第三者の視点で見た官邸前反原発デモ

8月17日金曜日、18時から20時の間で行われた首都圏反原発連合主催のデモへ取材に行ってきた。主催者側が発表した人数だと20万人を超える規模が毎週集まるとHP上に書かれている。場所は首相官邸前。同時に『ニコニコ生放送』も行った(8月24日までタイムシフトあり)。

筆者はデモの存在を知っていたがあまり関心はなかった。どうせ左翼だか右翼だかが暴れまわってるんだろう？　という冷ややかな目で見ていたからだ。そういう偏見の目で私はデモに向かったのだが、実際はかなり違っていた。いわゆるジャーナリストとしての目線ではなく、一般的な目線で見たデモの風景及び、参加者の生の声を書き記したいと思う。

筆者が今回デモを見学するにあたっての知識は、20万人が集まるらしい、首相官邸前で行われる、というたった二つの予備知識だけ。

早速国会議事堂前駅に着いて驚いたのが、警察官が改札口や通路でプラカードを持って立っていたことだった。そのまま順路のとおり進んでいくと首相官邸が見える出口へと続く。階段をのぼると騒がしい音が……。

ドンドンドンと太鼓が鳴り響くのと同時にお経が聞こえる。なんとお坊さんまでもがデモ参加していた。念仏をずっと唱えている。道路がデモ参加者側と通行者側で区切られており、話こそできなかったが、「自分が勝手に決め付けていたイメージとは違うのでは？」と、ここで思った。

決め付けていた自分が少し情けないような、モヤモヤした気持ちで歩きだし、周りをよく観察しながら駅周辺や議事堂付近を散策。一通り見て回ってわかったのだが、半分くらいがお年寄りの方だった。なぜ原発反対派なのか聞いてみたところ、「自分の息子や孫の為にどうしても原発を止めたい」という言葉が一番多かった。実際に主催が叫ぶシュプレヒコール（デモや集会などで、参加者らが訴えやスローガンを繰り返し合唱すること）の「再稼動反対!!」や「子供を守れ!!」の声に賛同するものは多かったが、「総理はやめろ!!」、「田中はやめろ!!」という個人を叩く内容に賛同する声は小さかった。

各自思いを綴ったボードをかかげる人や、白い風船を配っている人、持っている人が見受けられた。白い風船は何を訴えているのか理由がわからなかったため、配っている人に何の目的で配っているのか聞いてみた。ベルギーのブリュッセルで30万人が白い風船を持ってデモをした“純白の行進”に触発され、反原発とは全く関係はないが、同じ白い風船をデモの象徴になればとの思いで配っているらしい。配っていたのはなんと“新党日本”。田中康夫議員本人がデモに参加し、6月から配り始めたそうだ。

18時過ぎごろにはあたりが暗くなり始め、まるで祭りかと勘違いするぐらいデモが活発化。「再稼動反対」「田中はやめろ」という音頭が先ほどより一層こだまする。この時間になると仕事終わりのサラリーマンや、運営スタッフも増え始め、道を進むのが困難なくらいに人があふれ出した。

運営のシュプレヒコールとは別に、横断幕を作りメガホンで叫びながら行進する人、ビール片手にドンチャン騒ぎする人、チェ・ゲバラが描かれた旗を掲げ革命の時がきたと民衆を煽る人など、いわゆる関わりたくないような人も増え始めたがこれらはごく一部。左翼や右翼の過激派と思われる人間は少なく、その中でも激しく盛り上がっているのは30、40代が多いという印象が強く残った。若い人やお年寄りの方の多くは、じっと国会議事堂や、警察官や、首相官邸前を見つめる人達。静かな参加者は「もう十分伝わっただろう、早く福島や稼動している原発をなんとかしてほしい」と、声を出さずとも感じる思いを目で伝えていた。

参加者の声と運営の声

多くの人に声を聞いてみたがどの年代もやはり「次の世代を守りたい」「再稼動をして事故が起きたらどうするの？　福島は復興していない」という声が非常に多かった。

中でも驚いたのが外国人の方がデモに参加していたこと。運よくお話を聞くことができた。この方はニュージーランド人で日本に来て18年。そこらの日本人より原発問題に意識が高く、去年の4月から日本人ではないけれども、不安を感じ継続的にデモ参加されているそうだ。「日本人の危機感は低いと思いますか？」と、聞いてみたところ、「そうでもない。人数が毎週増え続けてるのは目に見えてわかるし、普通の人も参加し、輪は広がっている」と、コメントしてくれた。

一方で運営側はデモを遂行するのが大変な模様。運営の方によると、この時期はとても暑いが自販機やコンビニはデモ地帯では見つけづらく、水分が欲しいのに中々補給できずに体調を悪くしたり、倒れたりする人もいるそうで、水を配って歩いたり、座れる場所へ案内をしたりもしているそうだ。水代や設備代の費用ははすべてカンパで行われており、デモ中にも寄付を呼びかけたりしているらしい。

スタッフは首都圏反原発連合だけでなく様々な反原発団体が協賛し、運営に当たっている模様。スタッフの数は日によってまちまちで、この日は30人程度とのこと。この人数では万単位のデモ参加者をまとめきるのは当然難しい。収集がつかない事態、トラブルなども非常に多いと聞く。風船のヒモが首に巻きつき喧嘩になったり、デモ参加者と警察官との衝突などは日常茶飯事で、その対応に追われているようだ。すべてボランティアのスタッフでまかなわれており、随時その場でも募集している。

最後に

筆者は原発反対派でもないし、賛成派でもない。いわゆる中立派だ。本当に安全ならば電力事情を考えると必要だと思うし、危ないなら動かさないほうがいいと思う派だ。3.11の事故があり、迅速な対応や正確な判断があったのかという情報が国民に届いてなかったし、今でも誰が言った事が本当なのか分からないという不安がデモという形になり、非常に膨大な数が押し寄せこのような事態を招いている。「野田総理がダメだ」「民主党がダメだ」というのではなく、そもそも国家自体が信じられないという国民の疑問や不満が爆発寸前なのである。デモの一番の声は「再稼動する前に福島をなんとかしろ」というものばかりだ。与党だの野党ではなく、政治家全体が筋を通してこの件にあたらないと、暴動が起きるのは時間の問題ではないのか？　と肌で感じた。

※【生中継】官邸前反原発デモへ突撃取材!!8/17日国会議事堂前駅から
http://live.nicovideo.jp/watch/lv104474603?ref=ser&zroute=search&track=&date=&keyword=%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88%E9%80%9A%E4%BF%A1&filter=+%3Aclosed%3A[リンク]