殺人を犯した友人が「かくまってくれ!」 手を差し伸べると同時に成立する“犯人蔵匿罪” いったいどんな刑を受けるのか?

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殺人を犯した友人が「かくまってくれ!」 手を差し伸べると同時に成立する“犯人蔵匿罪” いったいどんな刑を受けるのか?

平成31年1月21日午後6時ごろ、歌舞伎町のカラオケ店で韓国籍の李興宗さん(65歳)が胸や腕を拳銃で撃たれ殺害されるという事件が起きました。
犯人は犯行後、実弾入りの拳銃を持ったまま逃走しました。
その日のうちに犯行現場にはマスコミが押し寄せ、事件は全国に報道されました。
逃走した犯人は阿部勝という男です。同月24日には阿部に対して全国指名手配がかけられ、翌25日には顔写真もメディアに公開されました。
 
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上野正平(仮名、裁判当時49歳)は事件発生直後に知人から電話でこの事件のことを知らされました。
彼は阿部のことをよく知っていました。一時的とはいえ同居していたこともあります。
テレビに「逃走中の容疑者」として映っていた人物は、間違いなく彼の知っている阿部勝本人でした。
 
彼と阿部が知り合ったのは刑務所の中でした。同じ時期に2人は服役をしていたのです。
やがて出所した2人でしたが、出所後も関係は継続していました。平成29年には先述した通り同居もしています。
この同居はあまりうまくいかなかったようです。
「あの時は阿部にかなり迷惑をかけられました。立て替えた携帯代を返してくれなかったりとか…」
そんな事情もあり別々に生活するようになりました。その後はあまり連絡を取っていなかったようです。
 
阿部が事件を起こしてから約5ヶ月後、令和元年6月27日のことです。突然、逃走を続けていた阿部が上野の家にやって来ました。
「もう疲れた…。休ませてくれ」
そう告げる阿部は以前の阿部とはまるで別人でした。上野は裁判でその時の心情を涙ながらに、
「あんまり弱い部分を見せるような人じゃないんですよ。なのにやつれちゃってて…」
と話していました。
「匿ってくれ」
と頼まれた彼は当然困惑しました。「犯人蔵匿罪」という罪名は知らなくても指名手配中の犯人を匿えば犯罪になるとわかっていました。また、拳銃を持って逃走している殺人犯を匿うということが社会にどれだけの脅威を与える行為なのかも十分理解していました。断らなくてはいけない、そう思っていました。
しかし、考えと裏腹に彼の口から出たのは承諾の言葉でした。
「あんなにくたびれた顔で『疲れた』って言ってて…。休んでほしいって考えて、いや、考えたというかつい口から出てしまってました」
こうして彼は上野を自宅に泊めました。犯人蔵匿罪の成立です。
 
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2,3日で阿部が出ていくと彼は思っていたようでしたが阿部はなかなか彼の家を出ていこうとはしませんでした。それは彼にとっては正直なところとても迷惑だったようです。
「出ていってほしい」
と何度か告げたこともありましたがあまり強くは言えませんでした。阿部にはもう行く所などないことがわかっていたからです。
「もう出頭したらどうだろう?」
そう促したこともありましたが、これも強くは言えませんでした。
「阿部ももう57歳なんですよ。服役したらもうこっちに生きて帰ってこれないと思って…言えませんでした」
こうしてズルズルと時間は過ぎていきました。
2人の生活は同年7月11日に終わりを迎えます。阿部が乗っていた車から足がつき警察に発見され逮捕されたのです。
同日、阿部を匿って逃走を助けたとして上野も逮捕されました。
 
阿部の犯行はもちろん、上野の犯行も許されるものではありません。
ただ自分が同じ境遇に置かれたらどうするのか、と考えてしまいます。
もしも友人や家族などが大きな罪を犯し、その人が頼ってきたとしたら。
目の前にいるやつれて疲れきった表情の、他に誰も味方がいなくなった大切な人を突き放せるでしょうか? それは果たして正しいことなのでしょうか?
犯人蔵匿罪の法定刑は「2年以下の懲役または20万円以下の罰金」です。上野の求刑は懲役10か月でした。
そして犯人蔵匿罪には、親族が犯人または逃走者の利益のためにこの罪を犯した時はその刑を免除することができる旨の特例も規定されています。(取材・文◎鈴木孔明)
 
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