中古マンションを買うときには修繕積立金にもご注目

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中古マンションを買うときには修繕積立金にもご注目

マンションといえば十数年ごとに大規模修繕が必要となりますが、ご存じでしょうか。この大規模修繕ではまとまった金額がかかるため、それに備えて積み立てが必要となります。中古マンションを買うときの修繕積立金について確認すべきことを、さくら事務所会長の長嶋修氏に聞きました。

修繕積立金が不足する原因とは?

マンションの「修繕積立金」は、所有者全員の積立貯金のようなもの。これを原資として将来の大規模修繕に備えるわけですが、早ければ2回目、遅くとも3回目には多くのマンションで修繕積立金が足りないといった事態が生じています。

もし不足していた場合、所有者各々が数十~100万円単位の一時金を拠出して修繕できればいいのですが、常に全員が足並みをそろえて一時金を出せるケースというのは非常にまれ。したがって、管理組合でローンを組んで大規模修繕にかかる金額を支払い、修繕積立金をアップさせることでローン返済をしていく手があるのですが、これもうまくいかないことが多いのです。当初は毎月5000~1万円程度だった修繕積立金がいきなり3万円にアップするなどというのは、家計によっては簡単に受け入れることができない場合があり、管理組合総会で否決されてしまうことが多かったりします。

そうなるとせいぜい、今ある手元資金でできることだけをやるか、全く何もしないといった選択とならざるを得ず、建物はどんどん陳腐化。購入・賃貸予備軍にも魅力的な建物になりえず、資産価値を下げることにつながる上、適切な修繕をしておけば本来100年以上長持ちするところ、建物の寿命を一気に短くしてしまうのです。(画像/PIXTA)

(画像/PIXTA)

なぜこのような負のスパイラルに陥るのかといえば、それは「新築マンション販売時の修繕積立金設定」にあります。新築マンション購入時には「販売価格や諸費用」のほか「住宅ローン利用の場合は毎月返済額」「管理費」「修繕積立金」などが提示されます。購入者からすると、毎月家計から出ていくこれらの総額は少ないに越したことはありません。そこで住宅ローンについては極力低金利の金融機関やローン商品を探します。一方で管理費や修繕積立金については購入者に選択の余地はなく、あらかじめ売主に提示された額を容認するかどうかといった選択しかありません。

売主の立場からみれば、管理費は極力高めに設定しておきたいのです。というのも、ほとんどの新築マンション販売のケースであらかじめセッティングされているのは、売主系列の管理会社。つまり管理費は、引き渡し後もグループ会社に毎月流れてくる売上でありその一部は利益です。一方で修繕積立金は、所有者で構成する管理組合がプールする貯金で、売主には直接関係のないものですから、どうしてもここを極力低額にして、ローン・管理費・修繕積立金の合計額を下げることで購入のハードルを下げる、つまり売りやすくするといった意図があります。

修繕積立金の適切な金額は?

国交省は「新築マンションの購入予定者に対し、修繕積立金に関する基本的な知識や修繕積立金の額の目安を示し、分譲事業者から提示された修繕積立金の額の水準等についての判断材料を提供する」として、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を公表しています。それによると、一般的なマンションなら、専有面積平米当たり200円程度の積立が適切です。例えば70平米のマンションなら適正な毎月修繕積立金額は1万4000円。この水準の積立金を入居直後から「毎月均等」に続けていればおおむね問題ないでしょうというわけです。タワーマンションなど、修繕によりお金のかかるものはもっと必要です。「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要より)

(「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要より)

とはいえガイドラインはあくまで指針に過ぎず、強制力もありません。現在でも多くの新築マンション販売現場では、積立金方式は「毎月均等」としているところはほとんどないのは前述したとおりです。多くのマンションでは「段階増額積立方式」または「一時金徴収方式」であり、徐々に積立金が値上げされたり、一時金を徴収されたりします。

こうしたからくりに気付いて修繕積立金方式を変更したマンションと、そうでないマンションとが今、中古住宅市場において、同じ価格水準で売買されています。これは根本的に非常におかしなことで、先進国の中にあって日本だけが特有といえます。修繕積立金が潤沢で今後値上げや借金をする必要がなく、したがって建物の寿命が物理的にも経済的にも優れているマンションと、修繕積立金が枯渇し今後、値上げをするか借金をするか、あるいは何もできずに陳腐化し、寿命も短くなるであろうマンションとでは本来同等の資産価値をもち得るはずがないのですが、これらが同列に扱われているのです。

修繕計画やマンションの課題は、管理組合の議事録などで確認を

(画像/PIXTA)

(画像/PIXTA)

まずは「総会や管理組合の議事録」「長期修繕計画」などの閲覧を求めましょう。こうした議事録には、そのマンションで繰り広げられているさまざまな課題が満載。例えばどの程度の管理費・修繕積立金滞納があり、それに対してどのような対応をしているか、駐車場や駐輪場、ごみ置き場、廊下、そして外壁など共用部の使い方やコンディションに何か課題があるか、今後の修繕計画はどのようになっているかなどの事情が記載されているはずです。

修繕積立金滞納の全くないマンションはむしろ少数派ですし、多くの人が住んでいる以上、共用部の使い方に課題が全くないマンションもむしろ珍しい部類。経年によって建物が劣化していくのも当然のことです。要はこうした、マンションの宿命ともいえる各種の課題について、所有者で構成するマンション管理組合がどのような姿勢で、具体的にどんな取り組みをしているのか、知ることが大事なのです。

また「長期修繕計画」を見れば、今後の建物修繕予定が分かるのはもちろんのこと、今後の積立金負担も分かります。多くのマンションでは、新築時に売主が策定した長期修繕計画をそのまま変更せずに使用していることが多いのですが、たいていの場合、新築当初から当面の間は修繕積立金を低額に設定、5年目・10年目・15年目などに一気に上がったり、多額の一時金を徴収する計画となっています。

その上で分からないことがあれば不動産仲介会社を通じて管理組合に尋ねるか、判断に迷うことがあれば第三者の専門家に見解を聞くのもいいでしょう。こうしたことを踏まえながら買うか買わないか、いくらで買うかなどの意思決定をするべきでしょう。

ただしこうした内部書類については、マンション購入者などの第三者に閲覧させることは義務ではないため、あくまで任意で閲覧をお願いすることになります。言い換えると、閲覧に応じるマンションはその情報開示姿勢だけで好感がもてるということです。自らのマンション管理運営に自信があるとか、情報開示の重要性を理解しているといった組合員が多いからこそです。

ではこうした書類を確認できない場合はどうすればよいか。(画像/PIXTA)

(画像/PIXTA)

まずは「見た目」から。中古マンションを見学する際には、いきなり室内には入らず、まずは「共用部」をじっと見つめてください。例えば「外壁」。昨今のマンションはタイル張りが主流ですが、ざっと見渡してみて、タイルが剥がれているところ、あるいは浮いているようなところはないでしょうか。タイルは落下すればたちまち凶器となり得るうえ、このような状況を放置していれば躯体そのものが長持ちしません。もしタイル落下、浮きなどの症状が確認できたら次は、マンション管理組合がその状況を把握しているか、またそれについてなんらかの対処を行う予定があるかを確認しましょう。これは、不動産仲介担当を通じて管理組合に確認してもらってもいいですし、管理員がいれば尋ねてみてもいいでしょう。

このことは、廊下や階段などの共用部も同じです。経年によって徐々に劣化していくのは建物の宿命ですが、一定の幅や深さがあるひび割れや、一定量以上の白いカルシウム成分が浮き出てくる白華現象、コンクリート内部の鉄筋が水に触れたことで錆び汁がしみだしている現象などを長らく放置しておくと、それは建物内部を傷め、時間が経過するほど修繕コストは膨大になるうえ、着実に寿命を縮めていくことになります。

そしてエントランスまわりの清掃状態やポストまわりの整理整頓具合はどうでしょうか。こうしたところが雑然としているのは、管理員の仕事が行き届いていないからですが、背後にはそれを容認している管理組合の存在があります。マンション管理についてその程度の無関心さだというわけです。このことは、駐車場や駐輪場、ごみ置き場などの状態にも言えます。掲示板に数か月も前の古い情報が貼られている、雑然と貼られている、貼ったものが破れているなども組合運営の質を推し量れます。

新築マンションに比べるとさまざまな選択肢がある中古マンション。管理や修繕の状況も一つ一つ違います。選ぶ際には間取りや立地など分かりやすいものに目がいきがちですが、長く住むためには、修繕積立金についても注目してみましょう。
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