<ライブ・レポート>flumpoolが活動休止から再スタートしたツアーが閉幕「4人で音を鳴らせて本当に嬉しい」

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<ライブ・レポート>flumpoolが活動休止から再スタートしたツアーが閉幕「4人で音を鳴らせて本当に嬉しい」

 2019年10月3日と4日の2日間、flumpoolの全国ホールツアー【Command Shift Z(※)】の追加公演が、東京・渋谷NHKホールで行われた。本稿では、初日の10月3日の模様をレポートする。

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 山村隆太(Vo/Gt)の“歌唱時機能性発声障害”を受けた活動休止前、最後にライブを行った【Re:image】ツアーのパシフィコ横浜公演から約2年。数日前には再びパシフィコ横浜のステージに立っていた彼ら。NHKホール公演の初日には「今日は横浜の名前をたくさん出してしまってごめんなさい。そういうのはあんまりよくないと思ってるんですけど…」と申し訳なさそうにしつつも、自分たちとしては納得のいく、良いライブができたのだと嬉しそうに語っていたが、それを踏まえたうえで「昨日の自分を越えたいし、常にベストでありたい。横浜を超えるライブにします」と、この日のライブにも相当気合が入っていることも明かしていた。

 そんなライブは「FREE YOUR MIND」でスタートを切った。ラップトップが水中に沈んでいく映像から、ツアータイトル【Command Shift Z(※)】の記号がステージ上に大きく映し出される。阪井一生(Gt)のギターイントロからパッと幕が落ち、煌々と輝く照明の中に立つメンバーが奏でる音色が客席へと溢れ出すと、会場は大きな歓声とクラップに包まれた。山村の歌声はオートチューン越しであっても、【Command Shift Z(※)】がスタートしたばかりの半年前と比べて、格段に発声が良くなっていることは一聴して明らかだった。

次にプレイしたのは、2枚目のフルアルバム『Fantasia of Life Stripe』からの懐かしい楽曲「しおり」。続いて、3曲目にはデビュー曲「花になれ」を投下。色褪せないバンドサウンドの中で、まっすぐに歌い上げる山村の歌声がエモーショナルな空間を作り上げた。

 「ただいま!」と弾けるような笑顔で山村があいさつすると、鳴り止まない拍手に阪井、尼川、小倉もキラキラと目を輝かせていた。10月1日に11周年を迎えたことをファンに報告し、「今日はここからflumpoolがどう変化していくかの始まりの1日ということで、全力で歌っていきたい」と、軽快なシティポップ風の楽曲「DILEMMA」へと繋げた。さらに、ギターを掻き鳴らすロックナンバー「Sprechchor」から、尼川元気(Ba)が初めて作詞作曲どちらも担当した「産声」、最新シングル『HELP』に収録された「空の旅路」へ。

 直後のMCでは、この日ハチ公の銅像前で写真を撮るため、観光客に交じって写真を撮る列に並んだというエピソードを披露。というのも今回のツアーでは、訪れた各地の名所で写真を撮って、ライブの最後で映し出す演出が行われていたのだ。『紅白歌合戦』以来のNHKホールでは、紅白歌合戦に出演時に、阪井が尼川と間違えて“お偉いさん”に馴れ馴れしく絡んでしまったエピソードを披露すると、山村が「それ以来、紅白出てないんですけどね…」と自虐したり、どんなエピソードもネタに変える関西魂も健在だった。

 「ここから、ぼくの届けられなかった想いを届けていきます」と「解放区」へ。ビカビカとした攻撃的なサウンドで次のブロックがスタートした。サポートメンバー、磯貝サイモン(Key, Cho)のピアノと、吉田翔平(Violin)のバイオリンが感情的に鳴り響く中、阪井がギターをかきならすイントロでスタートしたのは、叶わないことや報われない気持ちを歌った「HOPE」。続いて、山村が奏でるアコースティックギターのイントロが物悲しいアレンジでスタートした「MW ~Dear Mr. & Ms. ピカレスク~」と、まるで息苦しくもがいていくような楽曲が続いたが、そこに一筋の光を差し込むようだったのは「Over the rain ~ひかりの橋~」。山村が活動休止中のことを書いた「HELP」、そして「ここから一緒に行こうぜ!」とシャウトした“諦めない”という決意が滲んだ「reboot ~あきらめない詩~」と、それぞれのパフォーマンスが彼らの心情そのものを生々しく表しているようで、紆余曲折の11年間を振り返っていくようにライブが進んでいった。

 終盤には、3階席まであおりながら会場全体が拳を突き上げて歌った「Blue Apple & Red Banana」、そしてタオルを回す「World beats」を連発したのち、「星に願いを」へ繋げると、会場のボルテージは最高潮に。「このツアーは、常に自分のベストでありたい、自己更新したいとやってきました。でも、今日はそういうことよりも、僕たちが演奏して笑ってくれる人がいるのならば、それでいいんじゃないかなって思えた。素敵なライブを一緒に作ってくれたみんなに届けたい曲です」と、本編の最後に捧げたのは「どんな未来にも愛はある」。<この声が涸れてもね 唄うから>という歌詞の通り、彼らはたしかにステージに帰ってきたのだと改めて実感させられる幕切れとなった。

 アンコールには『HELP』に収録されている「つながり」を披露し、「最後はハッピーになって帰れるように」とフィナーレを「Touch」で締めくくり、長く温かい拍手に包まれながらライブは終了した。

この日は、アンコールの最後に年末ライブ【FOR ROOTS ~シロテン・フィールズ・ワンスモア~】の開催と、2020年アルバムリリースというサプライズ発表もあった。その発表も、噛んだりタイミングを間違えたり…クールとは言えずとも憎めない、flumpoolらしい一面に和まされた場面だった。さらに、2日目にLINE LIVEの生配信が行われることが告知されると「どうすんの、お前声出なかったら!」と阪井にイジられた山村の「その時はみんなが歌ってくれるよ! 俺らはもう1人じゃないからね!」と吹っ切れたようなやり取りも印象的だった。

 2年前のパシフィコ横浜で「デビュー当時に想像していた自分たちには今、届いていない」と話していた山村だったが、この日は「11年間良いことばかりじゃなかったけれど、今のflumpoolが1番楽しい。4人で音を鳴らせて本当に嬉しい」という前向きな言葉を聞くことができて安心した。“1度戻った場所から、再びスタートする”今回のツアータイトルの意味通り、再び歩き出したflumpoolというバンドはここからまだ始まったばかりだ。

※「Command」および「Shift」の正式表記は、キーボードの修飾キーを示す特殊文字

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