NASAの新宇宙望遠鏡、名前は「ナンシー・グレース・ローマン」に

NASAは現在、2020年代半ばの打ち上げを目指して新しい宇宙望遠鏡「Wide Field Infrared Survey Telescope(広視野赤外線サーベイ望遠鏡)」の開発を進めています。これまで頭文字を取って「WFIRST」と呼ばれてきた新宇宙望遠鏡の名前が「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」(以下「ローマン宇宙望遠鏡」)に決まったことが発表されています。

■ハッブル宇宙望遠鏡の母、ナンシー・グレース・ローマン

在りし日のナンシー・グレース・ローマン氏。1970年代にNASAのゴダード宇宙飛行センターにて撮影(Credit: NASA)

WFIRST改めローマン宇宙望遠鏡は、「ハッブル」宇宙望遠鏡と同じ直径2.4mの主鏡を搭載しつつ、ハッブルよりも100倍広い範囲を観測できる広視野観測装置が搭載されます。また、地球から比較的近いところにある太陽系外惑星の撮影や分光観測を行うために、恒星の強い光を遮るコロナグラフ(ステラーコロナグラフ)の搭載も予定されています。

名前の元になったナンシー・グレース・ローマン氏について、1998年までハッブル宇宙望遠鏡の主任科学者を務めたエドワード・ワイラー氏は、早くから宇宙望遠鏡の構想を抱いていたことから「ハッブル宇宙望遠鏡の父」とも呼ばれるライマン・スピッツァー氏に並び、「ハッブル宇宙望遠鏡の母」と表現しています。

ナンシー・グレース・ローマン氏は1925年にテネシー州で誕生。天文学者を志した彼女は、1949年にシカゴ大学で天文学の博士号を取得。米海軍調査研究所を経て1959年には設立されて間もないNASAに入局し、やがて同局初の主任天文学者となります。責任者の立場に就くことは研究の一線から退くことを意味していましたが、ローマン氏は生前「今後数十年に渡り天文学に影響を与えると信じていたプログラムをゼロから作り上げる魅力には抗えなかった」と語っています。

彼女が入局した当時、研究者たちは地上だけでなく気球や飛行機、それに観測ロケットを使ってデータを得ることはできたものの、天体が発するすべての波長の光(電磁波)を捉えるには至っていませんでした。大気に邪魔されることがなく、昼も夜も関係なく観測できる宇宙空間に望遠鏡を送り込む必要性を、当時のローマン氏はスピッツァー氏と同様に認識。後にハッブルとして実現する宇宙望遠鏡の必要性をNASAや米議会に納得させることに尽力します。

彼女らの努力が実って誕生したハッブル宇宙望遠鏡は、打ち上げ当初こそ予定されていた性能を発揮できなかったものの、スペースシャトルによる5回のサービスミッションを経て現在も一線で活躍。ローマン氏が2018年12月に93歳でその生涯を閉じたあとも天文学に貢献し続けており、先月には打ち上げから30周年という大きな節目を迎えました。NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「ハッブル宇宙望遠鏡の後継となるWFIRSTを命名するにあたり、彼女以上にふさわしい名前は思いつかない」とコメントしています。

ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡のイメージ図(Credit: NASA)

 

Image Credit: NASA
Source: NASA/JPL / NASA
文/松村武宏

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