【ここは法廷だゼ!】言い訳がましい被告人に裁判官が喝!「おかしくないですか?」
ある日の東京地裁。罪名は暴行、傷害。血気盛んな若者の被告人を思い浮かべながら法廷へ入ると、被告人は白髪まじりの中年男性で、下を向いてモジモジしていた。罪名とのギャップが大きい。
法廷でのやり取りから、被告人は2月某日、病院の受付をしていた女性に殴り掛かり(暴行)、その翌月、牛丼を買いに行った帰りに通行人の60代男性を殴りつけたという(傷害)。アッパーおやじである。
前者に関しての言い分は「酒を前日から飲んでて、残ってた。相手が語気荒く、私の方に向かってきたから」。後者については「私の方に挑戦的に向かって来るように見えた。高齢の方だと分かっていたら暴力を振るわなかったです。私はメガネを利用しているんですが、そのときはかけてない……。48歳で老眼なので、視力は0.1と言われました……」。被告人は以前も、同じ罪で罰金刑を受けた過去がある。そのときの言い分については「アルコール、関与していた……ちょっとヤメられませんでした」。かなり酒浸りであることを伺わせる。今回も、酒の影響がゼロではないらしく、無職状態でありながら朝から飲酒していたという。
無職の理由については「父親の介護が必要なのと、看護士の資格を取るために学校に通っていて」と述べた。だったら酒を飲んでる場合でもないし、他人に殴り掛かってる場合でもないだろう。また現在身柄勾留されていることについても「いま、私の住んでいるマンションの改修工事があるんですが、自治会の私が逮捕されたせいで中断になっている……」と、早く外に出て改修工事の仕切り作業に復帰したいとしきりに訴え続ける始末……。
さらに、これまで断酒剤を利用したり等、断酒のために行動を起こしたか、と聞かれても「地震で行けなくなってしまった……」とのこと。終始言い訳ばっかりの被告人には裁判官も業を煮やしたのか、ツッコミを入れまくった。
裁判官「あなた、傷害については最初“ビジネスマンが『どけ、どけ』とぶつかりに来ていると思った”と言ってましたね。本当にそう思っていたんですか?」
被告人「はい、思いました」
裁判官「おかしくないですか!? 普通の人なら“気をつけろよ”とか言うんですよ。そういう対応、あなた、できない訳ですよね? それがどれほどおかしいか、理解してる? そんな様子で社会に出たら、どれだけ周りが迷惑を被るか!」
被告人「……」
裁判官「両親の心配、してる場合じゃないですよ!」
そうだそうだ。
裁判官「独り暮らしだと酒をやめるのは難しいの、あなたも分かってるんじゃないですか?」
被告人「酒はあの、飲まないで30代くらいのときは普通にやってたんで、そのときは……」(延々言い訳が続くが)
裁判官「(遮って)とにかく! 平成22年にも事件を起こして、平成18年もそうだけど! それで今年もこんな事件起こしてるんですよね。そういう状況でないってこと、自覚しないと、周りは迷惑被るし、あなた、人のマンション心配してる場合じゃないですよ! 自分が見ている景色がいかに身勝手か、自覚しないと、もっと酷い事になってしまいますけど、分かりますかね?」
被告人「………ハイ……」
証言台の前から被告人席に戻った被告人は、到底「分かった」とは思っていないのか、顔を歪ませ、一点を見つめ、しきりに手を動かしていた……。父の面倒、マンション改修工事、どちらも結構だけど、それより酒をなんとかしてください。
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傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。
ウェブサイト: http://tk84.cocolog-nifty.com/
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