龍谷大平安が決意の再出発、京都大会は全員3年生で戦う

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龍谷大平安が決意の再出発、京都大会は全員3年生で戦う

6月8日に練習再開、原田英彦監督が思い伝える

新型コロナウイルスの影響で中止された今春センバツの代替試合として、出場が決まっていた高校を甲子園に招待して8月に交流試合が行われることが発表された。1試合限定とはいえ、一度はあきらめた甲子園でプレーできることは、球児にとって最高の報せだろう。
センバツの32校には入っていないが、全国最多の春夏通算75回の甲子園出場を誇る京都の名門・龍谷大平安高も6月8日から全体練習を再開している。3月上旬から練習を中止しており、この春に入学した新入部員を含めた全部員が揃って練習を行ったのは、8日が初めてだった。
原田英彦監督は練習前のミーティングで3年生に思いを伝えた。
「自分の道は自分で決めないといけない。自分で考えて進む。それが自立のきっかけになる。『あいつがこうやから』とかそういう考えは決して持たないでほしい。野球を続ける子、就職する子、専門学校へ行く子。それぞれ人生の目的、目標があると思う。そこで自分がどうしたいか。どうなりたいか。それを考えると行動が変わってくるはず。高校野球はそういう部分を学べる。
同じ高校生でも、3年間遊んでる子、一生懸命勉強してる子、バイトしてる子、部活してる子。どんな子も目的、目標を持ってるはずなんや。君たちはその中で野球を選んでやってる。平安で野球をやってる。平安で野球をやれるなんて特別や。ハッキリ言う。特別や。絶対に将来プラスになる。『あぁ平安でよかったな、野球やって良かったな』そう思う日が必ずくる。絶対にくる。
ここ数日、OBがグラウンドに来てくれる。たくさんのOBから連絡がきた。後輩思いや。『何かやれることはないですか』『何かやらせてください』そう言ってくれて俺は嬉しかった。彼らも君たちのことを気にかけている。その思いもわかっておいてほしい。そして君らも卒業した時にそういう先輩でいてほしい。だから強く逞しくいてほしい。
これから(独自開催される)京都の大会がある。形式や試合数もハッキリわからない。ここで言っておく、全員3年生で戦う。甲子園バージョンのユニフォームを着てもらう。そこで自分の一番かっこええとこを見せてください。強豪と練習試合も組んでる。それもすべて3年生でいく。そこで真剣に燃えてやってほしい。
もっと『ああしてほしい、こうしてほしい』というのがあれば言いに来なさい。僕にやれるのはそれくらいです。今日から新たにスタート。元気出していこう!」
私も平安高校硬式野球部OBであり、原田監督のもとで3年間マネージャーを務めた。当時から「甲子園はたしかに最高や。出たほうが絶対に良い。でもそんなことより自立して卒業してほしい。人間形成。それが僕の目的」と何度も口にされていた。そして本気でそれを教えてくださった。だからこそ、監督の言葉はとても温かく、大きなメッセージを感じた。

久々に監督のノック受け「嬉しかった」

練習が始まり、グラウンド横の坂道を大粒の汗を流しながら懸命に走っている選手がいた。卒業後も大学で野球を続けるという主戦投手の3年生・西本晴人だ。「大きな目標がなくなったのは辛かったけど、監督さんが強豪校との練習試合を組んでくださったり、色々と動いてくださっていることは有難いです。練習も久しぶりで実戦に向けての不安もあるけど、試合に向けてしっかり練習を積み重ねて勝負します」と目の前の試合と、これからの自分のために練習に取り組んでいた。
1年夏からベンチ入りし、主軸打者としてチームを引っ張ってきた三塁手、3年生・奥村真大に約3か月ぶりに監督のノックを受けてどんな思いだったかを尋ねると「最高でした!楽しかったです!僕は監督が大好きなんで。純粋に嬉しかったです」と満面の笑みで話した。奥村はこれまでの自粛期間で体重を10キロ増やしてグラウンドに帰ってきた。これから先も長く野球を続けるために、強い身体を作りたくて体重増加に取り組んだそうだ。見違えるほど大きくなっていたが、身体の動きにはキレがあった。
そして新チームでの活動に向けて率先してチームをまとめる2年生もいる。投手の小西大和だ。新しく入部してきた1年生に指示を出したり、周囲への目配りが感じられた。話を聞いてみると、「僕らにはまだ来年、チャンスがあります。今日までの自粛期間は目標に向けて個々の練習を大切にしてきました。野球ができる喜びは絶対に忘れません。目標の達成に向けてチームでひとつになって頑張ります」と明るい表情で答えた。
本来なら3月25日から練習に参加する予定だった新入生もこの日を心待ちにしていた。福岡県から平安高校の門を叩いた内野手の江口飛向(ひなた)は「ワクワクしながら待っていました。初めて練習してキツかったですけど楽しかったです」と率直な感想を語った。ノックでは1年生とは思えない機敏な動きとグラブさばきを見せていた。全体的に見ても活気があり、今後の高校生活への意気込みを大きく感じた。約40名の新入部員たちがこれからどのように成長していくのか非常に楽しみだ。

森村副部長「良い方に導いてやれないなら大人の責任」

グラウンドの練習のみならず、学校生活から寮生活まで選手を見守り続ける森村副部長は部員への熱い思いを口にした。
「まだまだ野球の脳みそが身体についていけていない。集中力が欠けているし、どこかボーッとしている人間もいる。でもまだ1日目。仕方がない。
これからやってみてどうなるか。技術的な面でも精神的な面でも、これまで詰めてやってきたことがこの数ヶ月で崩れてしまった。でもそのままにするわけにはいかない。卒業するまでに大事なことは教え続けていかないといけないし、グラウンドで野球をやる以上は手を抜いてはいけない。グラウンドは勝負する場所だから。
目的、目標に対する意識が高くならないのもわかる。選手にも『俺が現役でも、どうしたらいいかわからない』と伝えた。でも、それを良い方に導いてやれないならそれは大人の責任。子どもらは悪くない。そこは大人として何としても導いていきたい。
でも何がどうであれ、一生懸命するか、一生懸命しないかのふたつしかない。こういうときだからこそ、自分のために人のために今ある時間を大切に使わないと、本当に良いものは残らない。『大人になったらわかる』と言うけれど、それは今を一生懸命に頑張ってわかること。野球を通じての人間的な成長が何よりも大切。『おれは平安の選手や』『後輩のためにも』そう思って卒業してもらいたい。そこは伝え続けていく」
森村副部長も平安高校硬式野球部OBで原田監督のもとで主将を務めた。私が高校2年生の秋、新チームを迎える頃に本格的に指導者としてグラウンドに帰ってきた。監督と同じように熱い気持ちを持って選手と向き合う。その気持ちが私達にもすごく伝わってきて、「この人の情熱は本物だ」と感化され、気持ちをひとつに練習に打ち込んだ。だからこそ、選手にも響く言葉があると間違いなく思う。胸が熱くなった。
選手たちが情熱と信念を持った指導者のもとで野球をやれる喜びは、これからの人生でより実感すると確信している。少なくとも私はそう感じているからだ。

原田監督「ここで完全燃焼できるかどうかで人生が変わる」

練習が終わり、原田監督にこの日の練習を振り返ってもらった。
「やっぱり元気がない。どこかで吹っ切れてない気持ちがまだあるんだと思う。目的、目標が持てていない。持てないのもわかる。でも、ここで完全燃焼できるかどうかで人生が大きく変わる。そういった面では気持ちがまだまだ3年生から伝わってこない。
ここで自分の意志でやれる子、やれない子がハッキリしてくる。互いに気持ちを見せあって、言い合ったりすることで仲間同士でコミュニケーションを取ってほしい。それが仲間意識とか絆とか、そういう所に繋がってくるから。組織はその作業を繰り返してまとまっていく。本来ならしっかり計画を立てて実行して、春から夏へと大きく変わっていける時期。技術的にも人間的にも。3年生の春から夏へかけての時間が3年間で最も成長できる時期。それが失われたのは本当に大きい。残りの数ヶ月じゃフォローしきれないくらい大きい。
口酸っぱく言うけれど、それでもやっぱり人間的に自立して成長して卒業してもらいたい。そのためには大人が導いてあげないといけない。だからこそ、これからのこと、卒業してからの人生のこと、そこを一緒に考えていく。引退してから卒業までの接し方も例年とは違う形になる。『目標がなかったら、真剣にできない』それじゃ野球人として寂しいから。ヒントを多く与えて気付かせていく」
コロナウイルスの影響で、部員・指導者にとって初めての経験となった。誰もが手探りの状態で現実と自分と人と向き合わなければならない。正解がないのなら、正解がわからないなら、答えが出ないなら、最も近くにいるかっこいい大人の背中を見て、その背中を追いかけてほしい。それをまた後輩たちが見て次の世代に繋いでいく。このような状況でも力強く立ち上がり、困難に打ち克つ部員や指導者がいる組織は、これからも変わらず周囲に大きな影響を与え続けると私は思う。
甲子園全国最多出場を誇る伝統校の指導者たちは、技術や戦術よりも人間教育に最も力を注ぐ。そしてその指導者たちが伝えるヒントに部員たちが心から気付いたとき、彼らの人間的な成長は私たちでは計り知れないほど大きな財産になり、素晴らしい大人になっていくと私は信じている。
《ライタープロフィール》
笠川真一朗(かさかわ・しんいちろう)龍谷大平安高校で野球部マネージャーを務め、3年夏の甲子園で記録員としてベンチ入り。立正大学野球部でもマネージャーを務めた。卒業後は芸人としてテレビ朝日「アメトーーク!」の高校野球大好き芸人に出演。現在はフリーのスポーツライターとして活動している。

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