アベノミクスで景気回復って言うけど、GDPって本当に実態に合った経済指標か?(note)

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それでもGDPを使って経済成長を測るしかありません。なぜならGDPのデメリットを打ち消した代替となる指標の開発ができていないからです。むしろ使う側の私たちがGDPのデメリットを認識した上で運用するしかないでしょう。

一国の経済力を、たった1つの指標で把握することを止めようとする動きもあります。例えばOECDは「より良い暮らし指標」をWEBで公開しています(図3-7)。所得、仕事、教育、環境、安全など11の要素を混ぜ込んだ相対的な指標です。

より良い暮らし指標

この指標の良いところは、11の要素単位に細かくチューニング可能な点です。何を重視するかによって得点が変わるのです。

短期的な経済成長のためにGDPをいかに伸ばすかを議論するより、長期的な持続可能性を考慮した政策立案のためにはこちらの指標の方が良いように思うのですが、残念ながら2018年現在の国政ではまったく議論されていません。

 
「データサイエンス「超」入門 嘘をウソと見抜けなければ、データを扱うのは難しい (毎日新聞出版)」『amazon』
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07K76ZZJV/ref=as_li_tl?ie=UTF8&tag=boommelier-22&camp=247&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=B07K76ZZJV&linkId=7f665487864ef35a263ad2a84ba1bdea

 

「データサイエンス「超」入門」には掲載できなかった漏れ話

先日、元日銀マンの鈴木卓実さんと講演をさせて頂いた際、「今のGDPは30兆円過小評価しているんじゃないかという論文が日本銀行から出ています」という話が出てきました。

(参照)税務データを用いた分配側GDPの試算
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16j09.pdf

上記論文から一部引用させて頂きます。

現行の生産側GDPや支出側GDP、言い換えると名目GDPの公表値と比較して、本稿で試算された分配側GDPはほぼ一貫して大きい値となっており、そのかい離幅は、直近のデータである 2014年度では 27~29.5兆円と名目GDPの約6%に達している。(略)
実質GDPの成長率をみると、2014年度の実質成長率は、プラス成長(+2.4%)と、現行GDPにおけるマイナス成長(▲1.0%<年次確報時>)と比べて、大きく上振れており、かなり違った動きとなっている(図表 22(2))。2004 年度以降の試算値の実質成長率の平均値を算出すると、+1.2%と現行(+0.6%)対比 0.6%ポイント高くなる。

こうした背景もあって、日銀はGDPの実質成長率を従来より高い精度で予測できる新手法を英語の論文で掲載し、日経新聞が報じました。

「エコノミスト泣かせ? 日銀がGDPを正確に予測 」2018年12月13日『日本経済新聞』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3884012012122018EE8000/

日銀と内閣府は、もともとGDPを巡って暗闘を繰り広げています。最近でも2018年3月と関根敏隆調査統計局長が内閣府に「データを見せろよ!」と言っていますが、要は「お前らのデータは信用ならん」と言っているようなものです。

ちなみに、この暗闘はずーーーーーーーっとやっていて、2016年ぐらいから日銀はいよいよ喧嘩腰です。

「日銀がGDP統計に疑問符、「14年度はプラス成長」−内閣府は反論」2016年8月12日『Bloomberg』

「日銀と内閣府、GDP速報の精度巡り対立-攻防はデータ公表の範囲に」018年3月29日『Bloomberg』

ただ1つ気を付けたいのが、これは「安倍政権の改ざん問題」ではありません。例えば石破政権が誕生しても、野党政権が続いても起きていた問題でしょう。

いま、公的統計の信頼が揺らいでいるのです。予算が無い。人手が足りない。このままだと、誤った数字で誤った判断をしかねません。

「データサイエンス「超」入門」は、そうした危機感をもとに、ある著名な政治家に献本させて頂いたのですが、私みたいな一般人の声は届かないようです。残念です。

このnoteをきっかけに、国内で議論が巻き起こることを期待しております。

 
執筆: この記事は松本健太郎さんの『note』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2018年12月14日時点のものです。

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