知っておきたい!妊娠と肥満の関係

女性の体はとってもデリケート。特に、妊活中や、妊娠中、出産後の体にとって、肥満はさまざまなリスクや弊害をもたらします。そこで今回は、産婦人科医の丸田佳奈先生が、妊娠を希望する女性に向けて、妊娠と肥満の関係をレクチャーします。
妊娠と肥満に関するお話は、実はすべての女性に知っておいていただきたいテーマ。妊娠・出産なんてまだまだ先の話と、肥満を放置していると、いざ出産したいと思ったときに様々な不都合が生じることがあるのです。未来の可能性を狭めないためにも、肥満は早めに解消しておきましょう。
妊活中の疑問

Q.肥満だと妊娠しにくいというのは本当ですか?
本当です。肥満がある方は生理不順だったり、生理はあっても無排卵だったりすることが多いため、妊娠しにくいんです。ですから妊活中の方で肥満がある方には、まず痩せてくださいという指導をします。
肥満だと妊娠しにくくなる理由はいくつかありますが、その一つにレプチンというホルモンがあります。レプチンは脂肪細胞から分泌されているのですが、肥満だとレプチンが過剰に分泌されて、卵胞の発育を抑制し、生殖機能を低下させます。
Q.妊娠に最適な体重とは?
瘦せすぎも厳禁です。もっとも妊娠しやすいBMI(体重と身長の関係から計算する肥満度指数)は22といわれていて、BMIが22の時を底に、それよりも低くなっても、高くなっても不妊率は高まっていきます。
また、BMIだけではなく体脂肪率にも注意が必要です。体脂肪率が22%以下になると月経不順、月経異常がおこりやすくなり、17%以下では無月経になりやすいことが知られています。アスリートのようにBMIは標準でも体脂肪率が極端に低い方は無月経であることが多く、妊娠しにくいです。
逆に体脂肪が多すぎることもよくありません。30%以上では妊娠率は低下していきます。妊娠のためには、BMIと体脂肪率あわせて適正値を保つように心がけましょう。
Q.妊活中のダイエットの注意点を教えてください。
女性ホルモンは脂質を材料としており、急激なダイエットをすると生理不順や無月経につながります。食事は脂質も糖質も適度に取って、健康的に痩せることを心がけてください。肥満の方は食べすぎの傾向があるので、まずは食事量を見直すことから始めてみましょう。
高齢で肥満がある方がすぐにでも赤ちゃんが欲しいという場合は、ダイエットと並行して不妊治療を行うことがあります。その場合の摂取カロリーなどは、医師の指示を仰いでください。
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妊娠中の疑問

Q.肥満によって、どんなリスクがありますか?
まず、赤ちゃんに対しては、流産・死産・早産のリスクが高まります。わずかですが、二分脊椎症という脊椎の奇形を持って生まれてくる率も高まります。
ほかには、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病があります。
妊娠高血圧症候群は母体の血圧が上昇し、尿蛋白や肝機能障害、腎機能障害、神経障害、血液凝固障害、赤ちゃんの発育不良などが起こる病気です。赤ちゃんが元気に育っていても、あまりにも母体の血圧が高くなりすぎるとリスクとなるため、場合によっては妊娠を中断させることもあるんですよ。
その場合、赤ちゃんは早産となり、妊娠週数が早ければ早いほど、体の機能も未熟で感染にも弱くリスクとなります。
妊娠糖尿病は妊娠中に起きる糖代謝の異常です。インスリンの働きが抑えられるため、細胞内にブドウ糖が取り込まれにくい状態となり、母体の血糖値が上昇しやすくなるので、瘦せている方でも妊娠糖尿病になることがあるのですが、肥満がある方はより妊娠糖尿病になりやすくなります。また、妊娠糖尿病の糖代謝異常は産後治ることが多いですが、妊娠糖尿病になったことのある人は、妊娠糖尿病のなかった人に比べ、将来的に約7倍の高頻度で糖尿病になりますので、産後も定期的な検診が必要です。
妊娠糖尿病になると、妊娠中、赤ちゃんの体の中にも大量の糖が流れ込んで、赤ちゃんは必要以上に大きくなります。それが当たり前の環境にいた赤ちゃんは、出産後に標準のミルク量では糖が足りなくて、低血糖を起こすことがあるんです。将来糖尿病を発症するリスクも高まります。
妊娠糖尿病が疑われたら、その方に適した摂取カロリーを医師が指示するので、必ずそれを守るようにしてください。赤ちゃんの脳の成長に糖は欠かせないので、自己判断で食事量を減らしたりするのは絶対にダメです。
こうしたリスクを減らすためにも、妊娠前に肥満を解消しておくことが大事なんですよ。
Q.妊娠中はどうして太りやすいのですか?
妊娠中は妊娠を維持するために、どうしても体に脂肪が付きやすくなります。標準的なBMIの人であれば、9~12kg、肥満の人は5kg、痩せている人は13kg程度の体重の増加は問題ありません。出産後にホルモンバランスが通常に戻って、適正な食事量と運動をしていれば、ほとんどの方は自然に妊娠前の体重に戻っていきます。
Q.妊娠中もダイエットした方がいいですか?
妊娠中のダイエットは基本的にできません。赤ちゃんの成長に必要な栄養は最低限とっていただきたいので、どんなに肥満がある方でも、必要とされているエネルギー量と栄養素は摂取するようにしてください。
厚生労働省が発表しているエネルギー摂取基準によると、妊娠中や授乳期に摂取すべきエネルギー量は、非妊娠期に必要なエネルギー量に、妊娠初期で50kcal、中期で250kcal、後期で450kcal、授乳期で350kcalプラスしたものとされています。
産後の疑問

Q.産後ダイエットのポイントを教えてください。
最近の芸能人の方は早く落とし過ぎな印象です。急激なダイエットは体に負担がかかりリバウンドしやすいので、1~2年程度かけてゆっくり落としていきましょう。
産後なかなか痩せないという方は、里帰り出産で上げ膳据え膳、ほとんど体を動かしていなかったり、授乳期が終わっても食事量はそのままという方が多いですね。自分のお肉になってしまう前に、生活を通常モードに戻しましょう。
丸田佳奈先生から女性たちへメッセージ

30歳を超えてあわてて妊活を始める方が多いのですが、初経を迎えたら時から妊活は始まっていると思ってください。
例えば高校時代に肥満による生理不順や無月経になって、それを数年間放置していると、将来痩せたとしても生理不順や無月経はそのままということがあるんです。
若い頃は、今妊娠するわけじゃないし…と放置してしまいがちですが、何年後かに皺寄せが来ます。体重だけでなく、子宮の状態もそう。妊活を始めたのはいいけれど、まずは子宮筋腫の手術からということになると、妊娠への道が遠のいてしまいます。将来、子どもが欲しいと思うなら、1日も早く健康な体になっておいてほしいです。
そして晴れてお母さんになったときには、娘の体重や子宮の健康に気を使ってあげてくださいね。
[記事提供:HOWZAP 【ハウザップ】 ライザップが運営するボディメイク情報マガジン (http://how.rizap.jp/)]
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
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丸田佳奈さんプロフィール
1981年8月20日生まれ、北海道出身。産婦人科医・モデル・タレント。日本産婦人科学会専門医。現役の産婦人科医という立場を生かし、持ち前の明るい華やかな外見に親しみやすい性格で、テレビやラジオ、雑誌等メディアを通じ、時には医療サイドの現場にいる医師として情報を皆様に発信。美に関する情報も発信中。現在TBS系の医療バラエティ『名医のTHE太鼓判!』に出演。2007年度 ミス日本。
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