革新系フリゲRPG『ポルト・ガーディア』 魔王は勇者に任せて守るは港!そして、胡散臭い話に釣られてガッポリ大儲けの大破産じゃい!?

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昔々、魔王の脅威に晒されている西洋のとある国。
港は観光客と交易品に溢れていた。
しかし、そんな港を魔王の手下達が襲う!

あなた(フリスト)は、港のお守「防港人」として、観光客と交易品を魔物から守るという使命がある。送られてくる荷物を仕分けながら、襲い来る魔物達を倒し、港を守り切るのだ!

なに、元凶の魔王?
そんなの勇者に任せときゃいいんです。餅は餅屋だ!
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……というノリのプロローグと共に始まるのが、今回紹介する『ポルト・ガーディア』(作者:サカモトトマト氏)だ。2019年7月21日から8月24日に渡って開催された、第11回「WOLF RPGエディターコンテスト(通称ウディコン)」にて総合成績13位、熱中度部門8位、斬新さ部門3位、遊びやすさ部門7位の成績を残した作品でもある。

交易品を処理しながら、敵を迎え撃つRPG……?

あらすじの通り、プレイヤーは港を守る「防港人」となり、荷物の仕分けと魔物の迎撃に従事するというのが基本的な内容となる。
ジャンルとしてはロールプレイングゲーム(RPG)に属する。
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より具体的な流れを紹介すると、本編はステージクリア方式で進行。用意されたフィールド上に交易品という名の「ブロック」を積み上げ、同じ色同士を3つ揃えては消していく。積み上がったブロックがフィールド上部分にある赤いラインを超えるとゲームオーバー。そのままステージの最初からやり直しになるという仕組みだ。

……物申したい気持ちがエクスプロージョンしたかと思われる。
某有名格闘家の画像を貼りたい衝動にも駆られたかもしれない。

ええ、まさしく見ての通りでございますよ。
落ちモノパズルゲームです。
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それも、同じ色を縦、横に3つ以上揃えて消していく、この手のジャンルにおいて伝統的とも言えるルールを採用したものだ。

これをRPGだとか、書き手の目は節穴かとも言いたくなるかもしれない。
失敬な!断じてそんなことはないわ!
いや、でも最近視力落ちてきたけど。

……って、そんなことはどうでもいい。
話を戻す。確かにご覧の通り、本作は落ちモノ系パズルゲームだ。
どこをどう見てもRPGとは言えぬ見た目をしている。

しかし、遊び心地はRPGそのものなのだ。
それを象徴するのが各種ブロック。それぞれを消すことで、プレイヤーのステータスが強化されたり、アイテムやお金が手に入ると言った現象が起きる。さらにスコアが一定値に達すると、魔王の配下(魔物)との戦闘イベントが発生。
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それというのが、RPGお馴染みのコマンド選択式。パズルゲームのように連鎖を重ね、妨害ブロックを送り込んで相手を詰ませるものではない、正真正銘の戦闘なのだ。流れも速さのステータスに準じて行動する、これまたRPGの伝統的な方式。

そして、戦闘を勝ち抜けば経験値をゲット。
一定量に達するとレベルが上がり、プレイヤーが強くなる。
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だが、戦闘終了時の体力は全回復せず引き継がれる形に。なので、パズル側に戻ったら回復を行うブロックを消し、次に戦闘が発生した際に万全の態勢で挑めるよう、準備を重ねていく。それらを繰り返しつつ、画面右側の情報欄にある「進行度」が100%に達した時に現れる魔物のボスを撃退できれば、ステージクリアになる。

このようにやることは落ちモノパズルなのだが、それ自体がプレイヤーの強化・準備のパートに位置付けられていて、戦闘がコマンド選択方式で進行する。なのでRPG色強め……というか、ほとんどRPG。
さながら、パズル+RPGを体現した作品になっているのである。
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ちなみにステージ開始の度、プレイヤーのレベルは1から、アイテムは未取得で始まる仕組み。この辺はローグライクをモチーフとしている。

パズルとRPGが絶妙に融合した革新的なゲームデザイン

例によって、本作の魅力はこのパズルとRPGが合体したゲームデザインの革新性だ。
さらにプレイヤーのペースで遊べる”ユルさ”も大きな特色になっている。
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落ちモノパズルは、上から徐々に落下してくるブロックを着地前に適切な位置へ動かし、同じ色と揃えて消していくのが基本的なプレイスタイルだ。そして、難易度を上げるほど、ブロックの落下速度が増し、素早い判断と操作が要求されるようになる。

特に対人戦ではある種、大連鎖の応酬が繰り広げられやすい。昨今流行りの「eスポーツ」においても、やはりプロ選手の対戦はほとんどそんな傾向にある。

それらの特色などから、落ちモノパズルへの苦手意識を持つ人も少なくはない。ゆえに本作のパズル主体のシステムにおいても、「難しそう」、「素早い判断が求められるのだろうな」という先入観を持つだろう。

しかし、本作ではブロックの落下位置をプレイヤーが自由に決められる。そもそも、徐々に落下してこない。プレイヤーが落下の操作を行わない限り、フィールド上部に留まり続けるのだ。
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さらに操作を行った後は、その指定した場所へ瞬時に落とされる。落としている途中、方向キーで調整する必要もなく、「シュパッ」とその場へと着地するのである。いわゆる「ハードドロップ」だ。

そして極め付け、何秒以内にブロックを落とせという決まりもなし。すぐ落とすのも、じっくり長考してから落としてもお構いなしなのだ。だから連鎖を組みたい場合も、積まれたブロックの並びと消した後の動きを考える時間的な余裕が常にあるので、ちゃんと考えながら置いて行けば、5連鎖以上を決めるのも夢じゃない。

まさにこの手のジャンルに抵抗のあるプレイヤーでも気負わず楽しめる設計。それでいて、落ちモノパズルゲームのお約束に一石を投じる、大変意欲的な試みを施した仕上がりになっているのだ。
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実際にプレイしてみれば、その意外な遊びやすさと気軽さに驚くこと請け合い。また、どのように考えることで連鎖が実現するのかという、落ちモノパズルゲームを遊ぶ際のテクニックが学べるのも結構な見所。やり込めばやり込むほど、本作と消し方が共通する別の落ちモノパズルゲームを遊んだ時の光景が変わるのは、「少しでも上手くなりたい」「連鎖できるようになりたい」との願望を持つプレイヤーに、一種の感動を与えるだろう。
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さらに嬉しいことに本作は難易度選択機能も完備。より気軽に楽しみたいという欲求にも応えてくれる。逆もまた然り。特に上級者向けの「究極」は、本作特有のRPG要素と混じった唯一無二の緊張感を堪能できるので、腕に自信のあるプレイヤーほど、チャレンジしてみていただきたいところだ。
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全体のバランスも非常によい塩梅。パズルとRPG、どちらかが苦手では進めることすら無理というのもなく、最低限の連鎖と複数消しができる程度にテクニック、戦略があれば難なく乗り切れる難易度に落ち着いている。ステージ開始前に一部、サポートアイテムを持ち込める救済措置も用意されているので、上級者向けの難易度でない限りは苦戦する心配も皆無だ。
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また、ひたすら消すこと、戦うことに徹する訳でもないステージの構成(流れ)も秀逸。ブロックの1つ「緑色のブロック」を消す度に何かしらのイベントが起きては、様々な挑戦を促してくるので、退屈することなく進めていける。
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時には儲け話を振ってきたり、怪しい薬を売ろうとする人物も現れ、運が良ければ相応の対価が支払われる一方、運が悪いと窮地に追い込まれたり、想定外の弱体化を招いたりも。折角、途中まで順調に進んでいたのが、一時の判断ミスでひっくり返されてしまった時の絶望感たるや、「おのれ新規事業!」となること間違いなし。(※名指し)
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イベントの最中、現れるキャラクター達も個性的すぎる容姿をしているほか、台詞もいちいち面白いので、嫌でも印象に残るだろう。特に憎悪と破壊の店の主は色んな意味で必見だ。
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そして、新規事業の協力を仰いでくる人物には厳重注意である。
こいつだけは絶対に信用しちゃあかんで。(※振り回された人間は語る)

やり込み甲斐も抜群の傑作。だが、上手い話にご用心!?

合間に挟まれる戦闘もパズル側で手に入れた「アイテム」を活用して強敵に対抗するという、独特なバランスと作りが秀逸。比較的効果大きめの属性相関もあり、弱点を突けば一撃必殺もあり得るレベルの致命傷を与えられるのが爽快。アイテムが多ければ多いほど、豪快な戦術を決め込めるようになる構造も面白く、パズル側で関連ブロックを消すモチベーションを大いに高める。
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かと言って、ステージによっては所持数制限もあったりして、それが状況に応じた売却、積極的な活用を促してくるようになっているのも上手い。
特に前者はイベント発生させる必要があったり、パズル中でも常時使用可能な専用アイテムを手に入れる必要があるなどの制約が課せられているのが絶妙。そのもどかしさには、いい意味で悩まされること請け合いだ。
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他にボリュームもメインストーリーは大体2時間ほどだが、クリア後専用の高難易度ステージ、純粋なパズルを楽しむモードもあったりと盛り沢山。より高い難易度への挑戦、「実績(アチーブメント)」も用意されているので、全てをやり込むとなれば、倍以上の時間を費やすことになるはずだ。場合によっては、延々と遊べてしまうかも。
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妙なユルさに溢れた世界観とストーリー、異様に耳に残る音楽(兼選曲)と言った演出面の出来もよく、ゲームデザイン以外の部分にも独自の味がある本作。

連鎖の手順を教えるチュートリアルがない、ステージ解禁のために支払うお金の額がやや高めなど、気がかりに感じる点もそれなりだが、ゲームデザインの革新性だけでも遊ぶ価値大いにありの傑作だ。パズルゲームが苦手な人も好きな人も、さらに一風変わったRPGをお求めの方もぜひ、遊んでみていただきたい。
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だが、新規事業の協力を仰いでくる人物にはマジで気を付けろ!
上手い話には裏があるんだぜ!

[基本情報]
タイトル:『ポルト・ガーディア(Port Guardia)』
制作者: サカモトトマト
クリア時間: 2時間(※クリア後を除く)
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考: 英語テキスト対応

※ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/21111

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