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「自立」とは、社会の中に「依存」先を増やすこと ――逆説から生まれた「当事者研究」が導くダイバーシティーの未来(Mugendai(無限大))

――どのようなブレークスルーがあり、当事者研究の成果が表れたのでしょうか

熊谷 大学時代に綾屋紗月さんという方に出会いました。私と同じ手話サークルに所属していらして、耳が聞こえるのに手話を使って会話をしている姿がとても印象的でした。本人も何故そうなるのか分からないが、ある時は流暢に話せるのに、ある時は言葉を発することができなくなる。「見えない何か」がそうさせていたのです。

後年、偶然再会した際に、綾屋さんはなかば興奮気味に「私は、自閉症かもしれない」と打ち明けてくれました。当時自閉症の当事者が自分のことを手記に書いて出版したものが話題になっていました。綾屋さんはそれを何気なく読んだ際に、書かれていることがこれまで自分が経験してきたこととそっくりだったので、自閉症という可能性を強く思うようになったとのことです。
まだ、当事者研究のことを知らない2006年くらいの頃の事で、私は小児科医をしていました。自閉症のことも勉強していましたが、専門ではなかったので、知り合いの専門医を紹介したところ、綾屋さんはその先生から自閉症だと診断されました。

――その診断は、綾屋さんに何をもたらしたのですか。

熊谷 それまで綾屋さんは、疑問ばかりで腑に落ちない、自分だけ周りとずれているという感覚をずっと持ってきました。それはまるで、幼少期に経験した断片的な「ずれ」の記憶が、人生の物語の中での位置づけを与えられぬまま、まるでスナップ写真が床に散らばっているような、そんなイメージだったそうです。それが、診断によって困難に「名」が与えられることで、ばらまかれていた写真が時間軸上に並び始める感覚を覚えたそうです。自分の人生が初めて体系化された瞬間だったのです。私はその話を聞いて、見えにくい困難に「名」が与えられることの重要性を認識しました。

しかし同時に綾屋さんは、診断名は単なる「切符」だということにも気づいたのです。電車に乗って行き先に着けば、もうその切符は捨てても構いません。同じ名を共有し、類似した困難を抱えているが異なる仲間がいる場所です。そこから当事者研究が始まります。

研究が始まるとすぐにやっかいなことに気づきました。自閉症は、コミュニケーション障害と定義されています。その定義を受け入れるということは、誰かとのコミュニケーションがうまくいかなかった場合、ことごとく「あなたの障害のせいですね」とされる可能性を許してしまうのです。
でもちょっと考えてみてください。人と人とのコミュニケーションの行き違いって、誰にでもありますよね。意見の相違で喧々諤々になることも。その時に一方的に「あなたにコミュニケーション障害があるから」という理由で、一方の側が悪いとなるでしょうか? 日本人と外国人がコミュニケーションが取れない時、「やっぱり日本人はコミュ障だからね」といわれたらどうでしょう?日本人の皮膚の「中」にコミュニケーション障害があるのではなく、文化の違い、言葉の違いなど多くの相違点が日本人と外国人の「間」にあることが原因に違いありません。コミュニケーション障害は、皮膚の内側にあるものではなく、皮膚の外側、異なる人と人の「間」に発生するもののはずです。にもかかわらず自閉症の場合にのみ、一方的に責められるのはフェアではありません。だから綾屋さんの困難をコミュニケーション障害と記述するのは正しくありません。既存の自閉症の考え方をひっくり返す再定義をしたい。そこで二人で研究をすることにしました。

一緒に研究をし始めた頃、北海道での当事者研究のことを知ったのです。私たちの研究はまさにこれだと思いました。そしてその研究成果として、2008年に共著で、『発達障害当事者研究』を出版しました。

――どのようなことが分かったのでしょうか。

熊谷 コミュニケーション以外の場面で、綾屋さんがどのような経験をしているかを丹念に記述しました。困難は、他者といる場面のみならず、一人でいる時、自分の身体との関係や、物との関係においても起こっていました。人間関係ではなく、むしろ、そこに答えがあるはず。コミュニケーション障害という既存の概念に引っ張られないために、記述を構成する際に、なるべく他者が登場しない場面から記述をスタートすることを意識しました。このこだわりは、類書にはありません。
例えば、「お腹が空いている」という表現。健常者は、胃がきゅっと締まる、頭がふらっとする、イライラするなどさまざまな症状を要約して「空腹感」を表しています。これは、とっても大雑把なカテゴライズです。綾屋さんの場合、細かい内臓の感覚は分かる。でもそれを大きなカテゴリーである「空腹感」にカテゴライズできないのです。

カテゴリー化の仕方というのは、実は人それぞれ個人差があります。私たちが使っている言語は、カテゴリー化の道具です。そして、「これは机です」「これは椅子です」とカテゴリーに名を与え、互いに共有します。しかし、私が担当したある自閉スペクトラム症のお子さんは、どうしても10円玉の概念がつかめなかった。10円玉を10枚並べると、形、汚れ、サビの付き方など一つひとつ違って見える、それを全部10円玉という概念にするのが難しかったからです。細かい差異を無視せず、細かいカテゴリー化をしたい人もいれば、ざっくりでいい人もいます。

私たちが使っている言葉は、多数派のカテゴリー化の仕方に合わせてデザインされたものです。生まれながらに人が持っている、森羅万象の直感的なカテゴリー化のレベルを、認知言語学では「基本的レベル」と呼びまずが、自閉スペクトラム症の方と多数派の基本レベルは異なっている可能性があり、ゆえに自閉スペクトラム症の方にとって、世間に流通している言語は使い勝手が悪くなっている可能性があります。私は「社会モデル」の考え方を、建物や公共交通機関、道具のデザインだけでなく、言語や知識の領域に拡張する取り組みが必要だと考えています。
当事者研究は、マイノリティーの経験から出発して、言語や知識の領域もバリアフリーにしていく試みとみなすこともできます。

――健常者との言語による分類のギャップを埋めるには、どのようにすべきでしょうか

熊谷 私たちの言語は、もっと開拓の余地があると思います。
例えば日常言語に比べると、専門家が使う専門用語はカテゴリー化が細かい。日常言語では表現できない経験を多く抱えていた自閉症の人が、専門用語に出会い自分の思いを言葉にできたというのをよく耳にします。植物図鑑で自分の見た世界が現実だったと気づいた人もいます。これまで自分は植物の個々の違いが明確に認識できていたけれど、人に話しても通じなかった。しかし植物図鑑には、自分の見たとおりの分類がきちんとされていた。これは、専門用語や専門知の中にマイノリティが自分にとってバリアフリーな言葉や知識を見つけた例です。大学は、多くの専門用語や専門知であふれています。大学の中にあるこれらの資源を当事者コミュニティに広げるのも一つのアイデアでしょう。

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