『弱虫ペダル』渡辺航先生インタビュー「キャラクターについて語ることが幸せにつながってくれるのならば、僕も幸せです!」

数々の名作、人気作を輩出し、創刊50周年を迎えた漫画雑誌『週刊少年チャンピオン』。7月15日には、東京・秋葉原UDXギャラリーにてイベント「週刊少年チャンピオン創刊50周年大感謝祭」が開催されました。

会場には、クラウドファンディング「ドリームプロジェクト」で募った資金で作られた『弱虫ペダル』の登場キャラクター・御堂筋翔の巨大バルーン、『刃牙シリーズ』の刃牙の家のジオラマなど漫画ファン垂涎の展示が飾られ、抽選で招待されたゲスト限定のステージイベントも。

ステージには板垣恵介先生、渡辺航先生、山口貴由先生、荒達哉先生、板垣巴留先生、西修先生が登壇し、トークイベントも行いました。今回ガジェット通信では、渡辺先生にインタビューを敢行。『弱虫ペダル』や『週刊少年チャンピオン』への想いをお聞きしました。

――今日は本当におめでとうございます! 『週刊少年チャンピオン』で『弱虫ペダル』の連載がスタートした時はどんなお気持ちだったのですか?

渡辺先生:正直にいうと僕は元々ジャンプっ子で、『週刊少年ジャンプ』に載りたいなと思って漫画を描いていて、でも残念ながらネームが全く通らず。その後『週刊少年マガジン』にお世話になることが出来て、その後に『週刊少年チャンピオン』での連載がはじまって。連載がはじまった頃はお客(読者)がほとんどいなかった(笑)。でもコツコツ、コツコツやってきて、今は増えてきたのかなと思います。最初は「売って欲しい」と他力本願に思うこともありましたけど、自分が描きたい事を熱く描いていると、読んでくれている人は必ずいるんだなということに途中で気付きました。

――なるほど。そんな中で先生が感じた『週刊少年チャンピオン』の魅力はどんな事でしょうか。

渡辺先生:ジャンプ、マガジン、チャンピオンと比べて、チャンピオンは一番自由な雑誌だと思います。ゆるいっていうのとはまた違うんだけど、「チャレンジするんだったら何やってもいいよ!」というやり方が、僕はすごくありがたかったです。他誌では一年先の予定までガッチリ決めなくてはいけない時もあったのですが、それは僕には向いていなかったなと思います。その時に面白いと思ったことをリアルタイムに漫画に反映したいと思っていて。今はネットが普及してYouTube等が当たり前になっていますけど、その時の空気をリアルタイムに反映出来るのが、週刊漫画雑誌の魅力だと思います。

――月刊連載だとリアルタイム感は週刊より少なくなってしまいます。

渡辺先生:後、単純な話、ネームを編集さんに見せた時に「面白い!」「この展開良いですね!」って褒められる回数が、月刊よりも週刊の方が多いじゃないですか。月に4回褒められるのって結構嬉しいんですよね(笑)。やっぱり描いていて楽しい!

――『弱虫ペダル』にはとても魅力的なキャラクターがたくさん登場しますが、ズバリ、先生はどうしてこんなに素敵なキャラクター描写が出来るのですか?!

渡辺先生:漫画家ってある意味人生の切り売りだと思っていて。悔しい、悲しい、辛いというマイナスな感情って本来ならは捨てたいと思うのですが、物作りの強い原動力となっていて。嬉しい、楽しいというプラスの感情と合わせて、たくさん”プール”出来ていたのかなと思います。その中で、「この人って嬉しい時どうする?」「悲しい時どんな感じ?」というのを細分化していくと、描きたいキャラクターが自然に出てくるんですよね。嘘の感情をキャラクターに乗せると、読み手って気付いちゃうんですよね。「あ、これは本当の気持ちじゃないな」って。なので感情の部分は何度もネームを直します。

――『弱虫ペダル』はアニメ、舞台、色々な形で世界中の人に愛されていて、ファンの方の盛り上がりが特にアツい作品だと思います。そういったファンの方々に対して先生のお気持ちはいかがですか?

渡辺先生:いやあ、本当にありがとうございます!!って感じですね。感謝の気持ちでいっぱいです。(人気に)火がつくまでに時間がかかった作品だと思っていて。アニメ化も30巻超えてからですし。でも、今こうしてアニメ、舞台、グッズやファンの方が描いてくださる絵も、愛されて広がってくれていることが嬉しいです。「たくさん遊んでください!」という気持ちです。キャラクターに対してワーワー語ることが幸せにつながってくれるのならば、僕も幸せです。今大学編を描いているのですが、話に新情報を入れた時に「これは皆の間で話題になるかな?」って思ったりもしていて、それって読者と僕とのキャッチボールだと思うんですよね。

――これからも『弱虫ペダル』の連載は続いていくと期待しても良いですか?

渡辺先生:先ほど、イベントで板垣(恵介)先生が「週刊少年チャンピオンが50周年と聞いたときは『100年後も関わる自分でありたい』と言おうとしたけど、とても約束できない。約束できるのは次の週のことだけ」とおっしゃって、会場からは笑いが起きましたけど、漫画家にとっては本当に切実な気持ちなんですよね。本当に漫画家にとって大切なのは来週のことだけなんですよね。来週面白い話が出せなかったら、魂を抜かれた様な物なので。なので「約束出来るのは次の週のことだけ」というのは本当に良い言葉だなと思いました。その週を繰り返していって、僕も60巻超えることが出来たので、本当にコツコツとした積み重ねだなとしみじみ感じています。

――最後に、先生は自転車に乗り続けられていると思うのですが、最近走って最高だった場所を教えてください!

渡辺先生:四国のカルストは本当に最高でした! でもとてもキツイのでトレーニングをしないと無理なんですけどね。景色が本当に素晴らしいので、自転車初心者の方や体力が厳しい方は無理せずぜひドライブでも(笑)、楽しんでいただきたいです。

――とても行ってみたいです! 今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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