【インタビュー】さつき が てんこもりと行くアキバ散策

6月19日、秋葉原にて“さつき が てんこもり”さん（以下、さつきさん）とお会いした。聞けばヒマがあればアキバへ通っているとのこと。さつきさんと言えば『ニコニコ生放送』の公式放送『ニコラジ』で木曜アシスタントを務め、何より今月27日にはニューアルバム『人畜無害 さつきがてんこもり feat.初音ミク』を発売するなど精力的に活動中だ。果たしてどんな人物なのか。あいにくの雨の中、アキバを散策しつつ人となりを伺ってみた。

ドスパラ方面に向かいつつPCの話を聞く

－最近、何かPCパーツを買いました？
昨日は『ファンタシースターオンライン2』の為にPCファンを買いました、マイク入力で明らかにノイズが増えるので、作家としてやってはいけない行為なんでしょうがネトゲが本業なのでやむを得ません。水冷など別の手段もありますが、楽チンなのが良いです。同じ様な理由でギターもやめました、1週間くらい放置したらネックが伸びるわ錆びるわ良いことがなかったので。

－ネトゲ廃人なんですか？
当時は学校に行かないで、ずっとやってました。8年くらい前ですかね、中学校3年くらいからパソコンを買い、そこからひきこもりがちになりまして。（ネットでの活動は）古くはネトラジもやっていたので、そこから『ピアキャス』とか『スティッカム』とか大概やってますし、他も含めて多岐に渡ってました。放送内容は雑談と、今と変わらないですね。

－創作・音楽の活動などは？
Flashの制作、絵を描いたりとか、音楽に関しては元々エレクトーンをやっていたんですが、『マリオペイント』を相当やり込んでまして。音楽の原点はエレクトーンというよりも『マリオペイント』でできました。パソコンを買ってからフリーのシーケンサーに触って、そこでやっと「ああ、これはシーケンサーというんだ」と知ったくらいですし。ただ、「音楽制作！」と身構えずにフラットな気持ちで始められたのは良かったなぁと思っています。

アキバ名物『サンボ』前で昔話なんかを

－（店内を伺いつつ）色々な伝説を持つサンボさんですね
10年前のアキバで座って食べられるお店は少なかったのでサンボさんは重宝しました。それと、ここ以上に頻繁にお世話になったのが萬里さんで、昔はオフ会で毎日のようにアキバにいて、でもお金がなかったので安くてボリュームもある萬里さんは重宝しました。

－オフ会に行っていたんですか？
頻繁に行っていました。帰るのが面倒でネカフェを使って4泊5日でアキバで遊んでて。当時はアキバにいるのが楽しくて楽しくて、お金がないながらゲーセンでランカーになるくらい入り浸っていたり。音楽活動は「さつき」名義だったんですけど、元々はゲーム関係では「てんこもり」で活動していたんですね。今の名前（さつき が てんこもり）は、どちらのカテゴリの人でも名前が通じるように合体させたのが由来ですね。『mixi』を始めた時は100対1の割合で「てんこもり」の方で呼ばれていました。

－公式な略称はあるんですか？
なんでもいいです。「さつてん」でも「さてんもり」でも「が」でも好きなように。

－さつきさんは、この通りに思い入れがありそうですね
UDXや最近のチャラいお店ができていく一方で、サンボの通りってドブ臭いというか汗臭いというかイカ臭いしっていう、サブカル文化がファッション化していく中で昔ながらのパワーが残っていて凄く自分にとってアキバっぽいんですよ。良くないですか？

－俺も好きです。ところでいま、イカ臭いって言いませんでした？
言ってません。

移動をしつつアルバムの話なんかを

－どんな感じでトラックリストを作ったんでしょうか
自分の中には設定があるんですが、何となく妄想してもらえれば。例えばですが、5曲目と6曲目にある『ネトゲ廃人シュプレヒコール』・『夏休みYummy』、これって珍しく自分語りの曲なんですよね、とか。ただ、バカなCDなんで、あんま難しく考えないでサラッと聞いてくれればいいです。

－今回の表題『人畜無害』は色々なカテゴリをミックスして作られていますが　そういった音楽性の素養は？
バカにする力ですね、ネット特有の煽（あお）り文化が根底にあるので。

－さつきさんには『オリジナリティ』という曲もありますよね
『オリジナリティ』はリスペクトだったんですが、今回（『人畜無害』）は完全にディス。タカ派です。

－『オリジナリティー』はアルバムに入れないんですか
皆様が2秒考えたら分かる理由で入れられませんでした。

－各カテゴリをデフォルメしたような？
良いこといいますねー、五臓六腑に染み渡ります。

－思ってないですよね？
すいません。

お寿司をつまんで人となりを問い詰めてみる

－『すしざんまい』好きなんですか？
音楽にも多大な影響を受けてますよ！　クラブの帰りには必ず寄りますし、まずは炙りエンガワを食べてみて下さい。マジでビビりますから！

－うお、ホントだうめぇ！ ところでさつきさんって、どんな風に思われたいんですか。
嘉門達夫さんや、宮崎トムさんのネタ曲とか、『ニコラジ』で共演させて頂いているやまだひさしさんともお話していますが、深夜ラジオっぽいネタが好きなんですよ。でも、そんな中で「音だけはガチだな」と思ってもらえたらかっこいいですよね。

－MADなんかの話を聞かせて下さい、影響を受けた方はいますか？
『ニコ動』初期に自分もあげてますけど、好きですね。影響を受けたって意味では『2ちゃんねる』やFlash全盛期から活動されていた、ささくれさんやcrankyさんとか、『アストロ』でコラボさせて頂いたポエ山さんとか。

ーと言いつつ学生時代からネットで仕事をしていたとか
地方ローカルでテレビやラジオのCMソングを作っていました。あとはソーシャルネットワークサービスのバブル期である意味特需だったので、ウェブCMや動画コンテンツ等です。単価は安いですけど、外で飲み食いするとかカラオケ行くぞ！　とか服が欲しい！　とかもなく、家でゲームしているだけだったんで困りませんでした。だんだん学校へ行かずに仕事とゲームばっかりしてましたね。

－印象に残っているブラックな仕事とかありますか？
以前に小さな芸能プロダクションからのオファーを受けたら、担当の子がアダルトな方向に行ってしまい事務所と大モメ。僕の仕事も踏み倒されました。

－『ニコ動』のアーティストさんってモテるじゃないんですか？
そうなんですよ、あいつら死ねばいいのに。

－では最後にファンの方にメッセージを一つ
どうしましょう、考えましょうみんなで。

－自分で考えてください
売れないと思うんですけど干さないで下さい

－それ事務所に向けてのメッセージです
アスキーさんとのインタビューでは『プリティーリズム』の話を半分以上していたんですけど、本当に申し訳ございませんでした。

－うちらに言われても困ります
じゃあ、当社比較で前作『ニコ生モラルハザード』よりもカラス避けとしての性能が120％アップしてます。さらにDVDもついていますので、玄関と勝手口に付けてください。今後も粉骨砕身、切磋琢磨していきますので、宜しくお願いいたします！

－思ってないですよね？
すいません。

さつきさんは、一筋縄ではいかない人だった。ただ、ここ最近の「ネットのメジャー感」に戸惑いを持つ層（筆者もその一人）にとっては、その会話の端々から発せられるネガティブさを拠り所にした発言・行動が心地よいし、ついつい共感してしまう。そう、さつきさんは一筋縄ではいかないけれど、魅力的な人なのだ。今回のインタビューでは全然掘り起こすことはできず、さつきさんにはまだまだナゾが多い。それを知るべく、その人となりのヒントが満載のアルバム『人畜無害 さつきがてんこもり feat.初音ミク』を筆者も聞いてみたいと思う。

●さつき が てんこもり最新アルバム「人畜無害」CD情報