目標を“達成できる人”と“達成できない人”の差とは?ーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第32回目です。
『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「お金持ちになれるなら、仕事のやりがいとか生きがいなんかはどうでもいい」
(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第4巻 キャリア32より)
龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。
井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。
逆境を「現状を変えるバネにする」
キャリア・パートナーとしての仕事もすっかり板に付いてきた井野。ところが、以前の教え子で東大生の水野が、実家のスナックでアルバイトを始めたことを聞きつけます。母子家庭で育った水野は、かつては母親の仕事を毛嫌いしていました。心配になった井野は、様子を見に行きます。
東大は、言わずと知れた日本最高峰の大学です。当然、全国から優秀な学生が集まってきます。水野が東大に入って知ったのは、東大には恵まれた家庭で育った子供が多い、ということでした。水野は自分の将来について真剣に考えた末に、桜木に相談。桜木は、外資系証券会社に勤める本田に会うよう助言しました。
本田から「日本のサラリーマンで20代から億のお金を稼いでいるのは外資系のディーラーだけだ」と聞きつけた水野は、英語と経済を猛勉強し始めます。こう経緯を話すと、「私は働くならお金が欲しい」と井野に告げる水野。自分の境遇を変えるために、あえて稼げるスナックでのアルバイトを選んだのでした。
戦略とは「戦いを略すること」
戦略とは「戦いを略する」と書き、なるべく少ない負担で目的に到達できる方策のことを言います。水野が「外資に就職する」という目標を達成するために考えた戦略とは、
(1)短時間で多く稼げるスナックのアルバイトを始める
(2)自由時間の残りを英語と経済の勉強に充てる
というものでした。
ここでのポイントは、「水野が一足飛びに目標に到達しようとしなかった」ことにあります。つまり自分の希望を叶えるために、段階的に目標に近づいていくようにしたのです。世の中の多くの人が、急いで希望を叶えようとして失敗に終わるのは、そのための戦略を立てていないからです。
選ぶ前に、まずは選べるような状態をつくる
個人であろうと企業であろうと、目的を遂げるためには戦略があったほうが、達成が容易になります。アメリカの経営学者、ジェームズ・C・コリンズ氏が執筆した世界的なベストセラー『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』の中に、「誰をバスに乗せるか?」という1節があります。以下は一部抜粋です。 「このバスでどこに行くべきかは分からない。しかし、分かっていることもある。適切な人がバスに乗り、適切な人がそれぞれふさわしい席に着き、不適切な人がバスから降りれば、素晴らしい場所に行く方法を決められるはずだ」
(ジェームズ・C・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』)
これは、企業をバスにたとえたもので、本来は「誰を雇うことが自社にとって望ましいのか?」といった意味になります。仮にバスで目的地にたどり着こうと思ったら、通常は先に「目的地やゴールをどこに設定するか?」と考えるのが一般的でしょう。ところが、コリンズ氏は「まず誰をバスに乗せ、誰を下ろすのかを決める。その後で目的地を決めることだ」と言ったのです。これが氏が考えた、飛躍する企業の戦略です。
この話に沿って考えるならば、企業にとって、人材を選ぶのは大切なことです。けれど、そもそも「誰を下ろすか」以前に、今、乗っている人たちがどのような能力を持っているのかを把握していなければ、誰に乗り続けてもらい、誰を下ろすべきなのかもわかりません。自社に足りていない能力が何なのかが判明していない限り、当然、誰に乗ってもらえばいいのかもわからないのです。
自分の「リソース」を確認することから始める
今回の話のキモとは、「ものごとを成し遂げるには段階がある」ということです。要は、同じ動作であっても、それをやるに相応しい時とそうでない時がある、ということです。
成功するための戦略を立てる際には、自分が持っているリソース(資源)を洗い出し、それを活用することが不可欠です。『エンゼルバンク』の中で、水野が実家の水商売を手伝うことにしたのも、それが彼女が持っていたリソースであり、お金持ちになるためにはそうすることが必要だと判断したからです。
世の中には、「自分の仕事にはやりがいがない」と悩んでいる人が大勢います。しかし、そうしたものは後から出てくるものであって、最初からあることのほうがむしろ少ないのです。
俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。
俣野成敏 公式サイト
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