【日帰りで山歩き】駅からスタート。首都圏近郊の「低山の旅」5選
新緑が気持ちいい季節。こんな季節には、街中のコンクリートで固められた地面ではなく、自然が息づく大地を踏みしめたくなるもの。
今回は、低山トラベラーの大内征さんが「列車で行ける首都圏近郊の低山」を紹介。日帰りで楽しめる低山歩きは、週末は自堕落に過ごしてしまいがちな人にとっても、運動不足になりがちな人にとっても、新たな発見がありそうなアクティビティだ。
週末の遊びの選択肢を広げる、低山歩き
低山のとりこになってからというもの、歴史や文化を訪ねて歩く「山旅」が楽しくて仕方ない。
国土の7割が山地といわれる日本だし、大都会・東京でさえ西側3分の2には丘陵地と山地が連なるのだ。低山にはその土地の暮らしや歴史文化が色濃く残っているから、そういうことに触れながら山を旅するのがとても楽しい。
特に関東は交通網が発達しているので、都市と高山をつなぐ「低山里山」に比較的アクセスしやすい。首都圏ならなおさらのこと、列車を利用して低山歩きをするには抜群の環境だといえる。山と列車を味方につければ、週末の遊びのフィールドは飛躍的に広がるというわけだ。
低山歩きに必要なものは……
低くても山は山、最低限これくらいのものは用意しておきたい。買い物も登山のうち。楽しんで装備も買いそろえよう。
・体にフィットするザック
・足元を守ってくれる登山用の靴
・レインウェア
・速乾系の衣類(綿ではなく化繊のもの)
・水
・食べ物(必要に応じて)
・地図
あとは、ちょっとした冒険心と好奇心があれば準備はOK。これから登山を始める人はもちろんのこと、もう始めている人にも、新たな視点で山を楽しむヒントになりそうな、日帰りで楽しめる厳選5スポット。早速ご紹介しよう。
1.JR青梅線・御嶽駅×御岳山
武蔵御嶽神社の拝殿前より東京方面を望む
東京の山岳信仰に触れられる山
東京都の青梅市にある御岳山は、都心から近いにもかかわらず歴史物語も山里文化も深イイ、関東屈指の霊山だ。JR御嶽駅から歩くもよし、バスとケーブルカーを駆使して楽をした分を山上での滞在時間に充てるもよし。
山の上には「天空の町」があり、快適な宿坊やノスタルジックな商店街だってある。そこに暮らす人々の営みに触れることができるのが、御岳山の楽しさなのだ。
武蔵御嶽神社の奥にある大口真神社(おおくちまがみしゃ)。迫力ある狛オオカミがお出迎え
御岳山929mの山頂に鎮座する武蔵御嶽神社には占いの神様が祀られているから、おみくじを引くのが気分だろう。その奥に佇む大口真神社には神格化されたニホンオオカミが鎮まり、迫力ある狛オオカミが出迎えてくれる。
東京とは思えないほど深い渓谷に、歩きやすい遊歩道が整備されている
苔むす渓谷道「ロックガーデン」は歩きやすく、初心者におすすめだ。新緑の季節になるとはじけるような緑一面の苔ワールドに圧倒される。深く刻まれた渓谷や滝を目の前にするたびに、東京とは思えぬ大自然に身心を満たされる。何度歩いてもいい道なのだ。
2.伊豆箱根鉄道駿豆線・大仁駅×城山
溶岩がそのまま山となった城山
伊豆半島の付け根を一望できる低山
海の印象が強い伊豆半島だが、その美しさの半分は山でできているといえる。
伊豆はもともと火山からできた土地だから、火山由来の山が多い。マグマが火道(かどう)の中で冷え固まり、風化侵食によって地表に現れた岩山のことを「岩頸(がんけい)」という。この城山は代表的な岩頸で、ゴツゴツした姿が印象的だ。
城山の絶壁に挑戦するクライマーたち
ほぼ垂直の南壁は、この山の象徴だ。よく目を凝らすとクライマーたちが登っており、思わず声援を送りたくなる。山頂からは富士、箱根、天城の山々が一望でき、蛇行する狩野川と町の様子を手に取るように眺めることができる。地形に興味のある人ならとりこになるような絶景が、そこには広がっている。
3.JR東海道本線・湯河原駅×幕山
梅で知られる幕山の山容。花に囲まれた幕のような岩が山名の由来
源頼朝が再起を図った開運の山
温泉で知られる湯河原町の名低山、幕山。麓には梅林の素晴らしい景観が広がる。山の中腹に「幕」のごとく立ち並ぶ「幕岩」は山名の由来といわれ、ロッククライミングの練習風景が名物だ。
登山道から眺める真鶴半島
626mの山頂からは雄大な相模湾の絶景を一望できるが、真鶴半島は特に印象深く目に焼き付く。
この山は、かつて源頼朝が石橋山の戦いに敗れて逃走した山域で、その後再起を図って鎌倉幕府をつくるに至った「開運」の山。歴史的な見どころが点在するのも楽しい。
ちなみに、この山は火気の使用が厳禁なので、お湯は保温ボトルで持っていくのがマナー。
4.JR内房線・岩井駅×伊予ヶ岳
房総のマッターホルンの異名をとる鋭い山頂
房総のマッターホルンで絶景ハイク
低山王国・千葉で、唯一「岳」がつく伊予ヶ岳。切り立った断崖絶壁を麓の田んぼから見上げると迫力があり、ロープを駆使して登るアスレチックコースが楽しい。南北にピークをもつ双耳峰で、特徴の際立った山だ。
伊予ヶ岳の山頂から富山を望む
急登(きゅうとう)を乗り越えた336mの頂からは、隣の「富山(とみさん)」とその向こうの「富士山」が立ち並ぶ構図で、絶景に思わず歓喜の声を上げてしまう。
ちなみにこの「富山」は、勧善懲悪の冒険ファンタジー『南総里見八犬伝』の舞台となった山。セットで歩くのもよいだろう。
切り立った岩の頂には、素晴らしい絶景が待っている
安房国(あわのくに)を建国した天富命(あめのとみのみこと)が、阿波忌部(あわいんべ)一族とともに伊予ヶ岳一帯にさまざまな伝説を残しているが、故郷・伊予国にある霊峰石鎚山を思って、この山を「伊予ヶ岳」と名付けたという。そんな小話も、低山ハイクに花を添えてくれる。
5.JR両毛線・富田駅×大小山
大小山の山容。天狗に由来する「大小」の看板が印象的だ
文句なく楽しい、雨乞いの低山
栃木県足利市の大小山(だいしょうやま)は、313mの妙義山と282mの大小山を総称してそう呼ぶ。反時計回りに周回するコースは、感動が大きくおすすめだ。妙義山の山頂は360度の大パノラマで、この絶景にはガツンとやられる。
妙義山の頂から下山するハイカーたち
隣の大小山までは崖のような勾配の強い道を下り、山麓の阿夫利神社まで下りると、ゴールはもう目の前。ちなみに、ここの「阿夫利」には、本家・相模大山と同様に、大天狗と小天狗が祀られている。それが「大小山」の由来であり、山上の看板の正体だというわけだ。麓の里人や旅人は、この看板を目印に遠くから遥拝し、無病息災を願ったそうだ。
「通える低山」を暮らしに取り入れよう
さてさて、挙げればきりがない、おすすめ低山。筆者は年間100座ほどを歩くようになってもう何年にもなるけれど、身近にあって手軽に楽しめる「通える低山」をひとつでも持っておくことは、身心のチューニングにとてもよい。列車で手軽に楽しむ日帰り低山ハイクを暮らしに取り入れて、ぜひ日本を、そして地元を、もっともっと楽しみたい。
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