【シゴトを知ろう】漁師 ~番外編~

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【シゴトを知ろう】漁師 ~番外編~

晩夏から翌春まではノリ養殖、そして夏場は魚を捕るという流れで一年を通じて漁業を営む、漁師の相澤太さん。海の上で働く漁師さんの日常生活や、休日、プライベート面を中心に、番外編としてご紹介します。

凪の日は毎日海に出て、しけたら休み。自然に左右される仕事

―― 漁師として働いてみて、驚いたことや意外だったことはありますか?
祖父も父もノリ漁師だったので漁師の仕事自体はよく知っていました。実際に自分が船に乗ってみて改めて、この仕事は本当に「海の状態に左右される仕事」なんだなと思い知らされました。自然が相手なのでコントロールが利かないですし、自然には絶対に勝てません。特に東日本大震災では、この事実をまざまざと思い知らされました。
ノリ養殖は、育てて収穫するという一年のサイクルがあり、どちらかといえば農業に近いのかもしれません。でも夏場に行う定置網魚の仕事は、そのときにいる魚を捕るしかないため、漁獲量はその時々の海の状態に大きく左右されます。安定した収入が見込めない時期もあります。

―― 漁師・漁業関係者ならではの「あるある」はなんですか?
どこにいても海が恋しくなることでしょうね。あと街中にいるときも、つい風の方向を読んでしまいます。目をつぶっていても風を読むことで、だいたいの方角がわかります。
プライベートではよく山にも遊びに行くのですが、それも突き詰めれば海の状態を確かめに行くのが目的のようなもの。山と海は切っても切れない関係にあり、海に注ぐ河川の上流の山間部が荒れていると、海中のプランクトン量が減り結果的には海がだめになってしまうんです。良質な漁場を保つには、山や森が豊かでないといけないのです。
―― 決まった休日や長期の休みは取れるのですか?
海が凪いでいる日は欠かさず漁に出ます。反対に悪天候の日は欠航で休みになり、ずっとしけが続けば思いがけず長い休みになることもあります。自然相手の仕事ですので、前もって休みの予定が見えないのは仕方がないですね。
ちなみにノリの収穫時期は育成状況によって「明日は収穫する分がまだ育ってないから、休み」と決めることができ、ある程度のスケジュールを立てることができます。

29歳でビジネスパーソンとしてデビュー

―― 漁師という職業に就いてから、意識して勉強していることはありますか?
私は「奉献乾海苔品評会」において23歳の時に準優賞、28歳の時に優賞という栄誉をいただきました。その流れでわりと若いうちから漁業関係のセミナー等に呼ばれて話をさせていただく機会がありました。
あるパネルディスカッションに参加した際、ノリ問屋の方が「これからは中国から安いノリがどんどん入ってくるから、味や品質にこだわっていると国産ノリは生き残れない」と述べておられ、とても悔しい思いをしました。
そこで一念発起し、これまでの問屋中心の販売ルートを脱却するべく奔走しました。漁師自ら「道の駅」やデパートを回って営業しました。しかし、それまでの人生で一度も敬語を使ったことがなかったせいか、なかなかうまくいきませんでした。
これではいけないとビジネス書を買い込み、社会人や営業の基本マナーなどを徹底して勉強しました。これが29歳のときです。遅咲きで、ビジネスパーソンとしてデビューしました。しかし、あの時一通りのことを学んでおいて本当に良かったと思っています。初対面の相手に与える印象を良くするため、カラーセラピーまで勉強したんですよ!
でも一周回ってみて、自分らしさがまったくなくなっていることに気づいたんです。それからは基本のビジネスマナーは押さえつつも、自分なりの個性を生かした活動をしています。おかげさまで、今ではこうした考えや価値を応援してくださるたくさんの方と出会うことができました。

ノリ漁師にしかできないこだわりで、細胞レベルのおいしさを引き出す

―― おいしいノリを作るためのこだわりを教えてください。
ノリ本来が持つ細胞レベルの底力を、最大限に引き出すことです。口に入れて何噛み目でノリの旨みがピークに来るのか、白米と一緒に味わったときにどんなふうにコメの甘みを引き立てるのか、そこまで見極められるのは生産者である私たちノリ漁師にしかできないことだと自負しています。
ノリの表情を読み解き、天候や海の状態と対話しながら丹精込めて育てたノリですので、小さいお子さんからお年寄りまで、皆に安心して食べていただきたいと思っています。消費者の方においしいと思っていただくことが、日本中のノリ漁師を元気付け、ひいては日本漁業の活性化につながっていくのだと信じています。

―― 今後の目標を教えてください。 
私は現在全国でワークショップを開催しておりますが、そこで取り上げる話題は「ノリのおいしさ」については5%くらい、残りの95%は「自然との共生の大切さ」や「食料自給率の問題」等、食や環境についてです。なぜなら、多くの専門家同様、私も10年後、20年後という近い未来に世界中が深刻な食糧不足に陥ると危惧しているからです。
食糧問題は私たちの最も身近な危機であり、それを子供たちにしっかり伝えていくのは大人の役目。次世代に豊かな食文化を継承していけるよう微力ながらお手伝いするべく、これからも漁業と同様に啓蒙活動にも全力で取り組んでいきます。

漁業の未来だけでなく、日本の食料自給率や自然環境においても強い問題意識を持ち、積極的に行動を起こしている相澤さん。そのリーダーシップに、漁業関係者をはじめ大きな期待が寄せられています。自然と関わる仕事の一つとして、漁師という選択肢があることを高校生の皆さんに知っていただければと思います。
 
 
【profile】アイザワ水産 代表 相澤太


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