<ライブレポート>藤井フミヤが紡ぎ出す2時間の物語 西本智実との3年ぶりのステージで、時空を超えた愛を歌う

access_time create folderエンタメ
<ライブレポート>藤井フミヤが紡ぎ出す2時間の物語 西本智実との3年ぶりのステージで、時空を超えた愛を歌う

 公園の豊かな緑に抱かれたホールへと続く道から、物語は始まっていた。藤井フミヤの今年初のツアー「PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2020 藤井フミヤ meets 西本智実」が幕を開けたのは、千葉県松戸市の「森のホール21」。遠方から駆けつけたファンも多く、会場が近づくにつれて膨らんだ期待が、場内を包み込んだ。前奏曲にアレンジされた「Another Orion」が西本智実の指揮棒から流れ出すと、観客の胸の高鳴りも頂点に達した。

その他ライブ画像

 黒一色のタキシード風の衣装をまとった藤井は、そんな空気を全身で受け止め、静かにマイクの前に立った。表情は少し硬い。ビルボードクラシックスでのツアーも4回目を数える藤井をしても、西本智実との共演は特別なステージだ。「やや緊張しています」。冒頭の3曲を歌え終えると、藤井は率直にそう口にし、会場の空気を解きほぐした。

 「ショートムービーを見るような気持ちで聴いてほしい」と語りかけた藤井の狙い通り、すぐに伸びを取り戻した藤井の声に弦の音が柔らかく寄り添い、ドラマチックなストーリーが展開された。3年ぶりにリリースしたアルバム『フジイロック』収録の新曲「フラワー」から、“鉄板”の「TRUE LOVE」、令和も平和な時代でありますように、との願いを込め選曲したという「鎮守の里」まで。それぞれのナンバーを丁寧に歌い込む姿に吸い込まれるかのように、観客の表情が和らぎ、楽曲の世界に入り込んでいく。西本が芸術監督を務めるイルミナートフィルハーモニーオーケストラとの息もぴったりだ。

 圧巻は最終曲の「夜明けのブレス」。曲の途中、西本がオケの音を最小限に絞ると、藤井はマイクを離れ、生の声で歌い出した。情感あふれる肉声に涙を抑えきれなくなった客席は、最後の音が消えた瞬間、1拍の静寂を置いて、うねるような拍手で熱演を讃えた。

 ドラマはしかし、まだエピローグを迎えてはいなかった。アンコールに応え、再びステージに現れた楽団が奏で出したのは、クラシックの王道、歌劇「トゥーランドット」の劇中曲「誰も寝てはならぬ」だ。プッチーニの名曲をアレンジしたメロディーに藤井の詞を乗せ、現代のアリアを誕生させた。トゥーランドット姫とカラフのストーリーを下地に、壮大な愛を歌い上げた藤井に、満席の客がスタンディングオベーションを惜しみなく送り続けた。

 “せっかくだから、オペラのアリアをアレンジしてみては”と藤井に勧めたという西本との軽妙なやり取りも、アンコールでのサプライズとなった。クラシックとポップス、2つの世界でトップを走り続ける2人が編んだ美しい物語の余韻は、森から街へと帰る観客たちを包み込み、響き続けたに違いない。
 
 ツアーは今後、東京(2/5、2/13、3/3、3/4)、大阪(2/9)、西宮(3/8)と、森を出て都会へと繰り出す。それぞれの地で、どんな物語が紡ぎ出されるか、今から楽しみだ。Text by 上杉恵子

◎公演情報
【billboard classics PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2020 藤井フミヤ meets 西本智実】
2020年1月25日(土)千葉・松戸・森のホール21大ホール ※終了
2020年2月5日(水)東京・東京芸術劇場 コンサートホール ※残席僅少 
2020年2月9日(日)大阪・フェスティバルホール ※完売
2020年2月13 日(木)東京・Bunkamuraオーチャードホール ※完売
2020年3月3日(火)東京・東京芸術劇場 コンサートホール ※残席僅少
2020年3月4日(水)東京・東京芸術劇場 コンサートホール ※完売
2020年3月8日(日)兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール ※完売

関連記事リンク(外部サイト)

スタレビ/藤井フミヤ/TRFらが出演【LIVE SDD 2020】開催決定
藤井フミヤの全国ツアー【十音楽団】開幕、新曲や「TRUE LOVE」など歌い綴る
安全地帯、初の阪神甲子園球場ライブ開催 “玉置浩二、奇跡の甲子園グランドラン”<ライブレポート>

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. <ライブレポート>藤井フミヤが紡ぎ出す2時間の物語 西本智実との3年ぶりのステージで、時空を超えた愛を歌う
access_time create folderエンタメ

Billboard JAPAN

国内唯一の総合シングルチャート“JAPAN HOT100”を発表。国内外のオリジナルエンタメニュースやアーティストインタビューをお届け中!

ウェブサイト: http://www.billboard-japan.com/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。