以下の通り。
●角幡 唯介(かくはた ゆうすけ)・1976年北海道生まれ、早大政経学部経済学科卒、朝日新聞入社、その後、フリーのノンフィクション作家・探検家・代表作『雪男はむこうからやってきた』
●高橋 篤史(たかはし あつし)・1968年愛知県生まれ、東北大工学部中退、早大教育学部卒、日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て、フリーの経済ジャーナリスト・代表作『ドキュメント ゼネコン自壊』
●長谷川 幸洋(はせがわ ゆきひろ)・1953年千葉県生まれ、慶大経済学部卒、中日新聞入社、東京新聞論説副主幹・代表作『政府はこうして国民を騙す』『日本国の正体 政治家・官僚・メディア』/安田(やすだ)浩一(こういち)・1964年静岡県生まれ、週刊誌記者を経て、フリージャーナリスト。代表作『ネットと愛国』『ヘイトスピーチとネット右翼』
●大治 朋子(おおじ ともこ)・1965年生まれ、毎日新聞入社、現在エルサレム支局長・代表作『個人情報は誰のものか 防衛庁リストとメディア規制』
●小俣 一平(おまた いっぺい)・1952年大分県生まれ、東京経済大卒、NHK入局、現在東京都市大メディア情報学部教授。代表作『新聞・テレビは信頼を取り戻せるか』『調査報道がジャーナリズムを変える』
●杉山 春(すぎや まはる)・1958年東京生まれ、早大一文卒、雑誌記者を経て、フリーのルポライター・代表作『ネグレクト』『ルポ 虐待』
●栗原 俊雄(くりはら としお)・1967年東京生まれ、早大教育学部から政経学部へ編入、政治学科卒、同大学院修士課程修了、毎日新聞入社。代表作『戦艦大和 生還者たちの証言から』『シベリア抑留』/大塚(おおつか)将司(しょうじ)・1950年神奈川生まれ、早大政経学部同大学院修士課程修了、日本経済新聞入社、代表作『新聞の時代錯誤 朽ちる第四権力』『死に至る会社の病 ワンマン経営と企業統治』
●堀川恵子・1969年広島県生まれ、広大総合科学部卒、広島テレビ放送入局、フリーのジャーナリスト・代表作『死刑の基準』『永山則夫』
※2020年7月時点の取材内容になります。
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