「ベネッセアートサイト直島は“過度な都市化”への抵抗」福武氏が語るアートと地方活性の未来

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芸術・文化に対するパトロンとしての知られざる個人的な貢献が顕著な方々を讃えるために創設された「モンブラン 国際文化賞 アート・パトロネージ・アワード」。本年度は、ベネッセアートサイト直島を手掛ける福武總一郎(そういちろう)氏(ベネッセホールディングス取締役会長)が受賞。30日、東京国立博物館 法隆寺宝物館にて受賞イベントが行われました。

「モンブラン 国際文化賞 アート・パトロネージ・アワード」は、あらゆる芸術の分野において、若い才能の開花に尽力支援されている人物に対し、その栄誉を称えて贈られる賞。1992年の設立後、1年に1度世界各国よりそれぞれ1名を選出しています。

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福武氏は、瀬戸内国際芸術祭のプロデュースやベネッセアートサイト直島が「地方をアートで活性」させたと評価され、今回選出されました。草間彌生さん作の大きなカボチャのオブジェや、大竹伸朗さんが手がけた銭湯など島まるごとがアートスポットになっている直島は、大人なら一度は旅行で訪れたい場所。

ベネッセアートサイト直島は「過度な都市化」への抵抗

世界に13本しかない特製のモンブラン社「パトロン」シリーズ万年筆と、金で出来た表彰状を受け取り、笑顔で挨拶。「今日に至るまで協力してくださった芸術家の皆様、ここまで私のわがままを許してくれた、会社、社員の皆さんに感謝です。ベネッセの皆さんの稼ぎで成り立っているんですから」と、時折冗談めかすシーンも。

ベネッセアートサイト直島を建設したきっかけは「過度な都市化に対するレジスタンス」とも述べており、「この国を作ったのも東京だし、この国を壊すのも東京」と話し、産業廃棄物で荒廃していた瀬戸内海の美しい自然を取り戻す為に尽力していた事も伺えます。

安藤忠雄氏「最初は無理だと思った」

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受賞式には福武氏と「ベネッセハウス」の設計をはじめ、公私共に交流がある建築家安藤忠雄氏も登場。「25年前一緒に直島に行って“ここを世界一の芸術の島にする”と言われた時には無理だろうと思いました。でも、今では世界中の人が直島での作品発表を望んでいる。これは、福武さんの情熱があったからこそ出来た事。この気持ちは日本人全員が見習いたいものです」とお祝いコメントを述べました。

「文化」はすべてが「地方文化」なのである

再び壇上にのぼった福武さんは、ベネッセアートサイト直島のこれまでや、コンセプトについて説明。

自身が影響を受けたという木村尚三郎氏の著書『「耕す文化」の時代』からは、「自然こそが最大の教育者なのである」「文化はすべてが地方文化なのであって、中央文化などというものは存在しない」「かけがえのない大自然に囲まれながら、文明ともつながって生きられる。これはある意味最高の贅沢である」と言った言葉を引用。

これらの考え方は、まさにアート作品やイベントを通じて地方を活性させようという福武が挑んできた取り組みであり、氏のライフワークであるとも言えます。

年を取れば取るほど幸せな場所を作りたい

ベネッセアートサイト直島が今後目指す方向は「食料、エネルギーの自給自足可能な幸せのコミュニティ作り」。その中でも特に「お年寄りの笑顔を作りたい」と福武さんは話しており、直島に住むお年寄りが集まって運営する食堂など、様々なボランティア活動に積極的。

「人生の達人は必ず幸せで無いと」と話し、「年を取れば取るほど幸せな地上の楽園を作りたい。あらゆる宗教はあの世に行ってから幸せになりますが、それよりも今が幸せで無いと意味が無い」と自身の考えを話しました。

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最後には、「瀬戸内トリエンナーレ2013」の紹介も。瀬戸内海のひとつひとつに関わり、再び「海の保護」を掲げて出発する本イベントは、春・夏・秋の3つの季節にまたがって開催され、日本の四季の移り変わりと共に、アートを満喫出来る試みとなっています。

アートをきっかけに地方の活性化、そしてお年寄り達の笑顔を作りたいという福武氏の展望はこれからも私達に新鮮な驚きと感動を与えてくれそうです。

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この写真は、当日受賞式会場となった東京国立博物館 法隆寺宝物館。ブルーにライトアップされたとても美しくて幻想的な姿に感動……。会場内には、大宮エリーさんが手がけたモニュメントなどが飾られていましたが、アートに触れる事は「心の栄養」。最近、美術館に行ってないなぁ、絵を見てないなぁ、という人は次のお休みにぜひ出かけてみてください。時には、どんな料理よりも睡眠よりも、元気がもらえますよ。

ベネッセアートサイト直島
http://www.benesse-artsite.jp/

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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