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ロシア、米国、中国、欧州連合:列強入り乱れるイタリアと『世界家族会議』(Passione)

彼らの主張する諸々が、極端に現実離れしていることを常々不思議に思っていましたが、ここにきて、『同盟』メンバー、ウルトラカトリック、極右グループ関係者たちがこぞって出席する、ヴェローナで開催される第13回『世界家族会議』の真相が続々と明らかになるにつれ、「えええ!そんなに大きな国際レベルの話だったの!」と仰天したわけです。ちなみにヴァチカンは、『世界家族会議』からはかなりの距離をとっており、教皇も「本質的には、(カトリックの教義として)間違っていないが、メソッドに問題がある。宗教は政治に距離をとるべき」という主旨の発言をし、逆にウルトラカトリックたちは、現在の教皇と反目していると言われています。

宗教原理主義者たち(と国際政治)の祭典『世界家族会議』

わたしが『世界家族会議』の名前をはじめて知ったのは、『同盟』と複数のウルトラカトリックのグループに、「ロシアからルーブルの雨が降り注いでいる」という、レスプレッソ誌のスクープでした。もちろん、どうしても原理主義を主張したい、というのであれば、それは個人やグループの自由であり、尊重されるべきですが、政治家たちがその動きに加担し、政治目的で多額のお金が動いているとなると、話は別です。そこで、レスプレッソ紙の記事を読んだあと、毎年世界のどこかで開催されている『世界家族会議』という集会は、実は一種の政治・経済ロビーのような役割も果たしているのかもしれないな、とは考えていた。

中国主席がイタリアを去ってからというもの、ヴェローナで『世界家族会議』が開催される日が近づくにしたがって、伝統的な男女から構成された自然(?)な形の家族しか認めないという、彼らの有り様に反対するジャーナリストや左派政治家たちが、「マスキリスト、ミソジニー、ホモフォビア、セクシズム、中世紀の集会」と形容して、『会議』を攻撃。「中世の何が問題なんだ。中世には現代よりも深い知恵があったのだ」と反論する『会議』関係者や賛同者たちと、TVの討論番組などで盛んに議論を繰り広げた。しかし双方の話がまったくかみ合わず、何か腑に落ちない、平行線のまますっきりしない議論のように感じられました。

中世

 
▶︎だいたい『世界家族会議』とはいったい何なのか

そこでもう少し、『世界家族会議』の内容を知りたい、と考え、イタリア語や日本語ネットを逍遙していたところ、なんと、そのものズバリ。『リベラルを潰せー世界を覆う保守ネットワークの正体』(金子夏樹著/新潮新書*1 )という、日本で出版されて間もない本に出会った。Kindle版で一気に読ませていただきましたが、頭の中でモヤモヤしていた事柄が、この本のおかげで、だいぶん整理されたように思います。

*1:「リベラルを潰せ ~世界を覆う保守ネットワークの正体 (新潮新書) 」2019年1月16日『amazon.co.jp』
https://www.amazon.co.jp/dp/410610797X

『リベラルを潰せ』には、ソ連崩壊後、ロシアの社会学者アナトリー・アントノフと米国の社会学者アラン・カールソンの協力による、『世界家族会議』1997年創立の動機から、福音派などの米国宗教右派、ロシア正教を核として、米国、ロシア、欧州各国、そしてもちろんイタリアの、現在の政治における保守・右傾化の要因となった宗教思想の構造が明瞭に描かれています。

最近はイタリアの国営テレビのインタビューに登場するまでに市民権を得たスティーブ・バノン、以前から時々イタリアメディアに登場していた「プーチンのラスプーチン」と呼ばれる哲学者、地政学者のアレクサンドル・ドゥーギンの立ち位置も明らかになった。現在の日本を俯瞰するためにも、興味のある方にはぜひ、読んでいただきたい本です。

なにより『リベラルを潰せ』を読んで「なるほど!」と膝を打ったのは、ヴェローナの第13回『世界家族会議』にスピーカーとして登場した『同盟』のマテオ・サルヴィーニが、そもそもこの会議の常連だったということでしょうか。イタリアでは当初、「結婚しないまま、ふたりの女性それぞれに子供がいるマテオ・サルヴィーニは、男女による伝統的な家族しか認めない『世界家族会議』に、モラル的にはほとんど関係ないはずなのに、なぜ出席するのだろうか。きっとウルトラカトリックたちの『票』が欲しいからだろう」ぐらいの評価でしたが、過去からすでにこのロビーに繋がっていたわけです。

確かに『同盟』は、ジョージ・ソロスがNGOと共謀し、難民の人々を欧州に送り込んでいるという「陰謀説」をハンガリーのヴィクトール・オルバン同様にSNSなどで盛んに流し、アンチ・ソロスを訴えていました。しかしこの「陰謀説」に関して、インターポールもかなり綿密に長期に調査したそうですが、ソロスがNGOと共謀して、難民を欧州に送り込んでいるという証拠は今のところ何ひとつ見つかっていません。

さて、ソ連崩壊後、共産主義VS.資本主義という対立軸が消失して久しい現在、米国の福音派、宗教右派総動員でトランプ大統領を勝利に導いたストラテジスト、スティーブ・バノン、ロシア正教と強く繋がるロシアのストラジストと言われるアレクサンドル・ドゥーギン、そしてイタリアのウルトラカトリックたちが新たな対立軸として構成するのは、リベラルに対抗する新たな(古色蒼然とはしていますが)イデオロギーなのだそうです。

イタリアでは『リベラル』といえば、たとえばベルルスコーニ元首相を代表とするような自由経済主義(ネオ・リベラリズム)を表現するときには使われても、『思想』として女性たちやLGBTの人々、そして難民の人々の権利の保護を訴えるのは、共産主義における68年の労働者と学生の蜂起、77年の大規模な学生運動の流れを汲む『中道左派』『左派』『極左』という感じでしょうか。そういえば、もはや純粋な思想、あるいは政党としては、イタリアのどこにも存在しないにも関わらず、マテオ・サルヴィーニが事あるごとに共産主義者を目の仇にするのは、共産主義の崩壊以後、困窮と堕落に陥った「思想」への悔恨に基づく、プーチン大統領の反共姿勢に、おおいに共感しているからでしょう。

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