ラグビーワールドカップに感涙 ラグビーにおけるノーサイドとは何か アイルランドはなぜ日本を花道で送ったのか

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ラグビーワールドカップに感涙 ラグビーにおけるノーサイドとは何か アイルランドはなぜ日本を花道で送ったのか

世界中のラグビーファンの心を打ったシーンがある。9月28日、ラグビーW杯日本大会で、アイルランド代表と日本代表が対戦した。世界ランキング2位のアイルランドから、8位の日本が勝ったジャイアントキリングは、長年語り継がれるであろうアツいゲームだった。涙を流したファンも多かったに違いない。
しかし、感動にはまだ続きがあった。
試合終了後、アイルランドの選手たちは客席にあいさつすると2列に並んで花道をつくって、ピッチを去ろうとする日本代表を賞賛の拍手で送り出したのだ。
アイルランドにとっては、格下の日本相手にした、取りこぼしができない試合だった。悔しくないわけがない。にもかかわらず、悔しさを胸に秘め、まず相手をたたえる。そんなアイルランド代表の姿がファンの心をつかんだのである。
死力を尽くしたゲームのあと、敵味方のサイドがなくなり、仲間になる。そんなラグビーならではのノーサイド精神を地で行く光景だった。
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対戦相手に対するリスペクトという点で思い出すのが、開幕のロシア戦後。日本代表のキャプテンリーチマイケルが、ロシアチームのロッカールームを尋ねて、トライを決めた選手に模造刀をわたし、健闘をたたえたと報じられた。ロシアの選手たちから感謝の拍手が起きたという。
また10月5日の日本とサモアのゲームのあとにも、両チームの選手が一緒になって客席にあいさつしたシーンがニュースなどで繰り返し放映された。
改めて振り返ってみると、ほかのスポーツに比べて、ラグビーでは選手が互いに健闘をたたえ、賞賛しあう文化が根付ているように思える。そもそもラグビーが持つノーサイドとは何か。
 
それは、ラグビーというスポーツが長年、大切に守ってきた「価値」に由来する。
世界のラグビーを統括するワールドラグビーが掲げる「ラグビー憲章」に5つの「価値」が明記されている。
「情熱」「結束」「品位」「規律」そして「尊重」の5つである。
ラグビーは、見ての通り、肉体を極限まで鍛え上げ、ぶつかり、ボールを奪い合う。人間が持つ闘争本能を最大限に引き出さなければ、プレーできない原始的ともいえるスポーツだ。
「情熱」がなければ、2メートル、120キロをこえる巨人にタックルできない。
また、球技としては最多の1チーム15人。1人1人がばらばらにプレーしていては、チームとして機能しない。ここで必要なのが「結束」と「規律」である。
さらに原始的な闘争本能だけでぶつかり合っていたら、やがてただの殴り合いのケンカになってしまう。だからこそ「規律」と「品位」が重要になる。
そして最後の「尊重」。
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ラグビーでは、100キロを超える巨漢にも、160センチ程度の小兵にも、190センチをこえるのっぽにも、足が遅くても、さほどパワーがなくても、それぞれに特技や長所を活かせるポジションやプレーが必ずある。個性が異なる15人が、1つのチームをつくる。ラグビーが多様性のスポーツと呼ばれるゆえんである。
たとえば、俊足を活かしてトライを奪う役割のウィングの選手がスクラムの最前列に置かれても力を発揮できない。同じように、スクラムを柱となるプロップの選手はパワーを持つが、ラインアウトで空中でボールを奪い合うジャンパーや、最後にパスを受けてトライを決めるフィニッシャーには不向きである。
自分にはない個性を持ち、異なる役割を果たしてくれる仲間がいるから、チームとして戦える。加えてラグビーをプレーするには、最低でも15人の相手とレフリーが必要だ。チームメイトだけではなく、戦ってくれる相手や笛を吹くレフリーを「尊重」しなければ、試合が成立しない。
高校や大学のラグビー部で、「ラグビー憲章」をいちから教わるわけではないが、経験者はラグビーをプレーしていくなかで、5つの価値を体験的に理解し、身につけていく。だからこそ、試合後、ひんぱんに健闘をたたえ合うシーンを目にできる。ゲームが激しければ激しいほど、相手のプレーを心からたたえる選手たち姿が胸に響くのだ。
一生に一度ともいわれるラグビーW杯日本大会。プレーだけではなく、ラグビーというスポーツが、歴史とともに培ってきた文化にも注目してほしい。(文◎山川徹)
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