不思議な世界に迷い込んだみたい! 人気猫写真家と3名の作家がタッグを組んだ『ヒミツのヒミツの猫集会』

近年は空前の猫ブーム。巷では猫の愛くるしい姿をとらえた写真集やフォトエッセイなどが数多く発売されています。そんな中でも独特の観点で“猫”という動物の魅力を伝えているのが『ヒミツのヒミツの猫集会』(沖昌之 写真/池澤春菜、いしいしんじ、前田司郎、今泉忠明 文/天夢人 刊)です。

人気猫写真家・沖昌之さんの最新作である本作のテーマは、「猫集会」。どこからともなく集まってきては一定の時間一緒に過ごし、やがて三々五々に帰っていく。――そんな猫の集会にスポットを当てつつも、これまでとは一味違ったミステリアスな写真を楽しめるのが特徴。収録されている写真にはところどころにエフェクトや合成が施されているため、読者は不思議な世界に迷い込んだかのような感覚になります。

そして、沖さんの写真だけでなく、池澤春菜さんやいしいしんじさん、前田司郎さんといった3名の作家による描き下ろしのショートストーリーが掲載されているのもユニークな点。『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)の監修者・今泉忠明さんも猫の集会に関して科学的な解説を寄せており、摩訶不思議な世界に興味がある方や猫好きにとって、たまらない一冊となっています。

本稿では数ある収録作品の中でも特にコミカルな沖さんの写真をいくつかご紹介しながら、本作の魅力を徹底解明。早速あなたも不思議な猫の世界をのぞいてみましょう。

加工によって写真にストーリーが生まれる

どこにエフェクトや合成が施されているのだろう……。本書を読むときは、ぜひそんなわくわく感を楽しんでみてください。

猫には猫しか知らない世界があり、そのひとつが、街中でひっそり行われている猫集会。そんなヒミツの猫集会写真が、作中には多数掲載。中には目を凝らさなければ分からないエフェクトや合成加工がなされた作品もあります。

例えば、茶白猫が足をぴんと伸ばしながら井戸の中をのぞき込んでいる作品は、左ページに可愛らしいカエルのイラストが描かれているのがポイント。

葉っぱを傘替わりにしながら宙を飛ぶカエルはまるで、猫から逃げているかのようにも見えてしまいます。

また、5匹の猫たちの集会現場をとらえた写真には、右下にさりげなくカタツムリが合成されているよう。

5匹の猫たちに気づかれないよう、猫集会に参加するカタツムリは一体どんな話を耳にしたのだろうか……と妄想が膨らんでしまいます。こんな風に加工技術を活かして奇妙な世界を作り上げている本作は、1枚1枚の写真に物語があるように思えてなりません。

なお、カバーを外すと原条令子さんによるエキセントリックなブックデザインも楽しめるので、ぜひそうした遊び心も堪能してみてください。

猫の奥深さを感じられる3つのショートストーリー

猫は、独自の世界観を持っているように感じられる動物。マイペースでミステリアスかと思いきや、飼い主にすり寄ってくることもあり、先が読めない行動をたくさん見せてくれます。そうした姿を見ていると、彼らの目にはこの世界がどう見えているのか気になってしまうことも多いもの。

そんな猫たちのミステリアスな一面にスポットを当てた3本のショートストーリーは、読者を不思議な世界に引きずり込みます。多種多様な視点で語られる猫話には猫という動物が持つ奥深さが詰め込まれており、クスっと笑えたり、心がほっこりしたり。読後はきっと、愛猫や野良猫たちを今までとは違った視点で見てしまうようになるでしょう。

“猫の集会って狐の嫁入りのような不思議なイメージがあって、猫がたくさん集まっているところに遭遇できただけで、すごくラッキーな気持ちで小躍りしながら撮影してたりします。”(「あとがき」より引用)

そう語る沖さんのカメラ技術が光り、3人の作家や動物学者がタッグを組んで完成した本作はこれまでにない斬新な猫写真集。街中で開かれているヒミツの猫集会につい、耳を傾けたくもなるはずです。


『ヒミツのヒミツの猫集会』

(天夢人)

写真:沖昌之
文 :池澤春菜「化身」、いしいしんじ「猫をやめたい」、前田司郎「毛玉」
解説:今泉忠明「猫集会の科学」

定価 :本体1250円+税
発売日:2019年2月14日

PROFILE
沖 昌之 おき・まさゆき

猫写真家。1978年、神戸生まれ。アパレルの会社員だったころ、偶然出会った猫「ぶさにゃん先輩。」の導きにより2015年独立。“ネコザイル”“無重力猫”など、「おそとにゃんこ」の日常生活に肉迫する独自の写真をブログ「野良ねこちゃんねる。」、Instagram、Twitter等で発信し、世の中を魅了している。著書に『ぶさにゃん』(新潮社)、『必死すぎるネコ』(辰巳出版)、『残念すぎるネコ』(大和書房)、『俳句ねこ』(倉阪鬼一郎との共著・ホーム社)など。ブログ:「野良猫ちゃんねる。」

池澤春菜 いけざわ・はるな
ギリシア・アテネ生まれ。声優、女優のほか、書評家、エッセイストなど、幅広いジャンルで活動。近年は台湾に夢中。父は作家・詩人の池澤夏樹。『SFのSは、ステキのS』(早川書房)で星雲賞ノンフィクション部門受賞。ほか著書は『乙女の読書道』『はじめましての中国茶』(本の雑誌社)、『最愛台湾ごはん 春菜的台湾好吃案内』『おかわり最愛台湾ごはん 春菜的台湾好吃案内』(角川書店)など。

いしいしんじ
1966年、大阪生まれ。1994年『アムステルダムの犬』(講談社)でデビュー。2000年刊行の『ぶらんこ乗り』(理論社・新潮文庫)から小説に専念。2003年『麦踏みクーツェ』(理論社・新潮文庫)で坪田譲治文学賞、2012年『ある一日』(新潮文庫)で織田作之助賞、2016年『悪声』(文藝春秋)で河合隼雄物語賞を受賞。ほか著書は『ポーの話』(新潮文庫)、『みずうみ』(河出文庫)、『港、モンテビデオ』(河出書房新社)など多数。

前田司郎 まえだ・しろう
1977年、東京・五反田生まれ。劇団「五反田団」主宰。劇作家、俳優、小説家、脚本家、映画監督など、多彩な活動をしている。戯曲『生きてるものはいないのか』(白水社)で岸田國士戯曲賞を受賞。小説『夏の水の半魚人』(扶桑社・新潮文庫)で三島由紀夫賞を受賞。ほかの著書に、『愛でもない青春でもない旅立たない』 (講談社文庫)、『恋愛の解体と北区の滅亡』(講談社)、『愛が挟み撃ち』(文藝春秋)など多数。

今泉忠明 いまいずみ・ただあき
1944年、東京生まれ。動物学者(生態学、分類学)。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業後、イリオモテヤマネコをはじめとする国立科学博物館や文部省(現・文部科学省)の調査・研究に参加。動物関連の著書および監修を行った書籍が多数ある。監修を務めた『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)は、2018年“こどもの本”総選挙第1位。伊豆高原ねこの博物館館長、日本動物科学研究所所長。

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