高層ビルのエレベーターホールには、なぜ階数表示がないのか
今回は福田圭祐さんのブログ『本当は怖い情報科学』からご寄稿いただきました。
高層ビルのエレベーターホールには、なぜ階数表示がないのか
以前に高橋幸雄先生の授業で聞いて非常に面白いと思ったこと。
オフィスビルとかホテルとか、エレベーターが何基も設置されているビルの場合、エレベーターホールに階数表示が無いことが多い。エレベーターホールで画像検索してみればわかると思う。
これはなぜだろうか。
その理由は、「客がいても、その階を通過することができるようにするため」だ。
基本的に、多数のエレベーターを効率よく動かすのは難しい。工夫された高度なアルゴリズムが使われていることが多い。目標は「客の平均待ち時間を短くする」ことだ。ある階でボタンが押された場合、どのエレベーターがその客を迎えに行くか、という判断が平均待ち時間に大きな影響を与える。難しいアルゴリズムの中で、この点がもっとも重要なところだ。
高層ビルの場合、エレベーターはかなりの速度で走っている。既に客を乗せて走っているエレベーターが他の客を乗せるために停止すると、減速→停止→再加速というステップを踏むことになるので、大きな時間のロスとなる。だから、新たに到着した客を迎えに行くのは、(a) 近くにいて、(b)現在の速度が遅い エレベーターが担当するのがよいと言うことになる。
このアルゴリズムを実装するとどうなるだろう。簡単に言えば、既にトップスピードで動いているエレベーターは、できる限り途中の客を無視しようとする。他に適切なエレベーターがいれば、新たな客はそれに任せて、自分自身はなるべくトップスピードを維持し、目的階へ速く到着することを目指すのだ。
だから、エレベーターホールからそれぞれのエレベーターの現在位置がわかってしまうと、客は「あ、無視して通過された」と思ってしまう(まぁ実際そうなのだが)。もちろん他のエレベーターがフォローに来るのだが、一番速く来そうなエレベーターが自分を無視して行ってしまうのだから、これは怒る人もでてくるだろう。それが結果的に全体の待ち時間を減らすことになるとしても、お客さんに理解してもらうのは無理だ。
よって、効率のよいエレベーター運行のためには、それぞれのエレベーターの現在位置を客から隠すことが必要になるのだ。
ここら辺の話は、高橋先生の本にたくさん載っている。興味があれば是非。
ジャンルとしては、OR(オペレーションズリサーチ)の、交通工学とかの部分かな?
追記
なお、「エレベーターの運行プログラム」は、エレベーターの性能を決める上で非常に重要な部分で、したがって企業秘密である部分が多いそうです。
そのため、この記事は裏づけのあるものではないことをご承知ください。
執筆: この記事は福田圭祐さんのブログ『本当は怖い情報科学』からご寄稿いただきました。
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