星野源主演『引っ越し大名』美術スタッフが超難関撮影現場を語る! 「藩をあげての大移動」をリアルに体験?!

『超高速!参勤交代』シリーズをはじめ、これまでになかったユニークな視点で時代劇の新しいジャンルを開拓し続ける土橋章宏の傑作小説「引っ越し大名三千里」を、『のぼうの城』を手掛けた犬童一心が監督を務める映画『引っ越し大名!』が8月30(金)に公開となります。

本作のテーマとなっている「国替え」と呼ばれた江戸時代の引っ越しはなんと、藩士とその家族全員が移動するため、移動人数10,000人、距離は約600kmという現代では考えられないほど大規模な出来事。「引っ越し」といえば現代でも一苦労するものですが、ましてや本作の舞台は荷物を一気に運ぶことのできる台車やトラック、エレベーターもない江戸時代。参勤交代をはるかに上回る労力、そして費用がかかること必至の超難関プロジェクトなのです。そんなお国の一大事を救うべく、引っ越しの総責任者”引っ越し奉行”に白羽の矢が立ったのは、書庫にこもりっきりで本ばかり読んでいた引きこもり侍の片桐春之介(星野源)。引きこもりで人と話すことも苦手な彼は、この超難関プロジェクトを無事に成し遂げることができるのか!?

劇中では「藩丸ごとの引っ越しなんてどこから手をつければ…」と途方に暮れる春之介に、前引っ越し奉行の娘である於蘭(高畑充希)が引っ越しの手順を指南するように、江戸時代の物語とはいえ、現代にも共通する引っ越しの手順や工夫が盛りだくさんで描かれます。先日行われた引っ越し会社試写会では、「今も昔も段取り8分チームワークが必要なのは変わらない」、「マニュアル、段取り、構成など現代の引っ越しにも通じる部分がたくさんある」といった引っ越しの段取りについてから、「建物が傷つかないように養生もしっかりされていて素晴らしい」と具体的な部分まで、引っ越しを生業にしている方々だからこそ共感できるコメントが続々。

そこで、今回は映画の世界を作り込む美術の倉田智子さんと原田哲男さんに本作の撮影の裏側に関するコメントをいただきました! 「引っ越し」をテーマにしたからこそ出てきた本作ならではの裏話やこだわりとは?

【江戸時代でも「とにかく養生すること、仕分けしてわかりやすく運ぶこと」】

自身も撮影前に引っ越しをしたという倉田さん。その時の経験を思い出しながら、撮影に臨まれたそう。「その時業者さんがどのようにしてらっしゃったかと思い返してみて、とにかく養生をする事、仕分けしてわかりやすくして運ぶ事だったなと思い、養生も柱だけでなく壁にもむしろをかけたり、手すりにもゴザを巻いてみたりとぶつかりそうなところは特に念入りにして撮影にいどみました」と語る通り、本作の搬出シーンでは柱に竹を巻いたり、江戸時代ならでは養生を行なっているシーン、荷物も武器や日用の食器などきちんと仕分けをして片付けているシーンが見受けられます。国替えで城ごと引っ越しをするということは、その後にまた別の藩がその城に入るということ。多くの物を搬出、搬入する引っ越しにおいて建物を傷つけないように養生することや、引っ越し先に到着してから荷ほどきをして何がどこにあるのかわかりやすいようにしておくことは今も昔も変わらないようです。

【スタッフもリアルに体験した江戸時代のお引っ越しは超難関!?】

「江戸時代の引っ越し」をテーマにしたことで、本作が他の撮影とは異なった点を伺うと、お二人が口を揃えてあげたのは、現場での小道具としての大量の引っ越し荷物の運搬についての苦労。「藩をあげての引っ越し、という題材なので、小道具としての大量の引っ越し荷物。それをロケ場所ごとに全部運ばなければなりません。とにかく人手がなければ長持ち(=両端に金具があり、さおを通して二人で担ぎ、運搬用にも用いた大きな箱)一台、行李(=竹や柳を編んで作ったかご)一つに至るまで運ぶ事が出来ないのです。阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられた事でしょうか」と語る原田さん。これだけでも大変さが十分伝わるコメントですが、スタッフの方々の苦労はさらに続き…「姫路城の天守など車両が入れないロケ場所にこれらを運ぶのは、撮影が夏に差し掛かった時期もあり、そこにいたスタッフは、全員地獄を見たのです。撮影機材は、どんどん進化していきますが、こういう事はいつまでも肉体労働なのでした」と、特別な場所で撮影しているがゆえの苦労もあったそう。

更に江戸時代は、現代と比べものにならないくらい大変だったというのだから春之介らの苦労は計り知れません。しかし、劇中のような体験は苦労ばかりではなかったそうで、「劇中で引っ越しの歌が出て来るのですが、耳に残りやすく歌いやすいので、スタッフも一緒になってずっと歌ってました」と本作に出てくる『引っ越し唄』を歌って作業をしていたというエピソードを倉田さんが明かしてくれた。この『引っ越し唄』は犬童一心監督のアイディアにより、映画オリジナルの演出として作られたもので歌詞を原作、脚本の土橋章宏氏、振り付けを野村萬斎さんが担当しています。心をひとつにするには歌、現代に通じるのは引っ越しの手順や工夫だけでないのかもしれません。

最後に本作の見どころを伺うと、姫路城のセットを挙げられた倉田さん。「最初は、(舞台となる)姫路城の大きさを出すにあたって、藩の幹部がいる広間、春之介がクビを言い渡す広間などのデザインを書くにあたって、ロケハンで見た場所になるたけイメージを近づけるよう気をつけて作っていきました。ライティングも素晴らしくいい感じになったと思います」と、自信をのぞかせる。原田さんは「映画としては、この題材の割りには、意外と殺陣が濃いめで見応えがあります」と、終盤の大立ち回りのシーンを挙げ、美術以外にも見どころ満載の作品であることを語っています。

春之介が立ち向かうことになる引っ越しの至難は、資金の工面やリストラなど様々だが、荷物の運搬だけとっても、現代では考えられないほどの労力がかかることが撮影スタッフの方々の体験からもお分かりいただけたのではないだろうか。ちなみに、先の引っ越し会社試写会で、「もし、この映画の世界にタイムスリップしたとして、一つだけ引っ越し道具を持っていけるとしたら何を持って行きますか?」というアンケートでダントツに多かったのは台車とトラック。一度に大量の荷物が運べる、便利な世の中になったと誰しもが痛感することでしょう。

『引っ越し大名!』
http://hikkoshi-movie.jp

(C)2019「引っ越し大名!」製作委員会

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

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