ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう
体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方
ガジェ通制作ライブ
→ガジェ通制作生放送一覧

ロシア、米国、中国、欧州連合:列強入り乱れるイタリアと『世界家族会議』(Passione)

イタリアが『トロイの木馬』になる、と脅した欧州連合と米国

今回イタリアー中国間で取り交わされた調印は、あくまでも『覚書』であり、法的拘束力はない、と強調されていますが、それでもトリエステ、そしてジェノバ(そしておそらくパレルモもなんらかの形で関わるのかもしれません。唯一ローマ以外に選ばれた、中国主席パレルモ訪問に関する情報は、トップシークレットだそうです)という、今は閑散としていても、歴史ある港を、ニュー・シルクロード『海路』の終着地点として中国に解放することは政治的決断でもあり、調印前には、欧州連合も米国も戦々恐々と毎日のように懸念を表明。いったんはイタリアが孤立した状況に陥ったようにも思えました。

「スリランカ、マレーシア、そしてギリシャの例があるじゃないか、イタリアも港のインフラ整備のために、中国から多額の借金を負い、返還不能に陥って、やがて実質経営権を奪われるかもしれない」そう日本でも報道されているようですが、ニューヨーク・タイムス紙もワシントン・ポスト紙も次々にイタリアの決断に釘を刺す記事を掲載しています。

アフリカ、中近東にも手が届く位置にある、地政学的な要所である欧州の玄関口、イタリアの港を確保することは、中国の『一帯一路』プロジェクトにとって、またとない好機には違いなく、イタリアにとっては欧州連合に強いられた緊縮政策以来、みるみるうちに悪化した財政状況(2019年は成長率0%、あるいはリセッションの可能性もあり)を打破するため、「メイド・イン・イタリー」ブランドを中国にガンガン輸出して起死回生を狙いたい、というところでしょうか。誰も予想できなかった安定したスピードで世界の覇者に躍り出ようとしている中国の主席を、イタリアの各メディアは「世界で最も強靭な権力を持つ人物」とも表現しました。

もちろん、イタリアを含む欧州で、「サイバーセキュリティリスクに関する情報共有」という条件つきで検討されている、ファーウェイ5G導入予定には、データの安全性に関してかなりの抵抗があり、『同盟』のマテオ・サルヴィーニは、2019年から徐々に導入予定の5Gに関して、防衛における不安を何度も示唆しています。しかし、だからといって現在の4Gデータが安全、ということではありますまい。スノーデン氏の警告も然り、各種アプリがいつの間にか個人情報を収集していることは、もはや周知の事実です。

ともあれ、中国国内で酷い抑圧にさらされ続けている少数民族の人々の『人権』に関するニュースは、最近のイタリアのマスメディアからは完全に抹殺されてしまいました。「結局世界は『人権』より『文化』より『経済』なんだね。中国という国は、満面の笑みを湛えながら、美味しいお菓子をたくさん携えて訪ねてくるんだ。イタリアが騙さていないといいけれど」と忸怩たる思いを抱える、そもそも亡命者としてイタリアへやってきて、現在は市民権を持つ少数民族の友人が話していたことをも、ここに記しておきたいと思います。

彼らはまた、昨今のイタリアの右傾化をひどく心配し、「まさかイタリアが、アフリカの難民の人々をこんなひどい目に合わせるとは思わなかった。失望したよ。僕らだって難民なんだよ。いいかい、僕らの闘いは、あくまで人権問題なんだ」と、社会に差別的な傾向が色濃くなっていることを深く憂慮しています。

さて、政治的な合意ではなく、あくまでも経済合意だということをアピールするため、ジュゼッペ・コンテ首相と中国主席立会いのもと、経済発展相及び副首相のルイジ・ディ・マイオと中国改革国家委員会(commissione nazionale per le riforme chinese)の何立峰により署名された『覚書』の項目は、全部で29項。

国家間の合意が19項目、民間企業のビジネス合意が10項目と、当初の予想よりもだいぶん少なく、そのうちの2社だけが正式な契約となっています。Cassa deposito ( 経済・ファイナンス省83%、16%を複数の銀行により拠出されたファンドで、イタリアの経済システムを管理する機関)が中国銀行と協力で『パンダボンド』を創設、中国国内のイタリア産業に資金を供給することに合意。Eni(イタリアの主要エネルギー会社)は覚書に署名、Ansaldo Energiaが、Benxi SteelとShanghai Electricと契約締結。今回の訪問の肝でもある、前述のトリエステ、ジェノバは、中国のインフラ設備投資を歓迎、いずれもふたつ返事で合意しています。

そのほかイノヴェーション、ネットビジネス、人工衛星に関して両国が協力するほか、オレンジ、畜産物の輸出、さらに考古学財の輸出入の防止、796点の中国骨董品返還合意などを確認。また、イタリアの国営放送Raiがチャイナメディアグループ、ANSA通信が新華社との協力に合意しています。今回は総額25億ユーロの調印となりましたが、今後200億ユーロのビジネス・ポテンシャリティを持つ合意となったのだそうです。

ところで、イタリア政府に「中国は危険」と口やかましく勧告し続けていたフランスですが、このあと中国主席がパリを訪れ、エアバス300機の受注が合意に至ったのちはとても静かになり、「どういうこと? イタリアがオレンジでフランスがエアバス?」というざわめきも広がった。ちなみにイタリアも、フランスも、ドイツも、中国も、今後の欧州連合と中国の通商合意は、あくまでもWin Winとなることを強調しています。いずれにしても、G7であるイタリアが覚書に調印したということは、イタリアが単独で決定したわけでなく(それ以前に各国間にいくらかの葛藤があったとしても)、巨大な経済共同体である欧州連合もまた、中国の『一帯一路』プロジェクトを了承している、と考えるのが妥当です。

イタリアは本当にトロイの木馬なのか

イタリアは本当にトロイの木馬なのか。今のところは、その表現に疑問を感じます。

 
▶︎ヴァチカンと中国、そして大きな議論となっている『ピロン法案』

一方、『同盟』のマテオ・サルヴィーニ副首相は、今回の中国主席イタリア訪問の、調印にも、晩餐会にも参加せず、「中国が自由市場だなんて言わないでくれ」と距離を置きました。

前のページ 1 2 3 4 5 6 7次のページ
寄稿の記事一覧をみる

記者:

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。
スマホゲーム タラコたたき