【レビュー】夢と現実、その狭間で揺れながらも彼女は自らの真実を歌い上げる―『ワイルド・ローズ』
舞台はイギリス、グラスゴー。
刑務所を出所して帰宅したシングルマザー、ローズは1年ぶりに母と2人の子供に会う。
ローズには歌の才能があり、カントリー歌手として大成することを夢見ている。
ただ子供たちの母としてまだ地に足がつかない彼女は、自分の母親から親としての無自覚・無責任ぶりをいつも厳しく責められる日々を送っていた。
本作の見応えは、何と言っても主演女優ジェシー・バックリーの心を掴む歌声とその愛くるしい魅力。
もともとシンガーソングライターだった彼女の歌唱力と表現力はさすがに見事。
思わず応援したくなる愛嬌あるキャラクターもとてもいい。
このジェシー・バークリー、『ジュディ 虹の彼方に』では、オズの魔法使いのミュージカル女優ジュディ・ガーランドのイギリスでの真面目な付添役を好演していた。
一方、本作では人生を切り開こうともがく愛すべき問題児という、まるで真逆のキャラを熱演。
オズと言えば、劇中でローズが憧れるアメリカの音楽の都ナッシュビルは、彼女にとってはオズの魔法の国さながらの輝きに満ちた夢の場所だ。
夢を追い求めつつも何度も困難に直面する彼女が、最後にたどり着く場所は果たしてどこなのか?
偶然にもオズの黄色いレンガ道を歌詞に含む歌を歌い上げる圧巻のシーンは、まさにカントリーが表現する真実そのもの――。
その時の彼女の表情は、人が自らの中に答えを見出した時の輝きと感動に溢れている。
『ワイルド・ローズ』
■監督:トム・ハーパー
■脚本:ニコール・テイラー
■出演:ジェシー・バックリー 、ジュリー・ウォルターズ、ソフィー・オコネドー
■配給:ショウゲート
ⒸThree Chords Production Ltd/The British Film Institute 2018
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