“女ムツゴロウ”篠原かをり、ネズミ愛が詰まったエッセイ発売! 人間とネズミはこんなに似ている!?
皆さんはネズミに対してどんな印象を持っているでしょうか。なかには、穀物を食い散らかしたり病原菌を運んだりする動物という、ネガティブなイメージが先行する人もいるかもしれません。
しかし、そのイメージがガラリと変わるかもしれないのが本書『ネズミのおしえ ネズミを学ぶと人間がわかる!』です。読むと「ネズミってこんなに人間と共通したところがある愛おしい存在なんだ……!」と目からウロコが落ちることでしょう。
著者は『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとしても活躍する、生物をこよなく愛する理系女子・篠原かをりさん。なかでもネズミは累計40匹以上飼育した経験があり、在学する慶應義塾大学大学院ではマウスの研究をしているほどの愛好ぶりなのだとか。本書は、そんな篠原さんのネズミに関する膨大な知識とさまざまな研究結果をもとに、恋愛や健康など、人間が抱えやすい悩みを解決するヒントを探っていく一冊です。
まず、多くの人が初めて知るのが「ネズミも笑い声をあげる」という話ではないでしょうか。1999年にネズミが笑うという論文が出て、2016年にはネズミが笑うときの表情や活動している脳の部位が解明されたのだそうです。母ネズミに可愛がられているときや子ネズミ同士でじゃれあっているときには笑い声もあげるのだとか。今のところ「笑う」という事実が確認されている動物は、私たち人間、その親戚ともいえるチンパンジーやゴリラなどの類人猿、そしてネズミだけ。この話だけでもネズミに対する親近感が湧いてきますよね。
このほか、ネズミは「嫉妬の感情」「共感する感情」「後悔する感情」「孤独に弱い性質」なども持ち合わせているというから驚きです。
また、ネズミの社会には勝ち負けに関するヒエラルキーも見られるといいます。自分の優位性を示すために集団の中でおこなわれるのが、ほかのネズミの毛をむしる「バーバリング」という行為。数日間負け続けたネズミは、すぐに負けを認める服従ポーズをとるようになることが確認されているといいます。さらに、社会的敗北ストレスを感じることで、引きこもり状態や喜びの消失などのうつ状態に陥ったり、腸内システムに不調を生じたりすることもあるのだそうです。
これに対して篠原さんは「勝ち続けた者は次も勝てるだろうという自信が後押しし、負け続けた者は次も負けてしまうかもしれないと自分を信じきれない心が隙となる」「人を含めた動物は、勝てると思う力が想像以上に大きく影響を及ぼすのだ」(本書より)と述べます。
言わずもがな、人間の世界も競争社会。思わずネズミと自分を重ね合わせる人もいるかもしれません。では、負けたネズミのような負のループに陥らないためにはどうすればよいのでしょうか? それには確実な勝敗が見込めない他者との闘いに挑むのではなく、「自分に小さな勝利を贈呈することが最も確実」(本書より)と篠原さん。「今日はお風呂に入れたから大勝利」「電車で席を譲れたから勝ち」「今日の服は似合っているのでビクトリー」など「確実な自分だけの勝利を積み重ねて、勝てると思い込んでいくことが、勝つ自分を作ってゆくと思う」(本書より)と締めくくっています。このマインドは、すぐにでも取り入れたいですね。
ほかにもネズミに関する知識が豊富な本書。理知的な中にチャーミングさが垣間見える文章も魅力的で、スイスイと読み進められることでしょう。
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