犯罪者インタビュー:「ヤバい副業を行う生コン業者」に話を聞いてみた
どうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。
今回、お話を聞かせていただいたのはJさん(52歳)。彼は、日勤、夜勤含めて平均労働時間17時間、休日も返上してミキサー車を転がしているという生コン業者です。超ブラックな労働条件の割りに、毎月の給料も低いと言う彼。
ストレス解消に風俗とギャンブル、酒に溺れ、借金まみれになってしまった彼はある裏仕事に手を染めていました。一体どのような裏仕事を行っているんでしょうか? ヤバい副業の話をお聞きください。
生コン業者の仕事とは?
丸野(以下、丸)「まずは基本的なことをお願いします。いつくらいからこのお仕事をはじめられたんですか?」
Jさん「22年前くらいに、先輩に誘われて生コン屋に入ったんですわ。勢いのある社長で、他の生コン屋の仕事もブン取ってくるから、とにかく現場が多い。寝る間も惜しんで働くと中卒でも32万円くらいにはなったね」
丸「いいですね。その代わり、拘束時間が長いと」
Jさん「生コンを流し込む現場っていうのは、ホンマにテキトー。家の地鎮祭終わってから、立ち上げ(土台作り)するわけ。社内にある製造プラントに入って、セメントと混和剤、骨材、砂や水などを混ぜた生コンをトラックアジテータ車(※ミキサー車)に入れる。空気に触れて固まるのを防ぐため、ミキサーは回しながら工事現場まで運搬。指定された場所でレバー操作して生コンを排出するって簡単な仕事。コンクリポンプ職人の手とポンプ車によってポンプ圧送され、打ち込まれる(※流し込まれる)んよね。現場はいろいろ。工務店から依頼のあった一軒家から、公共施設の建設現場まであるんですわ」
丸「どのくらい流し込むんですか?」
Jさん「一軒家で平均12リューベ(立米、1000リットル)、10階建ての高層団地なら500リューベくらいの生コンをベース(基礎部分)に打つね。ただ4トン車やと、2リューベの生コンしか積めへんから同じ道の往復が面倒なんですわ。同じ作業の繰り返し。楽やけど、とにかく暇」
丸「丁寧な仕事をされていると思いますよ」
Jさん「ぜんぜん。みんな知らんやろうけど、土台には、おれらが飲んだり食うたりしたジュースやらコンビニ弁当の容器はベースに投げ捨てられてるよ。お父さんが家族のために一生懸命建てた夢のマイホームの土台にまさか『ボリューム海苔弁当』が埋まってるなんて、誰も知らん。それに、生コンの配合は高架の橋げたとか用途によって水の量を少なくするんやけど、ウチは逆に水増しして流し込んだりしてるし、鉄筋が腐食する塩分含んだ海砂も使うこともあるよ」
丸「それって欠陥コンクリートですよね。マズいですよ~」
Jさん「全部とは言わんけど、そんな業者ばっかりですわ。睡眠時間4時間でストレスが溜まりまくるから、みんなハンパない遊びグセがある。飲む、打つ、買うはお決まりのコースやね」
丸「ギャンブルとかすごそうですね」
Jさん「パチンコ、競馬、競輪、競艇は当たり前。組関係がたてているバカラ賭博場にまで顔を出す始末ですわ。酒豪ぞろいですぐ女に手は出すし、風俗にも通い詰めて家にはまともに帰ることはないんちゃうかな。バツサン、バツヨンなんてのも多いね」
ビニール袋に入った現金の束を固める
丸「ところで、Jさんはどんなヤバい副業をされているんですか?」
Jさん「浪費癖がある先輩たちがなぜか金を持っとる。こら、おかしいなと思ってたら誘われたのが建築・建設業界に根付く副業をやってるみたいで。オレもそれからはじめたんですわ。現場の監督たちと一緒に、脱税した現金の束を土台に埋めて固めたり、ヤクザが間違って殺しちゃった腐った死体を埋めたり、まぁそんなところやね。ウチは会社ぐるみで副業をやってますわ。一軒家のベースは浅いから屍体は埋められないとか、最低でも3メートルは掘り下げられた現場が好ましいとか、解体したときでも白骨化した遺体はコンクリートと一緒にバラバラになるとか、先輩からいろいろと教わりましたわ」
丸「印象深いヤバい副業を教えてください」
その瞬間、眼が合った
Jさん「道路の下水管工事で、地下10数メートルまでボーリングで掘った穴に2人の男に両脇を抱えられてギャグボール(※SMなどで用いられる口用の拘束具)をかまされた男が背中を押されて、【ひゅん】と吸いこまれていったのが脳裏に焼きついてるね。怯えた目をした男と一瞬、眼が合ったんやけど、あの男が何であんな目に遭ったのかはわからん。すぐにシュート(※セメントドラムの延長口)からセメントが流されていった」
丸「それは……。そんな現場に立ち会って、いくらくらいもらえるんですか?」
Jさん「見張りをしているだけで、ギャラ10万。眼をつぶると、あの男の顔を浮かんでくる。それと、住宅地に土建業者と組んだ硫酸ピッチの埋め立て作業を2件立て続けにやったんやけど、山を拓いて掘った穴に軽油密造業者が持て余した硫酸ピッチを埋めたいと……。それで、ガスが漏れ出ないようにコンクリ詰めにして埋めたこともあるよ。そこは新興住宅地として地均しして整備するらしい。不法投棄はよくやった」
丸「後々問題になるケースですよ、それ」
Jさん「怖かったのは大型ショッピングモールの着工に入ったとき。そこには産廃を埋める仕事やったんやけど、ちょっと毛色が違った。どっから回ってきたのかわからん代物らしい、絶対触るな、絶対近づくなと言われてたんですわ。コンクリートブロックが敷地に入ってきて、バンでやって来たのは、10代、20代の若者たち。高収入バイトかなんかで集められてきたみたいでした。ブロックを数人の手で運んでて。バンを降りて、外で様子を窺っていたオレのところに、先輩が血相変えて駆け寄ってくる。それで“おい! とりあえず車に乗れ! 被爆するかもしれん”て。何を埋めたのか……あれは怖かったですわ」
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いかがでしたか?
一線を越え、引き返せないところまで関わってしまったJさんの元には、このようなヤバい副業が半年に一度は舞い込んでくるそうです。
何もかもがオープンになったこの世の中でも、知っちゃいけない、知られちゃならないものがあるということです。
最後に彼はこう締めくくりました。「オレがこの副業を続けているのは、“絶対にバレない”という自信があるからですわ」
(C)写真AC
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