気になるCM「あげるくん」で認知度増?改正著作権法が海賊版対策強化として施行 違法ダウンロードの対象や罰則は?

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気になるCM「あげるくん」で認知度増?改正著作権法が海賊版対策強化として施行 違法ダウンロードの対象や罰則は?
(画像引用元:https://j-ba.or.jp/ihoubokumetsu/)
「つかまるよ、マジで」のフレーズで知られる「違法だよ!あげるくん」のコマーシャルを見たことがある人は多いのではないでしょうか。このCMは、テレビ番組などを許諾なく動画投稿サイトなどにアップロードして公開する「違法配信」について、認識を深めてもらうことを目的に日本民間放送連盟が放映しているものです。近年、深刻化しているのが無断アップロード・違法ダウンロードの問題です。

インターネット上で、権利者に無断でアップロードされた漫画などを無料で公開する海賊版サイトによる被害の拡大を受け、改正著作権法が2020年6月5日の参議院本会議で可決・成立しました。

現行の著作権法では、違法ダウンロードの対象を、映像・音楽としていましたが、漫画や小説、論文などを含む著作物全般に拡大。2021年1月1日から施行され、海賊版と知りながらダウンロードする行為は違法となります。悪質な場合には、刑事罰も科されます。

また、違法にアップロードされた著作物へのリンク情報を掲載し、海賊版に誘導する「リーチサイト」の規制も盛り込まれています(2020年10月1日に施行)。改正により、どのような行為が違法となるのでしょうか。罰則は。弁護士の得重貴史さんに聞きました。

漫画や文章、写真などコンテンツ全般が違法の対象に。有償コンテンツで、継続的・反復して行われた場合は2年以下の懲役・200万円以下の罰金

Q:著作権法が改正された背景は何ですか?
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改正のきっかけは、海賊版サイトによる被害の拡大です。海賊版サイトの一つである「漫画村」(2018年閉鎖)による被害額は約3000億円分で、漫画家と出版社の収入・売上が20%減少したという試算になります。また、リーチサイト「はるか夢の址(あと)」では、2017年に摘発されるまでの1年間で約731億円の損失があったとされています。

摘発されたサイトが閉鎖後も海賊版サイトは多数存在し、アクセス数上位10サイトの利用者数は、月間のべ6500万人と言われています(データは文化庁「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律(説明資料)」より)。

摘発が抑止力となっていないことから、サイト自体を規制し、あわせて個人ユーザーによる違法ダウンロードを規制することで、海賊版サイトによる被害減少につなげる目的があります。

Q:改正の大きな柱となるのが、著作物全般を対象としたダウンロードの規制です。具体的にはどのような内容ですか?
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そもそも著作権法では、著作権物の複製は違法です。複製の例外として、個人の私的な利用を認めていました。私的利用の例外として、すでに、違法にアップロードされたことを知りながら音楽や映像をダウンロードする行為が違法とされています。今回の改正で対象を広げ、漫画や文章、写真などコンテンツ全般を、違法にアップロードされたと知りながらダウンロードする行為が、私的利用でも違法となります。

違法なアップロードだと知っていたかどうかの立証は難しいですが、いわゆる海賊版サイトからのダウンロードは「知っていた」と認定される可能性が高いです。

例えば「YouTube」は、著作権者から許可された正規のコンテンツも多く掲載されており、違法とはなりにくいでしょう。一方、海賊版サイトは、違法なコンテンツしか掲載されておらず、常態化している、などの特徴があります。

Q:特に悪質なダウンロード行為には、罰則も科されました。具体的にはどのような行為が悪質と判断されるのでしょうか。罰則の内容は?
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刑事罰の対象となるのは、もともとコンテンツが有償で提供されており、継続的、反復してダウンロードが行われた場合です。権利者による告訴が必要な「親告罪」で、2年以下の懲役・200万円以下の罰金が科されます(併科も可)。民事上では、無償・有償に関わらず、損害賠償請求が可能です。

ただし、次のような事例は対象外とされ、違法となりません。
①「軽微なもの」
<量>
数十ページのうち、1コマや数コマ。一方、1話の半分程度は違法となります。
<質>
サムネイル画像。違法となるのは鮮明なイラスト、高画質の写真などです。

②スクリーンショットでの写りこみ
スマートフォンでのスクリーンショット(画面保存)や、インターネット上の生配信で、著作権物が写りこんでいる場合。

③二次創作やパロディ
いわゆる同人誌などで、原作をもとに作り替え、原作者の許諾なく作り替えた本人自身がアップロードしたものをダウンロードした場合。ただし、作り替えた本人の許諾を得ず、第三者がアップロードしたものをダウンロードすると違法になります。

④著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合
特別な事情として文化庁が示した例では、詐欺集団が作成した詐欺マニュアルを、被害者団体のサイトなどで無断掲載したものを、個人が防犯目的としてダウンロードした場合が挙げられています。

Q:利用者に違法ダウンロードを誘導するサイト「リーチサイト(アプリ)」の規制も含まれ、2020年10月1日から施行されます。どのような内容ですか?
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リーチサイト(アプリ)とは、権利者の許可なく、違法にアップロードされた映像や漫画などのコンテンツに利用者を誘導する掲示板型のサイト(アプリ)です。サイト自体に著作物が掲載されるのではなく、違法にアップロードされた著作物へのリンク先が多数掲載されています。

違法にアップロードされた著作物のリンク先を掲載した「リンク提供者」には、3年以下の懲役・300万円以下の罰金が科され、リンク情報を掲載したサイトを設置・運営する「サイト運営者(アプリ提供者)」には、5年以下の懲役や500万円以下の罰金が科されます。いずれも併科が可能で、厳罰と言えるでしょう。

Q:今回の改正で、海賊版を扱うサイトは減少すると考えられますか?また、ユーザーとして注意すべき点をお教えください。
——–
海賊版サイトに対する、ある一定の抑止効果が期待できます。文化庁によると、音楽・映像の違法ダウンロードにおいても、2012年に刑事罰化されて以降、ファイル共有ソフトにおける「有償著作物等」と考えられる音楽・映像ファイルが、大幅に減少したといいます。

また、2019年に、運営者らに対する実刑判決が下されたリーチサイト「はるか夢の址」の裁判では、そもそもリーチサイトが著作権法違反にあたるかどうかが議論となりました。改正により、はっきり違法と示されたことで、摘発がよりスムーズに進むと考えられます。

何よりもまず知ってほしいのは、漫画などの著作物を創作した人は、下調べや取材なども含め、相当なエネルギーを費やし、作品を生み出しているということです。

本来、その作品を読むには対価が必要です。リーチサイトなど海賊版サイトは違法です。定額制で読み放題になる「サブスク(サブスクリプションサービス)」などでないにもかかわらず、コンテンツのすべてが無料で読み放題になるサイトは「問題があるかもしれない」と、一度立ち止まってください。

作者は作品により、社会的な評価を受け、生活しています。海賊版の利用は、作者の生活を追い込み、今後良い作品を生み出し続ける可能性を奪うことにもつながります。一人一人が、自分の好きな作品を応援する気持ちをもち、正当な手段でコンテンツを楽しんでほしいですね。

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