ソフトウェア更新の休止について

ソフトウェア更新の休止について

今回は矢吹拓也さんのブログ『INASOFT 管理人のひとこと』からご寄稿いただきました。

ソフトウェア更新の休止について

このたび、蓄積した疲労と、趣味に対する疑問から、INASOFTにおけるソフトウェア更新をしばらく休止させていただくことになりました。
これには、次のような背景事情があります。

フリーソフトとプラットフォームの関係

Windows 8において新しく採用されたスタイルのソフトウェア形態(Windowsストアアプリ、いわゆるメトロスタイルアプリ)は、Microsoftへの制作者登録が必要となりました。ソフトウェアにも事前審査が必要になりました。これはおそらく、Windows 8がスマートフォンやタブレットPCへの適用を前提としたものだからでしょう。なお、しばらく経過した後、登録は有料になると聞いています。

このあたり、PC向けのフリーソフトを、まったりと作っていきたい考えとは逆行した考え方になってしまったな、と思いました。

しかし近年は、PC利用者が減って、スマートフォンやタブレットPCの利用者が多くなってきています。私自身も、タブレットPCと向き合っている時間が徐々に増加しています。世の流れが、そういった傾向にあるのでしょう。

そんな中で「PC向けのフリーソフトを、まったりと作っていきたい考えとは逆行した考え方」とか言っている自分が、世の中とは逆行した考え方に浸っていることに気づき、時代について行くことの困難さを痛感しました。

人とインターネットの関係性

昨今はPCの利用方法やインターネットの利用方法がどんどん変化してきました。

一昔前は、インターネットの接続時間はそれほど多くなく、また利用シーンも「PCを快適に使うための『手段』」でしかありませんでした。

ユーザーの主戦場はPC上であり、しかしPCのスペックはそれほど高くなく、高くないPCを少しでも快適に使うために、レジストリのカスタマイズツールや、デフラグを使うといったことが、華々しく行われていました。

しかし最近では、考え方が逆になっています。ユーザーの主戦場はインターネット上のサービスです。
それはSNSだったり、Twitterだったり、Google Documentだったりします。PCは、インターネットを使うための一手段でしかありません。むしろ、インターネットが使えるなら、PCでなくてもよく、スマートフォンでもいいし、タブレットPCでもいいし、ゲーム機だっていい。

この流れに従い、ソフトウェアやサービスの考え方も、PC上を中心とした考え方から、インターネット上を中心とした考え方に変化してきました。サービスはインターネット上で提供されるものが中心となり、PC上のソフトウェアはインターネット上のサービスを使うためのクライアントです。

ソフトウェア開発者として踊り続けたければ、このような考え方にシフトしていかなければなりません。しかし、今から考え方を変え、住み慣れた開発環境から新しい開発環境へ移行するには、ちょっと歳を取り過ぎてしまいました。新しく事を始めるには、若いパワーが必要で、いつの間にか自分にはそれが無くなっていることに気づきました。

第4番目のステークホルダーの問題

一昔前、パソコン通信時代~インターネット初期までの時代は、フリーソフトの「関係者」は、「作者、ユーザー、転載者」に限定され、うまく回ってきました。

作者が趣味でソフトウェアを作り、ユーザーが使ってフィードバックする。転載者は、他のネットに転載・自サイトへ転載・雑誌掲載などにより、ソフトウェアを広めてくれる。
基本的にこれらは相互依存の関係になっていて、殊更細かく説明はしませんが、この3者のいずれもが活躍しても、他者へ有益となります。例えばユーザーがソフトウェアを使ってくれれば作者はうれしいし、フィードバックをもらえればソフトウェアを進化できる。転載者が頑張ればソフトウェアが広まって作者がうれしい、みたいな感じです。もちろん、この3者間でトラブルもあるでしょうが、それを解決すればプラス方向に導くことができ、それは作者のモチベーション向上になります。

ところが最近、これにセキュリティ企業が加わってきました。これは、これまでの3者の関係とは違っていて、セキュリティ企業ががんばっても、作者へのフィードバックがありません。それどころか昨今の事例では、作者へマイナスとなることばかり起こすようになってしまいました。作者とセキュリティ企業がトラブルを解決しても、それはゼロの状態に戻るだけでプラスの方向に導くことができません。疲れるだけでモチベーションは上がりません。

残念なことに最近は、そんなセキュリティ企業とのトラブルばかりに時間を使うようになってしまいました。これはただの苦痛でしかありませんでした。趣味のソフトウェア制作時間のうち、9割がこの苦痛作業にかかりきりになっていることに気づいたとき、「はたしてこれは趣味なのか?」と疑問を持つようになりました。
終わりの見えない苦痛に日々腐心することを趣味とするならば、そんな趣味はやめてしまったほうがいい。そうすればきっと、日々のイライラも収まるし、この偏頭痛も治まってくれるでしょうし。

つらつらと色々書きましたが、要はこの「趣味」に対して、休養が必要なくらい疲労が蓄積していて、また、趣味が趣味であり続けることに疑問を感じるようになってしまいました。そのため、趣味としていた「ソフトウェア更新等」について、当面お休みさせていただくことになりました。

具体的には次のサービスを休止します。


・既存ソフトウェアの更新(機能追加・機能修正・パッチ公開・致命的な不具合の修正等も含む)
・フィードバックの受付
・ブログコメント欄の新規追加停止
・非公式掲示板へのリンク
・開発支援金の受付

なお、メール・Twitter・Facebookによる質問の受付は継続しますが、それに対して返答できるかどうかはわかりません。他サイト・雑誌等への転載については、これまで通り、自由に行っていただけます。

ご理解のほど、お願い致します。

執筆: この記事は矢吹拓也さんのブログ『INASOFT 管理人のひとこと』からご寄稿いただきました。

  1. HOME
  2. デジタル・IT
  3. ソフトウェア更新の休止について

寄稿

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

記事ランキング