ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう

体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

ゴーン氏保釈が、検察、日産、マスコミに与える“重大な影響”(郷原信郎が斬る)

 しかし、一方で、検察が組織の面子をかけて逮捕・起訴したゴーン氏の事件で、公判前整理手続すら始まっていない現時点で保釈が許可されるというのは、検察にとっては衝撃であり、それを敢えて裁判所が決定したことは「画期的」と言える。

 今回の保釈許可決定は、「当然だが画期的な決定」と言うべきだ。

1、2回目の保釈請求と3回目の保釈請求の違い

 今回の保釈に関して、自宅玄関への監視カメラの設置、パソコンでのインターネット使用制限など、ゴーン氏の「罪証隠滅」が行えないようにする物理的措置が保釈条件とされたことが、保釈許可の大きな要因となったとされている。

 しかし、本当に罪証隠滅を行おうとすれば、そのような措置があっても完全に防止することは困難だ。そのような措置は、従来の特捜事件とは異なった保釈の判断をするための一つの「口実」に過ぎず、むしろ、決定的な違いは、裁判所も、事件の中身や証拠関係を踏まえて、長期の身柄拘束を避けたいと考えていたこと、そのような状況の中で、弘中・高野チームが、それまでの大鶴チームとは異なり、「人質司法」を打破してゴーン氏の保釈を獲得することに並々ならぬ情熱をもって取り組んだ成果と見るべきであろう。

 保釈決定の前日に外国特派員協会で記者会見を行った「無罪請負人」と言われる弘中弁護士に注目が集まっているが、私は、今回の保釈獲得に関しては、むしろ高野弁護士によるところが大きかったのではないかと見ている。

 今年1月18日の長文ブログ【人質司法の原因と対策*3 】にも書かれているように、高野弁護士は、日本の「人質司法」の根本的な問題を指摘し、実際の刑事事件の中で、その打破を実践してきた弁護士だ。「罪証隠滅のおそれ」を振りかざし、無罪主張をする被告人の保釈を阻止しようとする検察と戦ってきた。今回も、保釈に強く反対する検察官の意見書を、身柄関係書類の閲覧で把握し、そこで指摘されている「罪証隠滅のおそれ」を徹底的に否定して、保釈を認めない理由がないことを論証したことが保釈許可の大きな要因になったと考えられる。

*3:「人質司法の原因と対策」2019年01月18日『刑事裁判を考える:高野隆@ブログ』
http://blog.livedoor.jp/plltakano/archives/65939038.html

 一方の大鶴基成弁護士は、記者会見でも、「一般的に言うと第1回公判までは保釈が認められないケースが非常に多い。」などと「人質司法」について、やや的外れな発言を行い(「人質司法」は第一回公判までだけの問題ではない)、「これは人質司法などと呼んで弁護士は強く批判している。」などと他人事のように言っていた。かつて特捜部長として、ライブドア事件・村上ファンド事件などの事件で特捜検察の中核を担ってきた大鶴弁護士は、特捜部側で無罪を主張する被告人の保釈を阻止した経験は豊富でも、全面否認事件の弁護人として検察と戦い、被告人の身柄釈放を勝ち取った経験は乏しかったのだろう。「人質司法」が典型的に表れているゴーン氏事件で、保釈を獲得する使命を果たす弁護人としてはミスキャストだったと言わざるを得ない。

ゴーン氏保釈による「重大な影響」

 今回のゴーン氏の保釈には、監視カメラの設置等の異例の保釈条件が付されている。しかし、保釈条件は不変のものではない。今後の公判前整理手続や公判審理の状況に応じて、不要となれば、条件が解除されることもあり得る。

 美濃加茂市長事件では、現職市長だった藤井浩人氏は、収賄容疑について現金の授受を含めて全面否認していたが、4回目の保釈請求が許可され、逮捕以来62日間の身柄拘束で保釈された(【藤井美濃加茂市長ようやく保釈、完全無罪に向け怒涛の反撃*4 】)。このときは、副市長を含む多くの市役所職員との接触禁止等の保釈条件が付され、保釈に水を差したいマスコミは、「市長職を務めることは事実上困難」などと報じた。しかし、公判前整理手続の中で、「罪証隠滅のおそれ」が全くないことが客観的に明らかになり、弁護人の保釈条件変更申請で接触禁止は順次解除されていった。

*4:「藤井美濃加茂市長ようやく保釈、完全無罪に向け怒涛の反撃」2014年8月24日『郷原信郎が斬る』
https://nobuogohara.com/2014/08/24/%E8%97%A4%E4%BA%95%E7%BE%8E%E6%BF%83%E5%8A%A0%E8%8C%82%E5%B8%82%E9%95%B7%E6%BC%B8%E3%81%8F%E4%BF%9D%E9%87%88%E3%80%81%E5%AE%8C%E5%85%A8%E7%84%A1%E7%BD%AA%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E6%80%92%E6%B6%9B/

 ゴーン氏についても、今後、公判前整理手続や公判審理の中で、検察が提示する事実や証拠、それに対する弁護側の対応によって、「罪証隠滅のおそれ」がないことが明らかになれば、保釈条件の変更の可能性もある。そういう意味では、保釈条件は、被告人にとって決定的な問題ではない。

 重要なことは、いかなる保釈条件が付されていても、拘置所での身柄拘束が続くのと、社会内での活動が可能になるのとでは、その拘束の質が決定的に違うということだ。

 今回の保釈によって、今後、ゴーン氏の刑事事件の公判対応や、マスコミへの対応、ゴーン氏が関わる企業の経営などに、大きな影響が生じる可能性がある。

 第1に、公判前整理手続や公判に向けて、弁護団と十分な準備ができるということだ。言語の違いに加え、関連資料も膨大なため、拘置所での弁護団とゴーン氏との打合せは困難を極めたはずだ。保釈されたことで、検察の開示証拠を踏まえて、効果的で綿密な打合せを行うことが可能となる。

 第2に、ゴーン氏は、今後、検察や日産側のリークによる夥しい数の「有罪視報道」にくまなく目を通し、弁護士らとともに、事実無根の名誉毀損報道に対して法的措置を講じる準備を始める可能性がある。それは、ゴーン氏事件の報道の流れを変え、これまでの報道で生じた世の中の認識を是正することにつながる可能性がある。

 第3に、軽視できないのは、日産自動車・ルノー・三菱自動車の経営に与える影響だ。

 ゴーン氏は、日産自動車・ルノー・三菱自動車の3社で会長職は解職されたが、今も取締役の地位にはある。ゴーン氏が、各社の取締役会に出席すれば、これまで全く弁明の機会を与えられず、一方的に「不正」とされている、起訴事実以外の「不正」についての弁明を行うことも(少なくとも、ルノー・三菱自動車においては)可能となり、今後の3社の取締役会での議論に大きな影響を生じる可能性がある。

ゴーン氏の取締役会への出席の可能性

 そこで問題となるのが、今回のゴーン氏の保釈条件の中には、事件関係者との接触禁止のほか、日産自動車の取締役会・株主総会への出席には裁判所の許可が必要というのが含まれていることが、ゴーン氏の取締役会への出席にどのように影響するかだ。

前のページ 1 2 3次のページ
寄稿の記事一覧をみる

記者:

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。