「社会」にとっては究極の「悪」が生まれた瞬間“ジョーカー”は踊り始める:映画レビュー
⻑きにわたって多くの人を魅了してきた「ジョーカー」はどうやって生まれたのか? 監督・脚本は 『アリー/スター誕生』や『ハングオーバー』シリーズで知られるトッド・フィリップス、主演はホアキン・フェニックス、共演はロバート・デニーロという、期待が果てしなく高まる布陣で制作された映画『ジョーカー』。舞台は1980年代初頭のゴッサム・シティ。つまり、これまでのバッドマン・シリーズが起こる前の話で、それらのジョーカーとは切り離されている。
「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」という母の教えを胸に、コメディアンを夢見る⻘年・ アーサーはピエロのメイクをして大道芸人をしている。市⺠の格差は広がり、市は財政難を抱え、街には不穏な空気が流れる。母と二人暮らしで、脳および神経の損傷で突然笑い出してしまう病を抱えるアーサーの生活も、どんどん追い詰められていく。母はアーサーのことを「ハッピー」と呼んでおり、意識的に笑顔を浮かべてきたアーサーは、「何がハッピーだ。幸せなど一度もなかった」 と口にする。
思いやりと共感に欠け、弱者に冷たい社会の中、アーサーは傷口に塩を塗られるような行為を度々受け、純度を高めていく。それが極限に達し、「社会」にとっては究極の「悪」が生まれた瞬間、ジョーカーは踊り始める。
「狂ってるのは僕か? それとも世間?」
「人生は悲劇だと思ってた。だが今分かった、僕の人生は喜劇だ」
トッド・フィリップスは本作について、「どう受け取るかはすべて観客に委ねる」と発言している。 主観的には、最高のジョークに満ちた最高のコメディだ。
そして、タランティーノの最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』もそうだったが、『ジョーカー』もまた、映画の創造性は無限なのだということを体感させてくれるところも本当に素晴らしい。
映画『ジョーカー』10月4日公開
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【書いた人】小松香里
編集者。「H」「ロッキング・オン・ジャパン」編集部を経てフリーランスに。
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