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Apple Arcade は我々ゲーム開発者に何をもたらすのか?(実践ゲーム製作メモ帳2)

 
Apple の意志。良質な有料ゲームが再び復権するか?

apple

 Apple のリリースを見る限り、それら良質なゲームに対する Apple の本気度は確かだ。著名なタイトル、著名なクリエイターに支援し、100を超えるゲームのラインナップをローンチに備えている。市場原理によって歪な形に進んでしまったゲーム業界全体を是正し、正しい姿に戻そうとしているのかもしれない。あるいは単純に広告モデルのゲームは Apple にとって全く旨味がない※6ので、根こそぎ消したいのかもしれない。

 Apple の意志を信じるなら、ゲーム開発者たちは自らを蝕んでいた広告やサーバ通信の実装から解放され、その労力をゲームの本当に面白い部分や、コンテンツのボリュームに注ぎ込むことができるだろう。そして、多くのユーザの心に残るのはそうした閉じた世界の絶対的な体験なのである。

 

Apple Arcade のデメリット

Apple Arcade のデメリット

 しかし、そう楽観ばかりしていては居られない。Apple は所詮1企業であり、神でもなければ慈善事業でもない。Apple Arcade の仕組みが要は囲い込みであることは誰が見ても明らかだし、現状の Appstore を見る限りその絶大な力は必ず良くない影響を開発者たちに及ぼすだろう。

 
プラットフォームが力を持ちすぎる。

 はっきり言おう。Apple Arcade の登場によって、Apple は Apple Arcade 以外のゲーム市場を維持する理由がなくなる

 何故なら、Apple Arcade は既存のゲームマーケットと競合するもの※7であり、また Apple Arcade の月額がいくらになるかは分からないが、Appstore の平均的なユーザが月にその3.33倍※8の価格のゲームを購入していない限り、Appstore ではなく Arcade のユーザになってくれたほうが圧倒的に得だからだ。

 Apple はあの手この手で Arcade に加入させようと迫ってくるだろうし、優良なコアゲーマーから奪われていくのでメーカーも Arcade でのゲーム出品を検討せざるを得ない。サブスクリプションモデルではコンテンツがどれほど増えようと Apple のコストは増えないし、メーカーの売上はどんどん減って行くので、かくして巨大な Winner と大多数の Loser という構図が見事に完成する。

 
選ばれなかったゲームはどうなるのか?

 Arcade 市場原理に即さない買い切りモデルであったがために埋もれてしまった優良なゲームを救うのは良い。とても良い。

 しかし、その救いの手は何人まで差し伸べられるのだろうか。蜘蛛の糸の耐久度はどれほどだろうか。そこから滑り落ちてしまった── Apple Arcade に加入できなかった買い切りゲームの販売数の落ち込みは想像に難くない。だって、優良なゲームは全て Arcade にあるし、毎月供給されるし、Arcade 以外にも無料ゲームはあるだろうし……わざわざ金を払ってまでこの枠組みの外にあるゲームを買うだろうか。なんたって、時間は有限なのだ※9。

 また、サブスクリプションモデルの下では価格も均一化される。どうしても大人の事情で1000円、2000円に設定したいゲームはあるだろう。しかし、月額サービスより高い値段の単一ゲームをユーザが購入するだろうか。それらは軒並み壊滅してしまう可能性すらあるのだ。

 
ゲームの価値は本当に維持されるのか?

 たとえ500万本売れているゲームが真横にあっても、あなたの1000円のゲームが10本売れれば1万円だ。100本売れたら、副業くらいにはなるだろう。しかし、サブスクリプションモデルでその希望は薄い。

 既に世の中に存在する似たようなモデルがカラオケボックスである。これは歌われた回数によって著作権料の分配額が決まるものの、全国で一年の間にたった一回歌われた曲に著作権料を支払うのはコストが高いため、足切りラインが存在する※10。ある程度歌われないと、一銭も入ってこないのである。

 サブスクリプションモデルにおいて、コンテンツの価格は極端に下がる。市場原理だけでドライに見れば、Apple や Google にゲームの価格を維持する動機はなく、100円でも安い方がいいし、今回のサブスクリプションモデルでもコンテンツとユーザ数の増加が利益を最大化する。Apple Arcade の思想としては良質な有料ゲームのマーケットを築くことだし、ユーザもそれを望んではいるが、思想はあくまで思想であり、ルールではない。現状の Appstore が内包する酷くクオリティの低い作品群を見ると、Arcade がそうなるのも時間の問題かもしれない。

 そうなった時、Apple Arcade の構造は不可逆である。ゲームの価値は毀損され、元のマーケットも壊滅状態である。メーカーが一斉にボイコットするか? 昨今のマーケットの取り分30%への反抗の流れを見る限り、腰は大分重そうだ。

 
業界の外にゲームが広がっていくか?

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