みんなが知ってるサンマ 水族館で見かけないのはなぜ?

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みんなが知ってるサンマ 水族館で見かけないのはなぜ?

秋の味覚と言えばサンマですが、そういえば泳いでいるところはあまり見たことないですよね。実は、サンマはとても神経質で、水族館でも飼育・展示が難しい魚なんです。全国的にも珍しいサンマ展示を行う福島県の「アクアマリンふくしま」でも、当初は苦労の連続だったそう。ベテラン飼育係の山内信弥さんにお話を伺いました。

サンマは神経質で捕獲も飼育も難しい

―― サンマの特徴や、飼育が難しい理由を教えてください。
 
サンマは、季節によって広範囲に移動する回遊魚です。日本近海の群れは、太平洋側の温かい「黒潮」で孵化して北上し、夏にオホーツク海で成長します。秋に成魚になると、産卵のために冷たい「親潮」に乗って関東沖を通過し、九州沖あたりまで南下します。
サンマの寿命は1~2年程度。飼育が難しい理由の一つは、鱗が剥がれやすいので、無事に輸送するのが難しいことです。また、とても神経質なことも理由として挙げられます。光や人の姿に敏感に反応し、水槽の中で飛び跳ねたり、ガラスにぶつかったりして死んでしまうことも少なくありません。2019年現在、サンマを展示している水族館は、国内では当館だけなんですよ。

―― 飼育、展示のためにどのような取り組みをされていますか?
輸送が難しいため、最近は主に人工授精によって卵から育てています。稚魚の飼育環境も工夫し、大きな黒い円形水槽、中央あたりに天井から光源を吊るしています。サンマは光に集まる習性があるため、こうすることで水槽の端っこへ泳いで行って壁にぶつかることがなくなるのです。
また、サンマは胃がなく、食べたものをすぐに消化して排泄します。そのため、こまめに食べるので、給餌タイマーを使って1日10回以上エサを与えるなど、気を付けて飼育しています。

サンマの展示を成功させるまでのさまざまな苦難

―― 展示が始まった経緯を教えてください。
当館がある福島県いわき市は、ちょうど親潮と黒潮がぶつかる海域「潮目」に近い場所です。開館当時から潮目をテーマとしていたため、ここを行き来するサンマはなんとしても展示したい魚でした。
飼育のきっかけは、1998年頃、高知から空輸して生き残った10匹が卵を産んだことです。卵から育てれば輸送の負担がなくなると考え、海面を浮遊している「流れ藻」に付着した卵を回収し、館内で孵化させることにしました。ただ、流れ藻自体なかなか見つかりませんし、そこに卵が付着しているかも運次第。また、震災以降は繁殖水槽がなくなってしまい、水槽内繁殖ができなくなってしまいました。
そこで、ここ数年は人工授精という方法を採るようになっています。
それでもサンマを卵から育てることは、全てが手探りだったので、軌道に乗るまでにはさまざまな困難がありました。大きな問題は、水中の酸素が不足すると卵がすぐに腐ってしまうこと。どうやって対処するかと悩んだ結果、「ししおどし」のような仕掛けを作り、定期的に卵に向かって水流を起こすようにしました。
孵化してからも原因不明の突然死などが絶えず、エサの量・水温・稚魚の飼育密度を変えるなどいろいろなことを試しました。他の魚の飼育を通して蓄積してきたマニュアルが通用しないため、観察することが欠かせませんでした。寿命も1~2年ほどなので、短いスパンでこうした苦労を繰り返す必要があったのです。
2000年7月から展示をスタートしましたが、今でもタイミングによって数はまちまち。数千匹いることもあれば、数十匹しかいないこともあります。
バックヤードで飼育されているサンマたちバックヤードで飼育されているサンマたち

サンマの産卵シーンもいずれ展示したい

―― サンマの魅力はどんなところにあると思われますか?
飼育している立場からすると、身近すぎてよく分からないですね。でも、いなくなると「残念」と言ってくださる方が多いので、それを聞いて「ああ、やっぱり必要なんだな」と実感したりしています(笑)。
水槽で飼ってわかったこともあります。産卵時には、尾びれの色が変わること。赤ちゃんはエサを食べるとき、体をくの字に折ること。普段、泳ぐ姿をあまり見ないので「不思議だな」と思う点が多いことも魅力ではないでしょうか。

―― 水族館でサンマを見学するときのオススメポイントなどはありますか?
泳ぎ方に注目してください。蛇のようにくねくねと泳ぐので面白いですよ。あとは、いつか産卵するところも見てほしいですね。これはまだ展示が実現できていないので、今後の目標です。

全国でサンマ展示をしている水族館は「アクアマリンふくしま」だけ。それだけ飼育が難しく、飼育係としてはプレッシャーも大きいそうです。とくに、卵が孵化した後は1カ月ほど休みもあまり取れないんだとか。そうした苦労のおかげで、サンマが泳ぎ回る姿を間近に見学できるんですね。

【profile】公益財団法人ふくしま海洋科学館 ふくしまの海グループ ふくしま・熱帯アジアチームリーダー 山内信弥


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