あなたは「旧耐震マンション」の建築時期を知っていますか?
マグニチュード8.0以上、あるいは震度7以上の大地震が日本のここかしこで起こっている。そして近い将来、南海トラフ巨大地震、首都直下地震が起こる可能性も大いにある。そんな中、マイホームの耐震性はとかく気になるもの。住宅購入検討者の約4人に3人が旧耐震マンションを選ばないようにしているという調査結果を受けて、マンションの旧耐震と新耐震についてあらためて掘り下げてみたい。
約4割が旧耐震マンションの建築時期を知らなかった
まず、建築基準法の改正によって、建物の耐震基準が厳しくなったのを境に、それ以より前の耐震基準を「旧耐震基準」、それ以後の耐震基準を「新耐震基準」と呼ぶことは、ご存じだろうか? 知っている人の中でも、いつを境に基準が厳しくなったのかという境目の時期まで、厳密な意味で分かる人はさほど多くないのではないだろうか?
リニュアル仲介株式会社がサービス利用者(住宅購入検討者)を対象に行った調査で、基準が厳しくなった時期を知っているかどうかを尋ねたところ、「はい」、つまり、知っていると回答したのは全体の58.3%。残りの41.7%は知らないという結果になった。約6割が旧耐震基準の建築確認申請時期を知っており、年代による違いはほとんどなかった(リニュアル仲介株式会社「マンションの耐震性に関するアンケート」(2019年8月22日~24日実施・リニュアル仲介「物件提案ロボ」利用者対象・回答者数501名・以下同)より転載)
では、「基準が厳しくなった時期」の正解はというと、答えは昭和56年(1981年)6月。この年の6月に建築基準法が大きく改正され、建物の耐震強度の最低基準が引き上げられたからだ。そのため、建築確認済証の日付が6月1日以降になっている建物は「新耐震基準」、それより前の建物は「旧耐震基準」と呼ばれることになった。つまり、建築確認済証の交付がこの年の6月1日より前か後かで、基準となっている耐震強度が異なることになるのだ。
ここで注意したいのが、境目となるのが「建築確認済証の交付時期」だということ。マンションは建築確認の申請を経て建築が始まるため、「うちのマンションは昭和57年(1982年)3月に完成しているから新耐震基準で建てられているはずだ」などと考えるのは早計で、昭和57年に完成していたとしても、建築確認済証の交付時期が昭和56年(1981年)6月よりも前だったマンションは決して少なくない。旧耐震か新耐震かを確かめるには、完成時期ではなく、建築確認済証の交付時期をチェックする必要があるのだ。
なお、耐震基準は、その10年前の昭和46年(1971年)5月にも強化されており、この時期よりも前のマンションは、さらに基準が緩かったことになる。
マイホーム購入検討者の4人に3人が旧耐震マンションを避けている
調査では、「マンションを購入すると仮定した場合、立地が良ければ、旧耐震基準のマンションでも構わないか、あるいは立地が良くても、旧耐震基準のマンションは避けるか」という質問で、旧耐震基準マンションの購入意向も尋ねているが、その質問に対しては、76.0%、つまり約4人に3人が「避ける」と回答。特に、若い世代と高齢の世代で、旧耐震マンションを避ける傾向が顕著に表れた。全体の76.0%が、「立地が良くても、旧耐震基準のマンションは避ける」と回答。20代、30代、60代以上では、8割以上が避けると答える結果になった(同「マンションの耐震性に関するアンケート」より転載)
ただし、ここで注意したいのは、旧耐震マンションだから耐震性能が新耐震マンションよりも劣っていると考えるのは、それこそ早計という点だ。それは、旧耐震基準の時期に建てられたマンションでも、新耐震基準を上回るような強度で建てられたマンションも存在するからだ。特に、ヴィンテージマンションと呼ばれる物件には、その傾向が強い。
また、旧耐震マンションの中には、大規模修繕時などに耐震補強を施されたことで、新耐震基準を満たしているものもある。耐震補強が行われるようなマンションは、管理組合がきちんと機能していて管理が充実している傾向があり、一概に旧耐震の時代に建てられたから悪い、と言い切れるものではなさそうだ。
つまり、新耐震か旧耐震かは、中古マンションを選ぶ際のひとつの目安にはなるが、同時にあくまでも目安にすぎないということ。最後は物件ごとに判断するのが賢明なようだ。
旧耐震基準マンションは、今あるマンション全体の約16%
では、今、日本にあるマンションのうち、どのくらいが旧耐震基準で建てられているのだろうか?
国土交通省が公表している分譲マンションストック戸数は、平成30年(2018年)末の時点で約654.7万戸。うち、旧耐震基準で建てられたマンションは約104万戸であることから、旧耐震基準のマンションの比率は約16%だ。平成25年(2013年)末時点では、分譲マンションストック約601万戸に対して、旧耐震基準のマンションは約106万戸であり、旧耐震基準マンションの比率は18%であったことから、旧耐震基準のマンションは、この5年間で数でも比率でも減っていることが分かる。平成30年(2018年)末時点のマンションストック総数は約654.7万戸であり、増加中。一方、旧耐震基準ストックは約104万戸で減少傾向だ(国土交通省「分譲マンションストック戸数」より転載)
6年後に旧耐震基準のマンションはなくなる?
国土交通省「住生活基本計画(全国計画)」(計画期間:平成28年度~平成37年度)では、計画策定時である平成25年(2013年)12月末時点の旧耐震住宅の比率を18%と示した上で、12年後の令和7年(2025年)にはこの旧耐震基準の住宅(一戸建て含む)をおおむね解消することを成果指標としていた。その達成のために、計画の目標を、「多数の区分所有者の合意形成という特有の難しさを抱える老朽化マンションの建替え・改修を促進し、耐震性等の安全性や質の向上を図る」と設定。「マンション耐震化マニュアル」を作成するなどして、建て替えと耐震改修の両輪で耐震化を促進している。
旧耐震基準ストックは、平成30年(2018年)末時点では約16%に減っているので、2013年末からの5年間でマイナス2%を達成できたということになる。問題は、残りの年数でこれがゼロになるのかどうかだ。東京都「マンション実態調査結果」(平成25年3月)では、旧耐震基準マンションのうち、耐震診断を実施していないマンションは82.9%。そして、耐震改修を実施したのは、5.9%とごくわずかだ。建て替えもそうだが、こうした耐震改修のスピードアップが課題となっているのは間違いないだろう。
この記事を読むと、これから中古マンションを買う人は、検討物件が旧耐震基準マンションか新耐震基準マンションかが気になることだろう。旧耐震基準マンションであれば、もともと十分な耐震性能を備えているか、もしくは耐震改修を施しているかどうかを確認するのが望ましい。
そして、すでに中古マンションを所有している人は、自分のマンションが旧耐震か新耐震かを確認してみよう。旧耐震基準マンションだった場合は、管理組合に積極的に参加することによって、耐震診断や耐震改修の提案をすることもできるだろう。耐震基準に対する意識の高まりが、より安全で安心なマンション生活につながることを期待したい。●参考
・「マンションの耐震性に関するアンケート」住宅購入意識調査(リニュアル仲介株式会社)
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