【ここは法廷だゼ!】「なんで先に帰るんだよ!」被害者の右頬をハンマーで殴ったそのワケは
タンガリーシャツにデニム、とブルーでキメている被告人は、見たところ60代くらい。同じアパートに住む50代男性の右頬を金槌で殴りつけたほか、そのときに刃体15センチ強の包丁も所持していた、という傷害、銃刀法違反で逮捕、起訴されていた。被告人も被害者も、このアパートに単身で住んでいたようだ。
冒頭陳述では「友人である被害者の部屋で、被害者の態度に立腹して犯行に至った」と語られたが、その立腹の内容がひどかった。
「酒を飲むと飲み続けてしまう。その日の事は酒が入っていたとはいえ、よく覚えています。被害者の家に新しいテレビが届いた日でお祝いをかねて、部屋から焼酎を持って遊びに行きました」(by被告人の調書)
テレビが届いたお祝い、って妙に新鮮なイベントだ。ここまではよかったが……。
「銭湯でのことがあって、私は右手に持った金槌を振り回しました」(同)
被告人が怒り狂って金槌を振り回してしまうほどの出来事だったという“銭湯でのこと”とは何だったのか?
被害者から見た事件はこうだ。
「被告人とは一緒に酒を飲んだりする事がありました。飲んだ時“俺は昔、○○組のヤクザだ”と言っており、刺青も入ってました。あまり関わりたくないと思ってました。この日はテレビが届いた日で、夜に酒を持ってやってきました。勝手にドアを開けて入ってきて“一緒に飲もうよ”と言いました。怒ると手に負えないのでしかたなく……」(by被害者の調書)
なんと被害者は渋々付き合っていたというのだ。テレビが届いたお祝いも、ありがた迷惑でしかなかったらしい。そして飲んでいるときに、
「被告人の足のニオイが気になり、耐えられなくなりました。私は“銭湯に行こう”と被告人を誘い出しました。被告人は銭湯で他の人と話し込んでいたので、幸いと、置いて帰りました」(同)
友人だと思っていた被害者から実は好かれてなかったことや、足が臭い(しかも、耐えられないぐらい臭い)事などが法廷で暴露され、これは筆者だったら立ち直れないレベルの罰ゲームだが、被告人はすました顔で被告人席に座っていた……。さすが前科6犯、裁判慣れしている。
「部屋に帰って横になっていると、やってきて“なんで先に帰るんだよ”と肩を押してきました。向かい合って立っていると右頬に鈍い痛みが……」(同)
なんと、銭湯から置いて帰られたことがキッカケだったようだ。短気にもほどがある。被告人質問では「おどかすつもりで金槌、持ってったんですけど、素手だとやられるかも、と包丁持っていきました」と荒々しいことを述べる被告人。事件後は被害者に手紙を書き、ポストに入れたという可愛い一面も暴露されたが、被害者は早々に引っ越したようだ。
「今はぁ~、糖尿と肝臓で病院行ってます! C型(肝炎)ですね」と誇らしげに病気のデパートであることを語った被告人(病気自慢する被告人は多い)だが、前科も今回の事件も、みんな酒を飲んで起こしている。事件の騒ぎでかけつけた近隣住民も「被告人から強い酒のニオイがした」と語っているのに「いやぁ~もう、医者からも、肝硬変一歩手前と言われてるんで、ほとんど飲んでないっすね」と必死で“飲んでないアピール”をしていた。生活保護で生活している手前、酒浸りということを隠そうとしているのだろうか? 被告人に関してはとにかく酒をやめれば人間関係も体調も上向きになるような気がするのだが……。
画像引用元:flickr from YAHOO
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傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。
ウェブサイト: http://tk84.cocolog-nifty.com/
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