ある樹木にまつわる“ちょっと苦い”エピソード
樹木は私たちの生活との関わりが深い。家、テーブル、イス、本棚、紙などの生活用品の原材料として、温暖化を防いでくれる役割として・・・私たちは樹木から本当に多くの恩恵を受けている。
『自然が見える!樹木観察フィールドノート』(姉崎一馬/著、ソフトバンククリエイティブ/刊)では、約100種類の日本の野生の樹木を取り上げ、特徴や生育環境、人間とのかかわりを解説。写真家でもある著者の姉崎氏の樹木の写真も合わせて掲載した一冊。樹木の豆知識も得ることのできる内容だ。
例えば、日本の樹木で個体数がトップなのは間違いなく「スギ」だ。北海道から九州の屋久島まで植えられている。しかし、本来の野生の状態を見たいと思っても適わないほど、天然のスギがないのは極端な話である。太古から人間に身近に利用され、天然スギは切りつくされたといっていい状態なのだという。
そんなスギだが、植林面積のわりに利用もされず、花粉ばかり撒き散らしているのが現状ともいえるだろう。
では、どうして、これだけ広範囲に植林されたのだろうか? 戦後の国家再興の祈りに、今後伸びるであろう住宅建築などを念頭に、需要は無限と考えた政府が拡大造林政策を打ち出した。そのとき、林野庁のキャンペーンは役に立たないブナを切ってスギを育てる、というものだった。これによって、大面積のブナの原生林が破壊され、結果として国土の荒廃を招いてしまい、いまだ負の遺産として山腹崩壊などの災害リスクや、水産資源の減少などを招いているという。
そんな苦いエピソードもありつつ、やはり私たちの生活の中と樹木は切っても切ることができない。本書では約100種類の樹木のエピソードや樹木の見どころを伝えてくれる。
木々の新緑が美しいこの季節。外に出かけるとき、本書を鞄やポケットに忍ばせてみてはどうだろう。いつもは素通りしていた道路沿いに植えられている樹木や旅行先の自然にも目がいくだろう。慣れていた景色やぼんやりと見ていた山の木々が、また新しいものに見えるはずだ。
(新刊JP編集部)
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