当時のフラッグシップモデルであり美しいデザインをもつプジョー クーペ407。今となっては総額50万円から狙える絶滅危惧車だ
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プジョーのフラッグシップモデルであったクーペ407
クーペ407は、406クーペの後継車という位置づけだった。
ネーミングの“順番”(クーペの場所)が変わったのは、それほどの変化があったことを強調するためだったのかもしれない。
コンパクトカーやセダンのイメージが強いプジョーかもしれないが、実は昔からクーペも得意。
イタリアの名門カロッツェリア(イタリアのコーチビルダーの総称)「ピニンファリーナ」がデザインを手がけた「404クーペ」(1962年)、「504クーペ」(1969年)、そして「406クーペ」(1997年)などは、いずれも実用セダンをベースとしながら、美しく仕上げられていた。
だが、クーペ407からはプジョー社内のデザイン部門がてがけた。406クーペの控えめな古典美を越えるべく、今にもかみつかんばかりの大きなラジエターグリルがアグレッシブさを打ち出してきた。
プジョーは「迫り来る猫科の猛獣」と言っていたが……、フロントバンパー両脇にはサメのエラのような3本のスリットを見て個人的にはサメを連想したものだ。実物の印象はボディの大きさもあって、写真より迫力がある。
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407セダンとアウターパネルは別物
大きく見える、ボディサイズは全長4815mm×全幅1870mm×全高1405mm。
セダンよりも130㎜長く、30㎜ワイドで、55㎜背が低かった。ホイールベースはクーペもセダンもステーションワゴンも同じく、2725㎜で共通のプラットフォームを採用していることがうかがい知れる。
また、クーペ407は見た目こそ407セダンと似ていたが、アウターパネルはすべて別物というこだわりぶりだった。その分、費用もかかっただろう。
インテリアに目を向けてみると、インパネ全体の印象はセダンと大差ない。
しかし、レザーの使い方が贅沢だった。レザーシートが美しい形状で豪華だっただけでなく、ダッシュボードやシートの裏側などの手の触れないところにクーペ407はすべて本物のレザーを使っていた。そういったところには合皮を用いるのが一般的だが。
また、フロントウインドウとサイドウインドウに特殊フィルムを挟み込んだ防音ラミネートガラスを採用し、セダンやステーションワゴンよりも静粛性が高められていた。
クーペのリアシートは荷物置き場になりがちだが、クーペ407は2人掛けのリアシートも凝った作りだ。大人2名がちゃんと座れ、ダブルフォールディング機構も付いているので後席を畳んでトランクスペースの拡大を図れる作りとなっている。
ドアは長く、側面衝突対策の補強のせいか、驚くほど重いのが特徴的(笑)。ヒンジ式ドアでは、おそらく最も重い部類だと思う。なお、407クーペは「ユーロNCAP」の衝突テストでクーペ初の5つ星を獲得していた。
足回りはセダンに比べてバネレートが10%アップされた他、フロントで10mm、リアでは23mmローダウンされている。電子制御ダンパーを備えており、速度や横Gに応じて減衰力を変えることができる。スポーツモードでハードなセッティングに固定することもできた。
日本には、最高出力210psの3L V6エンジン+6ATのワンモデルのみ導入された。ナビやレザー内装などはすべて標準装備で、新車時価格は549万円だった。
これは、当時のプジョージャポンのラインナップで最も高かった。
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現状残り9台の絶滅危惧車
そんなクーペ407も、絶版となってから10年が経過した。カーセンサーnetには9台しか掲載されていない(2020年4月12日原稿執筆時点)。
中古車相場は年式や走行距離に比例する、と思いきやバラバラなのも面白い。最も安いもので車両本体価格は28万円、平均相場は60.1万円となっている、安い……安すぎる。
今見ても、古くさく見えないどころか現行の車に全く見劣りしないのはお見事、と言いたくなる。
ちょっとでも気になった方は、中古車物件をチェックしてみてほしい!
文/古賀貴司(自動車王国)、写真/プジョー
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