オリジナル版監督ジョン・カーペンターが語る新作『ハロウィン』 「“容赦なく怖いものにしてくれ”とお願いしました」
1978年に公開され、のちのホラー映画に多大なる影響を与えた『ハロウィン』。その一作目の正当な続編となる同名映画『ハロウィン』がいよいよ公開。
一作目『ハロウィン』の大ヒット以降、同作のジョン・カーペンター監督が『ゼイリブ』『遊星からの物体X』など様々な傑作を生み出してきた一方で、『ハロウィン』はカーペンター不在のままシリーズ作がどんどん作られていきました。今回の新作『ハロウィン』がそれらと一線を画すのは、ジョン・カーペンターが製作に携わり、音楽も担当しているということ。
これまでのシリーズ作をジョン・カーペンターはどう思っていたのか? そして新作の率直な感想は? ご本人に電話インタビューでお伺いしました。“マイケル・マイヤーズ”人気に再び火をつけたゲーム『Dead by Daylight』については意外すぎる回答が……? どうぞお楽しみください。
――『ハロウィン』はあなたなしでシリーズ作がどんどん作られてきましたが、今回プロデュースの話が来たときにはどう思われたのでしょうか。
ジョン・カーペンター:最初は「どうしたもんかなぁ」と思ったんだけど。プロデューサーのひとりであるジェイソン・ブラムがこう言うんですよ。「このプロジェクトはあなたが参加してもしなくても、どちらにせよスタートするんだよ。だとしたら、あなたが参加したほうが映画がより良くなるし、スペシャルなものになると思わないか」と。それを聞いて、外野であれこれ文句を言うよりかは中に入ってしまったほうがいいかなって。
――正直なところ、自分の関わっていないシリーズ作はあまりお気に召していないのでは……?
カーペンター:さ、さあね! どうかな! ……でもたぶん、君の言うとおりかもね(笑)。たぶんね!
――(笑)。ホラー映画は特に、1作目が大ヒットすると創作者の手を離れてたくさんの続編が作られることがままありますよね。こういうとき、オリジナル版の創作者はどう思っているのだろうかと常々疑問でした。『ハロウィン』の創作者としては、どういうお気持ちでしたか?
カーペンター:うーん、なかなか複雑なんだよね……。『ハロウィン』に関して言えば、1作目でストーリーはきれいに完結していて、これ以上掘り下げようがないと思ってたんですよ。ただ、カリフォルニア州の法律で、事業パートナーがお金儲け(=続編制作)をすることを止められないんです。『ハロウィン2』で僕は脚本を書いたけれど、そこでいよいよ「これ以上膨らませようがないよ!」と思ってしまって、そこからはもうかなり無理矢理でしたね。ただ、今回の『ハロウィン』に関しては、これまでと違う、なにか惹きつけるものがあるなと思いましたよ。
「容赦なく怖いものにしてくれ」とお願いしました
――今回の『ハロウィン』ではエグゼクティブ・プロデューサーとしてどんなことをされたのでしょうか。
カーペンター:脚本に色々と意見を言わせてもらったりしましたが、基本的にはデヴィッド・ゴードン・グリーン監督をサポートする形でした。映画というのは基本的に監督のものですからね、僕は関わったのはあくまでその程度です。僕がこの映画でみっちりやった仕事といえば音楽を作ることくらい。あとはお金をもらったかな(笑)。
――グリーン監督にリクエストしたことは? 彼はもともとホラー映画の監督ではありませんが、なにかアドバイスはされたのでしょうか。
カーペンター:僕からのリクエストとしては「容赦なく怖いものにしてくれ」とお願いしました。それくらいかな。彼はとても素晴らしい監督ですよ、とても良い作品になったと思います。いつの時代も、観客を怖がらせることにおいて重要なのは“ストーリーの構築”です。「この人はどうなってしまうんだろう?」と気になって仕方がなくなるような、観客が没入できるストーリーを作り、その中で恐ろしいシーンを挟み込んでいく。ストーリーがよくできていれば観客は必ず怖がってくれるんです。
――今回の作品は満足の行くものでしたか?
カーペンター:大変素晴らしいですよ! 本当に、本当に良くできた映画だと思います。様々なことに果敢にチャレンジしているし、良い意味で予想を裏切るようなところもたくさんあって感心しましたよ。
――オリジナル版へのリスペクトも随所に感じられるものになっていましたね。
カーペンター:まあね、まあね(笑)。ふふふ、感じたかな!
ニック・キャッスルこそがマイケル・マイヤーズなんですよ
――今作はローリー・ストロード役のジェイミー・リー・カーティスやマイケル・マイヤーズ役のニック・キャッスルといったオリジナル版キャストが出演していますが、彼らのいる撮影現場にも顔を出されましたか?
カーペンター:サウスカロライナ州のチャールストンというところで撮影をしていましたが、僕も少しだけ顔を出しました。しかしつくづく映画撮影の現場は変わってきたなと思いましたよ。僕が初期の作品を撮った頃から考えるとね。機材も変わってきたし、雰囲気もずいぶん変わった。でもまぁ、みなさん優しく迎え入れてくれましたよ。
ジェイミーもニックももう大物ですからね、僕から何かアドバイスを言ったりするようなことはありませんでした。マイケル役に関して、今回の映画でどこまでニック・キャッスルが演じていたかは把握していないんだけれど、ただ彼を配役したことは素晴らしい選択だったと思います。なんというか、ニックこそがマイケル・マイヤーズなんですよ。歩き方や人としての雰囲気がマイケルのキャラクターに反映されているんです。なのでニックを起用したことは大正解です。
――今回の『ハロウィン』は1作目の『ハロウィン』の続編にあたるわけですが、タイトルが同じく『ハロウィン』になったのはなぜだったんでしょうか。
カーペンター:僕の撮った『ハロウィン』と、ロブ・ゾンビが撮ったリメイク版の『ハロウィン』と、今回の『ハロウィン』とでこのタイトルの映画は3本目ですよね。僕とプロデューサーのひとりであるマレク・アッカドとも話してたんですよ、「ほかにもっと良いタイトルがありそうだよなぁ」って。でもユニバーサルの“天才”様たちが「このタイトルで間違いない、これでいこう」って言うわけ。
――では映画のクリエイターたちの意見が反映されたものではないんですね。
カーペンター:そう、そのとおり(嘆息)。
映画は僕のミューズなんです
――ここ10年くらい映画を撮られていませんが、映画製作には満足されてしまったんでしょうか?
カーペンター:もう10年経つ? 撮影としては1年くらい前にミュージックビデオの撮影をしましたね。あれは楽しかったなぁ。僕はねぇ……怠け者なんですよ……。もう年だし、あんまりハードに働きたくない(笑)。監督業ってのはほんとうに大変な仕事ですよ。今は音楽制作に力を入れています。息子たちと音楽を作っていて、今はそのほうが楽しいかな。
――過去のインタビューを読んでいても、監督業の大変さをよく語っておられますね。それでもやはり映画製作には魅力があるわけですね?
カーペンター:映画は僕のミューズなんです。どれだけ大変でも、映画を作ることを愛しているし、自分の作った映画を誇りに思っている。ただちょっと、怠け者なだけなんですよ(笑)。
――ゲームがお好きだそうですが、近年『Dead by Daylight』というゲームにマイケルやローリーが登場して新しいファンが増えているようですね。ご自身ではプレイされましたか?
カーペンター:え、なにそれ? 面白いの?
宣伝スタッフ:めちゃくちゃ面白いです。
カーペンター:へえ~! そいつは試してみなくちゃな! というか、マイケルが出てるの知らなかったよ。著作権的には僕にもお金入るはずだからすぐ問い合わせないとな!
――知らなかったんですか!? 是非お金もらって下さい!
カーペンター:アハハハハ! そうするよ(笑)。
作品概要
『ハロウィン』
4月12日(金)、全国公開
配給:パルコ
(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS
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