YVES TUMORライヴ・レポ、異次元のカリスマ性とキャッチーさを身に纏った21世紀のグラム・ドラァグクイーンに中毒者続出

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YVES TUMORライヴ・レポ、異次元のカリスマ性とキャッチーさを身に纏った21世紀のグラム・ドラァグクイーンに中毒者続出

テネシー生まれのイヴ・トゥモア(YVES TUMOR)が〈WARP〉に移籍後リリースした『Safe In The Hands Of Love』は、いまも多くの謎に包まれている。トゥモアが愛聴していたグランジ的な激しいサウンドもあれば、R&Bやヒップホップの要素も随所で顔を覗かせるというその内容には、いまだハッキリとしたジャンル名が付されていない。

さらに、エクスペリメンタル・ミュージックのシーンから出てきたアーティストであるにもかかわらず、チャート・ソングも顔負けのキャッチーな側面を前面に押しだしていたことも、驚きと戸惑いを抱かせるものだった。

そうしたカオスを象徴するのが、ピッチフォークにアップされた『Safe In The Hands Of Love』評だろう。9.1という高得点をあたえたこのレヴューは、普通に考えたらつながりを見いだせないプルリエントやボーイズ・II・メンをひとつの原稿内で登場させるはめになった。おそらくこうした状況は、「多くの人は私の存在が何なのか困惑してると思う。けどそれでいい」と語るトゥモアにとって本望かもしれない。

このような作品を出した後の来日公演ということもあってか、12月20日のContactには多くの人々が集結した。斜に構えたような業界人やアーティスト、ヴェルサーチェのド派手なマルチ・プリントTシャツを着こなすオシャレさん、仕事終わりに寄ったのであろうスーツ姿のサラリーマンまで、客層も実に多様だ。

そこへ登場したトゥモアは、とてもアグレッシヴにステージ上を動きまわる姿が印象的だった。グッチのブルゾンでキメた細身の体をくねらせたかと思えば、ヴィンス・ステイプルズみたいに挑発的なステージングで観客をアジテーションしてみせる。その一方で、「ありがとう」と日本語でお礼を伝えるなど、チャーミングなところも際立った。大量のスモークとフラッシュの中で佇む姿は人外感を醸していたが、近寄りがたい雰囲気を出すことはない。そんなトゥモアと呼応するように、前方の観客は終始踊りつづけ、祝祭的な空気を演出していた。「Noid」のときは〈Sister, mother, brother, father〉を合唱する者がいたりと、さながらアンダー・グラウンドなロックンロール・ショーと言える瞬間も多く見られた。

音はバックトラックだが、それでもトゥモアの多彩な音楽性は十分に堪能できた。『Safe In The Hands Of Love』の中域を持ちあげる歌モノ的なプロダクションとは異なり、この日のライヴはノイジーなサウンドも目立つなど、引きだしの多さがうかがえた。それを聴いていると、インダストリアルR&B、エクスペリメンタル・グラム、プリンスとポップ・グループの邂逅など、さまざまなフレーズが頭によぎったが、どれもピンとこない。そのすべてを煮詰めた音楽こそ、トゥモアが鳴らしているものだからだ。ライヴに行けば少しは謎が明かされるかも?と期待していたが、魅惑的なミステリーが深まるだけだった。しかしこれも、〈それでいい〉のだろう。 (内)

Text by 近藤真弥
Photo by Masanori Naruse

@YVES TUMOR “SAFE IN THE HAND OF LOVE” RELEASE TOUR 2018年12月20日(THU) 渋谷 CONTACT

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