ロングインタビュー:アキラ100%の熱い演技で号泣必至の映画『こはく』 監督が投げかける“本当の家族の優しさ”とは

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大橋:確かに父のことをより覚えているのは兄貴だし、そんな監督と井浦さんの意見を聞きながらも、僕は内心「これはヤバいぞ」と思っていました(笑)。現場に入ってからのほうが、物語の中での兄役の重要性がより増していましたし、自分が撮影前に思っていたよりも、もっと強く父に対する感情を持たないといけない役なんだと、心して撮影に挑みました。

──監督ご自身も3歳のときに両親が離婚し、母子家庭で育ったそうですね。この映画は監督の半生をもとに作られた自伝的な要素が詰まった作品だと知りました。

横尾:はい。たまたま僕の兄と父親の話をする機会があって、兄が父のことを「恨んでいるし、忘れない」と言ったことがこの作品をつくる出発点となっています。

でも、身内とはいえ兄の気持ちを勝手にほじくり返して映画にするのはどうかと、最初は覚悟ができていませんでした。撮影現場でも兄役の心情を突き詰めていくことから少し逃げようとしていたのですが、井浦さんにいろいろと指摘され、そこは避けて通れない、と。もちろん、映画を作るにあたって、僕の兄にも母にも実際に父のことをどう思っているのか、たくさん取材はしました。

──撮影が進んでいくにつれ、監督の気持ちにも変化はありましたか?

横尾:今回は僕自身も一緒にお父さんへの思いを探していく旅をしたような感覚でしたので、とにかく井浦さんと大橋さんと3人で話し合いながら撮影を進めていきました。一緒に作り上げていった感覚で、それがラストのシーンで爆発したのかなと。

クライマックスは「一発勝負のドキュメンタリー」だった

──お父さん役の鶴見辰吾さんとは、直前まで顔合わせをしなかったとか。

横尾:クライマックスで父と息子たちが再会するシーンは、この作品におけるカタルシスになるのは間違いない方向でした。父を探し回って再会するシーン撮影は、それだけで丸1日とっていましたが、その日の大橋さんの集中力や気迫は近寄りがたいほど。その大橋さんの様子を見て、鶴見さんとの撮影テストもやめて、一発勝負のドキュメンタリーとして撮ることにしたんです。

──試写を見た人たちも、ラストシーンはみな泣いていました。

横尾:僕もモニターを見ながら号泣しました。観客の心を動かすエンターテインメントをどうやって作るべきかを考えたとき、僕も自分の子どもから教えられることが多いのですが、何の計算もない笑顔や全力の泣き顔に、大人も一瞬にして心を動かされる。テクニック云々ではなく、まっすぐな“熱量”をどう映像に出していくのかが自分の仕事です。そういう意味では、あのシーンは大橋さんの熱量がちゃんと映像に残った結果なんだと思いました。

大橋:そう言っていただけると本当に嬉しいです。もちろん、あのラストシーンの重要性は理解していましたが、自分にそれがうまく表現できるか、とにかく不安で仕方がないという数日間を過ごしていました。

普段から感情の起伏をすぐに表現できるようにトレーニングしているわけではないので、事前に気持ちをパンパンに溜めておかないと本番で出せないと思いました。コップに入った表面張力の水のように気持ちを口切一杯溜めて、ちょっとでもこぼれたら終わりという状態で、あの日の現場に入りました。

僕も章一と同じように定職につかず、20代後半の頃は役者を目指しながらもニートみたいな状態の時期がありました。いつも家にこもって、月に何回か思い立ったように日雇いのバイトに行って……。そんな鬱々とした日常も撮影をしながら思い返していました。そんな自分なりの気持ちも少しずつコップに注ぎながら、ラストシーンの撮影に持っていった感じです。

横尾:僕は、大橋さんならやってくれるだろうと疑っていなかった。2週間という短い撮影期間でしたが、終始、仲間と作っていくという空気感でやれたのが良かったんだと思います。

撮影するなかで、「優しさの多様性」を突きつけられた

──『こはく』を見た人たちに、家族の在り方をどう感じてほしいですか?

横尾:最初は「悲しみを知っている人間は優しくなれる」というのがひとつのテーマでした。優しさを通じて家族の在り方を模索しようと走り始めたのですが、次第に優しさの多様性みたいなものを突き付けられた気がして……。

覚悟を持った強さがないと、優しさが人に大きな傷を与えてしまうこともある。この作品を通じて、自分もそのことを教えられました。結局、家族の“愛の強さ”を皆さんに感じてもらえたら嬉しいです。

──大橋さんにとって、家族とはどういうものですか?

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