人気ドラマ『まだ結婚できない男』、2019年の桑野(阿部寛)の住まいは進化した?
2019年秋は話題のドラマが勢ぞろいしていますが、なかでも注目を集めているのが、13年ぶり(!)の続編となる『まだ結婚できない男』(毎週火曜日夜9時~カンテレ・フジテレビ系)。阿部寛演じる偏屈、独善的、皮肉屋の桑野信介と周囲の人々が織りなす日常をコミカルに描いたドラマは、放送第1回目から高視聴率を記録し、Twitterでも話題になっていました。では、その「自宅」はどうなったのでしょうか。関西テレビの米田孝プロデューサーと美術担当の株式会社テレビ朝日クリエイト 美術制作部・吉野雅弘さんにその裏話を聞きました。
時代は変わった。桑野とその部屋はどう変わる?
今回のドラマは、2006年に放映された「結婚できない男」の13年後を描いたもの。主人公は見た目もよく、収入もあるのにあえて「結婚しない」と主張する一級建築士の桑野信介。前作では建築事務所を中心に、マンションの隣人、医師(かかりつけの医師)、親戚を巻き込みながら話が展開していきました。
この作品、桑野信介が建築士という職業柄のためか、「住まい」について話題になっていることが多いのも特徴です。「女性がマンションを買うと婚期を逃す」「キッチンは家の中心にあるべきだ」「家、妻、子どもは人生の三大荷物」(桑野談)などなど……。
あれから13年。世の中は変わり、「結婚してもしなくても、それはその人の選択」「お一人さまの人生もいい」と独身男性・独身女性の生き方が尊重されるように。また寿命も延び、「人生100年時代」と言われるようになりました。では、新しいドラマはどのように変わったのでしょうか。
まず1回目の放映で分かったのは、桑野信介の順調な仕事ぶり。何しろ新国立競技場のコンペ(※国際的な建築賞の受賞経験がないと応募できない)に手を挙げ、テレビ取材を受け、講演会に呼ばれるなど「一流建築家」の仲間入りをしているようです。桑野の住むマンションの内廊下。共用部分には宅配ボックスが導入されていました。桑野は502号室に住んでいます(写真提供/カンテレ)
一方で、分譲賃貸の自宅マンションは引越さず、部屋は大きく変わっていません。経済力を考えればもっと良いマンションに引越すこともできたはず。それとも、同じマンションに住み続けているのには理由はあるのでしょうか。
米田孝プロデューサーは、「プロデュース部としては、視聴者の目線にたったときに、『13年経っても変わらない桑野』を表現する一つの象徴でもあります。また、その中でも実は変わっているところもいろいろある……というのは大きな意図ではあります」と裏側を明かします。 自宅はあえて引越さず。前作から見続けているファンは、「桑野の部屋が変わってない!」と思い出すはず(写真提供/カンテレ)直接照明だけでなく、複数の個性的な照明を配置しているのは、さすが建築家というべき?(写真提供/カンテレ)
また、美術担当の吉野さんによると、「あくまで私の個人的な意見ですが、仕事で成功した桑野は、新しい家に引越しするだけの資金はあるはず。しかし、桑野はこだわりの人です。部屋の広さや高級感を求めるのではなく、自分の理想の部屋を追い求めた結果、部屋の広さ、家具の配置など、今の部屋がベストだったのではないでしょうか」とのこと。
確かに引越せるけど、あえて「引越さない」。自分にとってのベストが何かを知っている桑野らしい選択といえます。ほかにも、良いものは使い続けるということで「ダイニングテーブル」「フランク・ロイド・ライトのタリアセンのライト」は同じものを使っているそう。確かにあの性格ならそうするだろうな、と妙に納得してしまいます。
「独身男性の理想の部屋」、家電がアップデート!
そもそも桑野信介の部屋の特徴は、広々としたLDKを仕切らず、趣味のスペース、仕事のスペース、食のスペースをバランスよく配置し、眠る以外の機能が一つの部屋で完結している点です。 徹底的に一人にこだわった部屋。ダイニングテーブルはじめ、椅子はすべて1脚(写真提供/カンテレ)リビング脇にある仕事スペース。ここではよくエゴサーチをしているシーンが流れる(写真提供/カンテレ)
また、部屋に置いてあるのはシンプルかつ、こだわりのあるアイテムのみ。「ミニマリスト」とはまた違いますが厳選したコレクション、自分の好きなものに囲まれて過ごす。「独身男性の理想の部屋」としてある意味、完成しているのかもしれません。
さらに、桑野信介の部屋の特徴として、「イスが1つ」という点があげられるといいます。
「大きなアイランドキッチンがあるのに、大きなダイニングテーブルにはイス1つ。音楽用チェアも1人用。これは『自身が満足するための部屋』の象徴でもあるのです」(吉野さん)
家族ではなく、自分が好きなものにこだわって、配置する。惜しみなくお金と時間を使える独身男性、個人的には羨ましくもあります。ただ、部屋には大きな変化はありませんでしたが、小物は時代とともにアップデートされているといいます。例えば、家電製品。 オーディオセットは最新型に。より高音質で趣味のクラシック音楽鑑賞に酔いしれているのだろう(写真提供/カンテレ) 桑野の部屋で「変わった」象徴でもあるスマートスピーカー。どう使いこなしていくのか注目(写真提供/カンテレ) シンクとIHクッキングヒーターが別々になった珍しい二型のキッチン。味にうるさい桑野らしく、炊飯器や電子レンジなどの家電は一新されている(写真提供/カンテレ)キッチン脇にはロボット掃除機が導入されている。13年前は普及途上でしたが、今やすっかりおなじみ(写真提供/カンテレ)
「家電やオーディオ機器に関しては、13年という時間が経過していますので今の時代に合わせたものを用意しました。13年前よりもはるかに高性能なものです。オーディオ機器は13年前よりもさらに高音質で音楽を楽しめますし、冷蔵庫などは手をかざせば扉が開くなど、いいものは取り入れています」(吉野さん)
なんと、それは気になる……。さらに番組予告などではスマートスピーカーに話しかけるシーンが見られ、公式サイトではお掃除ロボットが活躍しています。偏屈な桑野が最新家電をどう使っているのか、どんな皮肉をいうのか、注目したいところです。
金魚と指揮棒。小物を使ったお芝居にも注目
ドラマでは桑野信介が大きな目をギョロりとさせながら、毒舌をふりまくのが見どころのひとつ。皮肉屋でひとこと多い性格は、一歩間違えれば大炎上、単なる嫌なヤツになりそうなものの、どこか憎めない。そのバランスが絶妙です。
「自室で音楽に合わせ、指揮棒を振る桑野はやっぱり憎めないですよね。その点、一人掛けチェアと指揮棒は桑野信介を象徴するアイテムです。あとは13年間、大事に育てているという設定の金魚。13年前と金魚鉢が一緒なので小さく、かなり窮屈そうではあるのですが」と吉野さん。確かに13年前は指揮棒を持っていなかった。そっか、指揮棒を買ったんだな桑野……。自室以外にもバーやカフェの小物は、お芝居の大切な要素だとか。 前作から飼育を続けている金魚。その脇には外出先でも様子を見られるネットワークカメラが(写真提供/カンテレ)独自のファッションセンスをしている桑野。それでも阿部寛が着るとなんとなくサマになるから不思議(写真提供/カンテレ)
「多くのシーンで折り紙や小さな置物などを配置しています。撮影の際に阿部さんが手に取ってお芝居に取り入れてくれる場合もあります。あとは桑野がまどか(吉田羊演じる弁護士)の事務所に手土産として持っていくバナナ。スタッフが毎回、市場まで仕入れに行ってくれています(!)」というから、美術スタッフの並々ならない気合が伝わってくるようです。
第1回の放送では、「人生100年時代、誰にでもセカンドステージがくる。そのときどんな家で暮らしたいのか。結局のところ、私は自分が住みたい家をつくりたいのかもしれません」という重たい、また13年前には考えられなかったテーマが提示されました。もちろん、恋の行方も気になりますが、個人的に桑野がどんな家をつくるのか、その答えに注目したいと思います。こちらは玄関。前作よりシックでより高級感ある印象に(写真提供/カンテレ)●取材協力
『まだ結婚できない男』
※「まだ内見できない所 桑野の部屋を大公開!」
元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2019/10/167949_main.jpg
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