【ここは法廷だゼ!】電車内でポロリして女性に見せつけた被告人の言い訳は「生活の不安」?
定期的に裁判所に通っている傍聴人には、それぞれ傍聴する裁判に何らかの傾向がみられる事が多い。たとえば、女被告人の覚せい剤事件を重点的に追う人、ワイセツ系の法廷にいつもいる人、有名事件をよく見ている人、短時間で法廷をたくさん移動して、とにかく数を傍聴する人、などなどだ。ある日、筆者の友人であり、交通ジャーナリストの肩書きを持つ某氏から、裁判所の廊下で耳打ちされた。
「女被告人かもしれない“公然わいせつ”の新件があるよ!」
某氏はその肩書きからも分かる通り、交通事件の専門家であるが、ここ数年、公然わいせつも追いかけているのである。被告人名をネットで検索し、女性かもしれない、と思う情報にたどり着いたようだ。名前を見たところ、確かに男性っぽい読み方も女性っぽい読み方もできる。余談だが「和美」という名前に期待に胸を膨らませて法廷に入ると大抵が男性被告人である。某氏は「もう“和美”には騙されない」と語気強く述べていた。問題の被告人は「和美」ではない珍しい名前だ。
そもそも被告人が女性であればそれだけで傍聴人からの注目度は上がる。また、公然わいせつ罪はその多くが、男性が自身の下半身を見ず知らずの女性に見せつけた……というパターンであり、筆者はこれまで女性被告人の公然わいせつ罪裁判に遭遇した事はなかった。果たして本当に女性なのか、女性だとしたら何をやって公然わいせつに問われたのか……思わず筆者まで気になってしまい、当日はその裁判を傍聴する事に。法廷に入ると、既に某氏は最前列の席に座って開廷を待っていた。
そうして時間になり、奥の扉から現れた被告人は……背の高い、どこからどうみても男性だった。某氏が私の顔を見て、照れと残念の入り交じった寂しそうな笑顔を向ける。少し気の毒になり、最後まで傍聴する事に決めた。
その男性被告人(48)は5月のある日、JR東中野から中野駅まで、総武線の車内でおもむろに下半身を露出し、24歳の女性に示したとして起訴されていた。罪状認否であっさり罪を認めたが、ここまで大胆なことをやっていながら、なんと初犯である。人間、いつどうなるか分からないとつくづく思う。
「中野行きの電車に乗っていたら正面に女性が乗っていて、自分好みだったので性欲が高まり興奮を覚えた。両手で支えるように局部を持ちながら見せた。中野で降りようとしたら女性に手をつかまれた」
と調書にはあるが、たとえ好みだとしても見ず知らずの女性にいきなり局部を見せたくなる気持ちは、全く分からない。被告人は犯行に至った理由として「精神的な不安定からだった」と、よく裁判で耳にする言い訳を持ち出した。
「職と住居を持っていない、その日の生活の不安、将来の不安が重なった……。一時的に身を置く場所を紹介してもらい、一生懸命働きたい」
これに終始してソツなく裁判は終わり、罰金刑が言い渡された。両親は高齢だが健在で、調書によれば母親は「毎日、駅で会って2000円~3000円を渡していた」。その金でその日暮らしをしていたようだ。しかし母親は「夫や長男が怒っているので今後は扶養できない」と絶縁とも取れるようなことを述べている。そもそも事件前、実家が近くにありながら同居していなかったことも気にかかる。また不安なことが起こった時、被告人はどうするのだろう。ふたたび電車で……というのはもうやめてもらいたいものだ。
画像引用元:flickr from YAHOO
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傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。
ウェブサイト: http://tk84.cocolog-nifty.com/
TwitterID: tk84yuki
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